2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#17

2014年十一月・十二月の火星観測 (λ=224°Ls~263°Ls)

CMO #431 (25 February 2015)

村上 昌己・南 政


・・・・・ 火星は十一月には「いて座」から「やぎ座」へと順行を続けて年末には「やぎ座」東部まで進んだ。視赤緯は10°S台に回復してきたが沈む時間は20時頃で変わらず観測時間は短くなっていた。十一月には視直径はδ=5.6"から5.1"、傾きはφ=3°Sから13°S、位相角はι=36°から32°へと変化して、火星面は南向きに傾いていった。年末の12月末日には視直径はδ=4.8"、傾きはφ=21°S、位相角はι=28°となっていた。季節はλ=224°Lsから245°Lsとすすみ、年末には263°Lsとなり南半球の夏至直前に達した。この期間には南半球の擾乱の発生に注意が払われていたが、報告された観測には引っかからなかった。南極冠の偏芯の起きる季節にもあたっていて、南向きの火星像には小さくなっていく南極冠が写っているが視直径の低下もあって詳細はとらえられていない。

 

・・・・・この期間には、観測報告は下記のように、南アフリカのフォスター氏と広島の森田氏からだけであった。フォスター氏のお便りによると、11月には晴天が続かないようで10日間の観測報告であった。12月には数週間も天気が悪く2日間の観測に終わった。森田氏も帰宅後の観測では良シーイングに恵まれず、休日の観測条件も良くなかったようで、12月の報告が1件あるだけであった。 

 

    クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ

    12 Sets of RGB + 1R + 12 IR Images  (1, 5,~7, 9, 14, 16, 18, 20, 26 Nov; 2, 29 Dec 2014)

                                                 36cm SCT @f/33 with an ASI 120MM

    森田 行雄 (Mo)  廿日市市、広島県

      1 Set of RGB + 1 LRGB Colour + 1 L Images  (23 December 2014)  36cm SCT with a Flea 3

 

 

・・・・・ 前回までのように、十一月・十一月の各観測を、日付を追って短評する。

 

1 November 2014 (λ=225°Ls~226°Ls, δ=5.6"~5.5")

      Clyde FOSTER (CFs) 氏がω=148°Wω=156°Wで二組のR G B およびIR742の単色光像を撮り、RGB像を合成した。Tiltは前月の20 Octぐらいから南に移って、初日は既にφ4°Sである。從って南極地点はこちらを向いている。いずれの像でも南極冠が明確で、RGBでは白い。最も濃い暗色模様はマレ・シレヌムの東部で、ソリス・ラクスは然程ではなく、アガトダエモンより弱いかも知れない。なお、ω=148°WR 像、ω=156°WRGB像では北半球に、幾つか暗點が見えているが、こうした暗點を正しく記録するためには、像の南北線をきちんと定める必要があり、これからλ=230°Ls を過ぎると南極冠の中心が南極點からずれて南極冠が偏芯するから、模様の位置を確定するには、撮影の際に(DPk氏やMo氏の流儀で) p←→ fを決めて表示しなければならない。これがないと画像の價値が半減する。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141101/CFs01Nov14.jpg

 

 

5 November 2014 (λ=227°Ls~228°Ls, δ=5.5")

        CFs氏がω=113°Wでワンセットを与えた。南極冠は明白、但し北半球極地はやや霞んでいる程度。模様ではソリス・ラクスが夕方に明確で、ティトニウス・ラクスも好く出ている。オピル・カンドルはやや明るいが平常。ポエニキス・ラクスも容易に見え、タルシス三山も出ている。北の方にはマレ・アキダリウムの北部が横たわるように存在を示している。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141105/CFs05Nov14.jpg

 

 

6 November 2014 (λ=228°Ls~229°Ls, δ=5.5")

         CFs氏がω=116°Wでワンセット。前回とほとんど同じだが、像は滑らかになった感じ。Rが好く、ポエニキス・ラクスの斑點とアルシア・モンスの斑點が程良く並んでいる。アスクラエウス・モンスも暗斑として明確だが、オリュムプス・モンスは朝方縁に近くちょっと見辛い。マレ・シレヌム東部から北に走るアラクセスなども判るかと言ったところ。G Bで北極域に霧が出ているからRGBでも確認出來る。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141106/CFs06Nov14.jpg

 

 

7 November 2014 (λ=229°Ls, δ=5.5")

         CFs氏がω=091°Wでワンセットを得た。オピル・カンドルが明るく中央に近づいた。ガンゲスも太く見える。些し奇妙に見えるのはソリス・ラクスの東のタウマシアが明るくなく、暗部が被さっているごとし。ティトニウス・ラクスも明確で。朝方に移ったがポエニキス・ラクスがアルシア山に先行してクッキリ見える。 B像の縁は気に入らない。アウロラエ・シヌスはIRでは濃く見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141107/CFs07Nov14.jpg

 

 

9 November 2014 (λ=230°Ls~231°Ls, δ=5.4")

         CFs氏の次のワンセットはω=076°Wである。Tiltφ=7°Sになった。ソリス・ラクスは朝方に移ったが、タウマシアはすっきりしない。Rで見る限り南極冠は些し小さくなった。Gでは明るくクッキリしている。そろそろΩ=060°Wの方に偏芯を始める時期である。ティトニウス・ラクスは割とクッキリ見え、オピル・カンドルが明るく長くガンゲスに並ぶ。ニロケラスのコンプレクスも見え始めた。南極冠の暗帯の外にはアルギュレが明るく見え始めたようだ(砂色)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141109/CFs09Nov14.jpg

 

 

14 November 2014 (λ=233°Ls~234°Ls, δ=5.4"~5.3")

          CFs氏はω=030°Wでワンセットを撮った。シヌス・サバエウスの西側が出ており、シヌス・メリディアニは確認出來、マルガリティフェル・シヌスからオキシア・パルスも明確。アラムはやや明るい。南半球の暗部は濃淡があるが、定かではなく、アルギュレは淡く見えている。南極冠の縁はスムーズではなく、アルギュレの方に突き出しが出ている。北半球のマレ・アキダリウムは形をなさないが北端に可成り濃い模様が見え、これが中心か。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141114/CFs14Nov14.jpg

 

 

16 November 2014 (λ=234°Ls~235°Ls, δ=5.3")

          CFs氏はω=005°WR像を送ってきた。南極冠は明るく、朝方の不規則性が見える。縁のダーク・フリンジは濃い。左のリムの表現は悪いが、シヌス・サバエウスは好く見え、アリュンの爪は両方見える。マレ・セルペンティスから跳ね上がり、ノアキスに伸びている。マルガリティフェル・シヌスの北部も見え、マレ・アキダリウムも朝方に出ている様子。黄雲の兆しはないが、δ=5.3"では十分効果的な像。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141116/CFs16Nov14.jpg

 

 

18 November 2014 (λ=236°Ls, δ=5.3")

            CFs氏がω=350°Wでワンセット。Rで見ると前日の像よりシヌス・メリディアニの描冩など柔らかいのだが、マレ・セルペンティスの邊りが太く出ていて前日より異常。シュルティス・マイヨルも細く午後端に出ている。南極冠のダークフリンジの外側は明るい帶。マルガリティフェル・シヌスは朝縁に近くなった。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141118/CFs18Nov14.jpg

 

 

20 November 2014 (λ=237°Ls, δ=5.3")

             CFs氏がω=328°Wでワンセットを撮り、太いマレ・セルペンティスの邊りが好く見えるようになった。ヘッラスはGにも出ていて、内部は地肌色である。シュルティス・マイヨルも大きく見えている。シヌス・メリディアニは朝縁に近くなった。ヘッレスポントゥスの前方は淡くなっている。マレ・セルペンティスは確かに太い。ヘッラスが真っ白であったλ=130°Ls邊りではここはそれほど顕著ではなかった。λ=160°Ls邊りでも(まだtiltは北向きだが)然程でなかった。λ=180°Ls邊り(8月後半)でも然りであった。9月にはこの角度の画像はほとんど無い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141120/CFs20Nov14.jpg

 

 

26 November 2014 (λ=241°Ls, δ=5.2")

             CFs氏はω=278°Wでワンセット。ヘッラスは全貌が入っている。最早シュルティス・マイヨルも朝方へ移っていて、マレ・キムメリウムも見えている。φ=12°Sで小さくなった南極冠がこちらに傾いている。既に偏芯は起こっているはずで、模様の同定には南北線を見極める必要が出ている(方法はCMO EphemerisΠ値の説明があるところ、何處でも)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141126/CFs26Nov14.jpg

 

 

                   

2 December 2014 (λ=245°Ls, δ=5.1")

            CFs氏は引き続き、ω=223°Wでワンセットを得る。φ=14°S。マレ・キムメリウムの全貌が見えており、マレ・シレヌムの入ってくるところかも知れない。マレ・テュッレヌムの東端は好く見えており、チフュス・フレートゥムとおぼしきところの暗點が出ている。北半球には幾つか暗斑が見えるが、南北線の同定が出來ていない以上、あれこれ言うのは難しい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141202/CFs02Dec14.jpg

 

 

23 December 2014 (λ=258°Ls, δ=4.9"~4.8")

            Yukio MORITA (Mo)氏がω=263°W L像を含むワンセットを得た。φ=19°S。しかし、南極冠の様子が分からない。Rで辛うじてシュルティス・マイヨルが朝縁近くに確認でき、ヘッラスも見えるかといった状況。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141223/Mo23Dec14.jpg

 

 

29 December 2014 (λ=262°Ls, δ=4.8")

             CFs氏がω=317°Wでワンセット。φ=21°Sで、南極冠は小さく円くこちらを向いている。大きな(大接近型の) シュルティス・マイヨルとヘッラスの存在は明確。マレ・セルペンティスは太く、2003年のJuly黄雲の後のマレ・セルペンティスの様子を思い浮かべさせる。次の項目Fを參照

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/2003News.html

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/141229/CFs29Dec14.jpg

 


日本語版ファサードに戻る / 『火星通信』シリーズ3 の頁に戻る