2013/2014
CMO/ISMO 観測レポート#18
2015年一月・二月の火星観測 (λ=263°Ls~300°Ls)
CMO
#432 (
村上 昌己・南 政 次
♂・・・・・ 年が変わって火星は一月には「やぎ座」から「みずがめ座」へと進んで、二月には「うお座」へ移り、22日には視赤緯は黄道を越えて北側へ戻った。視直径はδ=4.8"から二月末には4.2"とさらに遠ざかり、季節はλ=263°Lsから、一月11日に南半球の夏至(λ=270°Ls)に達して、一月末には283°Lsと進み、期間末には300°Lsとなった。傾きはφ=21°Sから二月はじめ26°S、中旬に最大(26.3°S)となり二月末には少し戻ったが26°Sと、大きく南極地を見せていた。位相角はι=28°から二月末には18°と丸みが少し増した。二月22日には西空で金星と接近して太陽に近づいていって、太陽との離角は27度と縮まった。
♂・・・・・この期間にも、広島の森田(Mo)氏と南アフリカのフォスター(CFs)氏は追跡を続けている。Mo氏は年初の観測のあとも機会をうかがっていたが、観測は適わなかったようである。CFs氏も夕方の晴れ間に、二ヶ月間で九日ずつの観測をこなした。二月にはいるとRGB各色の撮影は難しくなって、R光とIR光の報告だけとなっていて、暗色模様の詳細も難しくなってきた。
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
5 Sets of RGB + 10 R + 12 IR
Images
(7, 8, 12,
13, 16, 18, 20, 28, 30
January; 1, 3, 13, 17, 18, 20, 22, 23,
36cm SCT @f/33 with an ASI 120MM
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
1 Set of RGB
+ 1 LRGB Colour +
♂・・・・・既に視直徑δは5秒角を割っているのと、報告された観測が細かくは連續していないので、このレポートでは逐一観測は論評せず、特別な観測だけpick outしようと思う。
一月には、まず
3 January
2015 (λ=265°Ls、δ=4.7")に森田行雄(Mo)氏からω=153°Wの一組が報告されている。φ=22°Sで、マレ・シレヌムが中央にぐっと下がって見えている。マレ・シレヌムの西部が濃いようで、その北側に明るいものを抱えているように見える(MRO-MARCI像で見てみると破れ提灯が気になるが、当該箇所で黄塵が起きているように思える)。RやLに顕著である。然し、一日限りではどうもならんのは致し方ない。南極冠は相當小さくなってGやRで 好く見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150103/Mo03Jan15.jpg
7 January 2015 (λ=268°Ls、δ=4.7")にはClyde
FOSTER (CFs)氏が ω=234°WでIR742の像も含めてワンセットを撮った。しかし、多分マレ・キムメリウム邊りと思われるところが暗帯となって見えているという感じで、シュルティス・マイヨルも朝方に見えるかも知れない角度だが、不明。南極冠も描冩されない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150107/CFs07Jan15.jpg
8 January 2015 (λ=268°Ls、δ=4.7")にはCFs氏がω=217°Wで一組。R、IRが好く、マレ・キムメリウムの姿を大略捉えている。アリンコの頭が途切れて見えるので可成り良質。南極冠はGに出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150108/CFs08Jan15.jpg
12 January 2015 (λ=271°Ls、δ=4.6")のCFs氏の像はω=184°WでRとIR742。 IRではヘスペリアからエレクトリスへ明部が伸びている感じ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150112/CFs12Jan15.jpg
13 January 2015 (λ=272°Ls、δ=4.6")にはCFs氏はω=171°Wの像を一組。φは24°Sに上がった。マレ・シレヌムが想像できる。その南の淡い筋パエトンチスの更に南に明部があって南極冠のダークフリンジ沿っている。南極冠はRで本体が見えるが、東側に明るいボケがなびいているように見える。2003年の同時期にそういう傾向があったかと思うが、これほどコントラストは強くなかったと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150113/CFs13Jan15.jpg
16 January 2015 (λ=273°Ls、δ=4.6")にはCFs氏がω=141°Wで 一組。ソリス・ラクスが東端に出ているはずだが、不分明。IRでやや濃いか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150116/CFs16Jan15.jpg
18 January 2015 (λ=275°Ls、δ=4.6")でCFs氏は ω=117°Wの一組を撮った。IRでソリス・ラクスが可成り入って濃く円く見え、パーシス、アラクセスも確認出來る。ここにはタルシスの斑點が捉えられているようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150118/CFs18Jan15.jpg
(註) なお、今接近では1956年型(λ=250°Ls)のノアキス黄雲の影響も1971年型(λ=260°Ls)の大黄雲も見られなかったが、λ=276°Lsは1956年のデウカリオニス・レギオ黄雲の時期である。しかし、CFs氏のアングルは今のところ反対側である。1973年の広域黄雲はλ=300°Ls(今年は1~2March頃)發生であり、2003年の後期にDon PARKER氏はλ=315°Ls (13 Dec 2003)の可成りの黄塵を見付けているので、未だ望みはあるが、CFs氏の孤軍であるから、アングルの問題もあり難しいところである。
20 January 2015 (λ=276°Ls、δ=4.5"):CFs氏はω=098°WでRチャンネルの良像を得た。ソリス・ラクスが小型ながら明確でタウマシアに先行する縦模様は濃い。南極冠は明白でダークフリンジもしっかりしている。中央ではチトニウス・ラクスが明確である。クリュスケラスはやや明るい筋でこの視直徑では詳細に属する。マレ・シレヌムの東部は途中まで盤に出ていて、これから円盤に入ってくる態勢。タルシスはいくつかの暗點を見せていて、これについては先号のLtEでVENABLE氏とKONNAÏ(Kn)氏の論争があって、Kn氏はJUPOSで正しい議論をしているようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150120/CFs20Jan15.jpg
28 January 2015 (λ=281°Ls、δ=4.5")のCFs氏のR像単像はω=019°W、φ=26°Sで与えられている。シヌス・サバエウスがひどく北に下がっている。南半球の広さは斯くもというぐらい見えている。南半球の模様は暗色模様で詰まっているがノアキスなどは見える。但しマルガリティフェル・シヌスや マレ・エリュトゥラエウムも張り合っている。アウロラエ・シヌスの邊りはRで可成りくらい。南極冠は円く 明白、 北半球の左端は明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150128/CFs28Jan15.jpg
30 January 2015 (λ=282°Ls、δ=4.5")にはCFs氏がω=356°Wで。R とIR像を提出。R像は前者と似ているが、IR像は些しメリハリがついて南半球が濃淡に分かれる。パンドラエ・Frが幅広く濃い。但しシヌス・メリディアニが些しおかしな形状。アラムは切れ上がっている。シュルティス・マイヨルは両者でp端に濃く見えている。南極冠も赤外で明白。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150130/CFs30Jan15.jpg
1 February
2015 (λ=283°Ls、δ=4.4")にはCFs氏がω=337°WでR像を得た。シュルティス・マイヨルがぐっと下がって、マレ・セルペンティスの邊りの濃く出ている。 ヘッレスポントゥスもシヌス・サバエウスも濃いが本体はボケボケに冩っている。δ=4.4"の像としては好く出ているが、何か言うには信頼度が低い。デウカリオニス・レギオは抜けているが異常性はないだろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150201/CFs01Feb15.jpg
3 February 2015 (λ=285°Ls、δ=4.4"): CFs氏のω=318°W(R). シュルティス・マイヨルは大きく逆三角形、然し、後方のシヌス・サバエウスなどは形をなさい。僅かマレ・セルペンティスが濃いか、というところ。ヘラスは地肌であろう。南極冠小さく見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150203/CFs03Feb15.jpg
13 February 2015 (λ=291°Ls、δ=4.3"): CFs氏のRとIRのω=218°Wの像。IRの方がモデラートに見える。マレ・キムメリウムの邊りだろうが同定が難しい。アウソニアが些し明るいかも知れないが、それは全體の劣化のために、観測事項には入らない類。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150213/CFs13Feb15.jpg
17 February 2015 (λ=293°Ls、δ=4.3"): CFs氏のR&IR像:採るとすればω=175°WのIR像だろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150217/CFs17Feb15.jpg
18 February 2015 (λ=294°Ls、δ=4.3"): CFsのω=165°LsのR&IR像のセット。マレ・シレヌムの西部が濃くなっているようだが、全体像が掴めない。南極冠も明るく出ない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150218/CFs18Feb15.jpg
20 February 2015 (λ=295°Ls、δ=4.3") CFs氏 ω=148°WのR像。何も冩っていないのと同じ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150220/CFs20Feb15.jpg
(註)確かに、この視直徑では意味のある結果を出すのは難しい。しかし、今接近でもデミアン・ピーチ(DPc)氏がδ=4.3"のとき微細な模様を確実に出した例(20 September 2013 ω=251°W)があるので、これを上方の規範として記憶しておく必要はあろう。
22 February 2015 (λ=296°Ls、δ=4.2")には CFs氏の ω=125°W のIR像。p側にソリス・ラクス、朝方にマレ・シレヌムの東側の構図のはずだが、マレ・シレヌムの濃部は好いとして、後は濃淡があるものの思わせぶりな濃淡の分布である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150222/CFs22Feb15.jpg
23 February 2015 (λ=297°Ls、δ=4.2"): CFs氏のIRのω=116°Wと ω=117°Wの二像:二像は似ているかどうかを見るのも難しい。ソリス・ラクスの位置に濃斑點が集中していない。シーイングに據る拡散を冩し込んでいる。南極冠は崩れて出ていない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150223/CFs23Feb15.jpg
26 February 2015 (λ=299°Ls、δ=4.2"): CFs氏 ω=084°WのIR像。ソリス・ラクスは殆ど中央にあるはずだが、濃淡が拡散している。地肌上の變化が濃淡の拡散を齎しているのではない。せめて南極冠かオピル-カンドルの明部が見え初めて議論が出來る。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/150226/CFs26Feb15.jpg