2013/2014
CMO/ISMO 観測レポート#15
2014年九月の火星観測 (λ=188°Ls~206°Ls)
CMO
#429 (
村上 昌己・南 政 次
♂・・・・・今期 15回目となるレポートは九月中の観測が纏められている。火星は順行を続けて「てんびん座」から「さそり座」へと進み、視赤緯を19°Sから23°Sへと下げて、九月30日にはアンタレスの北を通過した。北半球からの日没時の高度は低く観測条件はますます悪くなって、南半球の観測を除いて今観測期は終わりとなった。視直径はδ=6.8"から月末にはδ=6.1"と小さくなった。季節はλ=188°Lsから206°Lsと南半球の黄雲発生の季節始まっていたが、今月には顕著な擾乱は捉えられていない。傾きはφ=15°Nから07°Nとだいぶ南を向いてきて、南半球も大きく見えるようになり、後半になると南極冠が捉えられる様になっている。位相角はι=42°から40°となって、欠けは大きいが少し丸みが戻ってきた。
♂・・・・・この期間には、アメリカ大陸からの観測も入らなくなって、報告はまばらになった。下旬になると南アフリカからの報告が継続して来るようになり、細々ながら火星面の様子は垣間見られた。観測報告は以下のように4名の報告者から19件の報告を拝受しただけとなってしまった。内訳は国内から1名3観測、オーストラリアから2名12観測、南アフリカから1名4観測であった。
クライド・フォスター (CFs) センチュリオン、南アフリカ
4 Sets of RGB + 4 IR
Images (24, 26, 27,
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
3 Sets of RGB
+ 3 LRGB Colour +
モーリス・ヴァリムベルティ(MVl)
メルボルン、オーストラリア
10 Sets of RGB
+ 10 IR Images (4, 5, 21, 22,
36cm
SCT @f/24 with an ASI 120MM
デーヴィッド・ウェルドレイク (DWd) ニューサウスウエールズ、オーストラリア
2 Sets of LRGB
+
♂・・・・・ 観測は次のようになされている。各観測を先月のように短評する。
Maurice
VALIMBERTI (MVl) 氏がω=252°W 、255°Wで R、G、B およびIRの2セットを撮り、RGB像を作った。模様はIRで確認出來る。2セットの時間差が足りないが、後者のR、IR像ではシュルティス・マイヨルがより明確。マレ・キムメリウムなどもRGB像よりIR像でより好く見えている。RGBではエリュシウムがやや明るく見えるが、白さはない。 前者のR像ではアエテリアの暗斑が明確。 Gではヘッラス前方、南アウソニア邊りにやや明るい擴がり。 南端も鈍い明るさが見えるが、その北のマレ・クロニウムが些し濃く見えると言える。北端は鈍い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140904/MVl04Sept14.jpg
MVl氏が引き続きω=251°W、ω=260°Wで同様の2セットを撮った。エリュシウムの形がアエテリアの暗斑と共に確認出來る。前者ではエリュシウム内部の明帯が見えるようである。後者ではシュルティス・マイヨルがすっぽり入っている。ウトピアの先端も見える。南端でマレ・クロニウム乃至チフュス・フレツムは縁取りのように濃い。マレ・キムメリウムは未だRや IRでは詳細の描写が可能である。北極域はBでやや明るいか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140905/MVl05Sept14.jpg
David
WELDRAKE (DWd)氏がω=166°WでLRGB像を合成した。LRGB像は光輪に包まれたように見え、南端も北端も白くなっているが、南端についてはRでは明るくはなく、G、Bでやや明るいので、靄の類が南極冠の北端に検知されているかと思う。この場合、Luminance
imageの積極的な意味が分からない。マレ・シレヌムは濃い。中央に明るい部分が見え、オリュムプス・モンスの邊りかとも思うが、まだ朝の後半である。G、Bによれば北端にも靄があるようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140913/DWd13Sept14.jpg
Yukio
MORITA (Mo)氏がω=174°Wで ワンセットを撮り、LRGB像とRGB像を拵えた。マレ・シレヌムが左側に濃く見え、その南に明るい領域。この明るさはRで顕著で南極冠が見えるのかとも思うが、G、Bで然程ではない。 北半球朝方にGで明るい部分があり、RでもBでも見えている。RではプロポンティスIの北側であろうか、その南側先方(プロポンティスI前方)に微細な明部が伸びている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140914/Mo14Sept14.jpg
Mo氏がω=114°Wでワンセットを撮った。模様は薄ぼんやりしていて、ソリス・ラクスの邊りに些し濃度がある程度。左端はLRGB、RGB共にやや明るいが、南端は矢張りぼんやり。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140920/Mo20Sept14.jpg
MVl氏がω=093°Wおよびω=098°Wで IR込みの2セットを与えた。ソリス・ラクスはR 及び Lで可成り明確で形好く、パシスも見えている。チトニウス・ラクスも好く出ている。オピル-カンドルは明白に明るい。南端はGで明るく、後者のRでも見え、後者では南極冠らしい様子。北極域はやや明るい程度だが、RGB像のその午後端では可成り白い固まり。φは09°N。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140921/MVl21Sept14.jpg
MVl氏がω=077°W、ω=088°Wで2セットの良像を得た。 前者では南極冠の端が白く出ている。ソリス・ラクス領域も大きく明確。南極冠に沿ってマレ・アウストラレが濃く、暗帯のように走っている。ソリス・ラクスより遙かに濃い。チトニウス・ラクス、明るいオピル-カンドル、アウロラエ・シヌスからマルガリティフェル・シヌスまで區別が出來る。Rではニロケラスも明確。R像はIR像より優れている。マレ・アキダリウムは横になりながら、端近い北部は濃く、白雲の塊に後続している。この雲は朝方まで續いている。GやBで明白。後者の像群も好いが、前者には適わない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140922/MVl22Sept14.jpg
DWd氏が ω=072°WでLRGBのワンセットを与えた。矢張り光輪状に縁が明るい。ソリス・ラクス邊りとマレ・アキダリウム周辺に暗部。両者に挟まれる砂漠が好い色である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140923/DWd23Sept14.jpg
Clyde
FOSTER (CFs)氏が新しい装置で再登場(ZWO ASI 120MC→ZWO ASI 120MM)。ω=167°Wで、R、G、Bに加えてIR742のワンセットを与えている。RGB像を大きく見せている。南極冠の片鱗が明白で、マレ・シレヌムが濃く左側に明確。注目するのは、北半球の北部は薄い白霧に覆われているが、左端北部に白い塊が見えること。Rでも明るくクッキリしている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140924/CFs24Sept14.jpg
CFs氏がω=166°Wでワンセット。前々日と同じ角度だが、シーイングは悪いようだ。北側左端の白い塊は見えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140926/CFs26Sept14.jpg
CFs氏がω=138°Wで IR像附きのワンセット。南極冠の片鱗(北端)が明白。マレ・シレヌムが濃く、その東部の北のメムノニア邊りの細かい暗部が出ている。ソリス・ラクスは前方端に現れ始めたところ。北極域はBで明るく霧が出ているようだが、Rでは判らない。例の端の明斑は出ている様子。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140927/CFs27Sept14.jpg
Mo氏がω=031°Wでワンセット。LRGB像とRGB像。 シヌス・メリディアニが左側に出ていて、アラムが白く明るい。 RやL像ではクリュセがやや明るく内部構造を見せている。特に西部には明斑があるかもしれない。ガンゲスが見えている。南極冠はRでクリアだが、些し小さく見える。北極部はぼんやりしているが、マレ・アキダリウムの北部は相当雲に侵されている様子。Lでは北極部朝縁がやや明るい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140928/Mo28Sept14.jpg
MVl氏がω=000°W、003°W、009°Wで三セットを得た。薄明の影響か汚れた映像だが、Rで見る限り、三像とも好く出ている。シヌス・メリディアニは二本の爪に分かれているし、シヌス・サバエウスもなかなかの曲線である。最初の像ではアラムが明るい。ヘッレスポントゥスはマレ・アウストラレに續くゴーストと区別がつかないが、淡いマレ・セルペンティスと連結している部分はデプレッシオネス・ヘッレスポンチカエに連結しているようだ。マレ・アウストラレとの間には雲帶がある。南極冠の片鱗は見えている。 オキシア・パルス邊りも割と明確でオクススも分離しており、マレ・アキダリウムは朝方で雲状物に覆われている。但しBなどで然程明るくない。RGBは三像目が上出来。北極域東縁には白い小さな塊が見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140929/MVl29Sept14.jpg
CFs氏がω=110°Wでワンセットを与えた。南端(南極冠)と北極部の雲の擴がりの描写が好い。Rで見るとソリス・ラクスからチトニウス・ラクス、アウロラエ・シヌスまで分離している。マレ・アキダリウムとニロケラスも形を残している。テムペには濃斑點が見ええいる。北極雲はGとBで明るく、Rでは出ない。IRよりR像が優れている。 δは6秒に近くなった(φ=07°N)が、CFs氏の活躍は十月、十一月と續く。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140930/CFs30Sept14.jpg