2013/2014
CMO/ISMO 観測レポート#12
2014年六月の火星観測 (λ=139°Ls~154°Ls)
CMO
#426 (
村上 昌己・南 政 次
♂・・・・・・六月にも火星は「おとめ座」で順行を続けてスピカへ近づいていった。視赤緯は3°Sから7°Sへと下がって、日没時の地平高度は低くなって夜半前に沈むようになっていた。視直径はδ=11.8"から減少して、23日には10"を下回り月末にはδ=9.5"となった。季節はλ=139°Lsから154°Lsへ移った。位相角はι=34°から41°と朝方の欠けが大きくなった。傾きはφ=25°N台で上旬に最大の25.5°Nとなりゆっくりと戻っていった。中旬まではウトピア北方の濃い朝雲の活動は続いていたが、マレ・アキダリウムの朝方の活動は目ただなくなっていった。また南端には明るさが出てきている。
♂・・・・・・この期間、日本では上旬には各地で梅雨入りとなり曇天傾向が続いた。報告数は少なくなり稠密な追跡は難しくなっていった。観測報告は以下のように21名の報告者から70件の報告を拝受していて、国内から4名14観測、アメリカ大陸側から8名26観測、ヨーロッパから5名23観測、オーストラリアから3名5観測、イランから1名2観測であった。
レオ・アールツ (LAt) ベルギー
2 Colour
Images (1, 2 June
2014) 36cm SCT with a DMK21AU618
ジョン・ブードロー (JBd) マサチューセッツ、アメリカ合衆国
1 Set of RGB Images (8 June 2014) 37cm Dall-Kirkham with an ASI 120MM
スティーファン・ブダ (SBd) メルボルン、オーストラリア
1 RGB Image (9 June 2014) 40cm Dall-Kirkham with a DMK21AU04
グザヴィエ・デュポン (XDp) サン・ロック、フランス
10 Sets of RGB + 1
Colour Images (7, 11, 14, 18, 19, 21, 22, 24 June 2014)
18cm Spec with an i-NOVA PLA C+
ビル・フラナガン (WFl) テキサス、アメリカ合衆国
2
Sets of LRGB Images (11, 12 June 2014) 36cm SCT @f/27 with a Flea
3 ICX618
サデグ・ゴミザデ (SGh) ルーデヘン、イラン
2 Colour
Images (7, 29 June 2014) 36cm SCT with a DMK21AU04.AS
ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
6 Sets of RGB
+ 7 IR Images (2, 3, 7, 8, 16, 23 June 2014) 36cm SCT with an ASI 120MM
リック・ヒル (RHl) アリゾナ、アメリカ合衆国
1 Colour
Image (1 June 2014) 20cm
Maksutov-Cassegrain with a DBK21AU04
石橋 力 (Is) 相模原市、神奈川県
3 Colour
Images (1,
15 June 2014) 31cm Spec with a SONY HC9 VideoCam
マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ
5 Sets of RGB + 2 Colour Images (1, 5,~7,
10, 11, 15 June 2014)
28cm
SCT with a DMK21AU618
熊森 照明 (Km) 堺市、大阪府
1 LRGB + 1 B Images
(19 June 2014)
28cm SCT @ f/45 with an ASI 120MC & Basler Ace acA1300-30gm
マーチン・ルウィス (MLw) ハートフォードシャー、英国
1 Colour Image (12 June
2014) 45cm Spec with an ASI 120MC
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
9 Colour Images
(3, 7, 15,~17 June 2014) 25cm SCT
with a ToUcam Pro II
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
3 Sets of RGB
Images (11, 13, 28 June 2014) 31cm SCT with a Flea 3
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
8 Sets of RGB
+ 8 LRGB Colour +
36cm SCT with a Flea 3
西田 昭徳 (Ns) あわら市、福井県
2 Sets of RGB
+ 2 IR Images (25 June
2014) 30cm Spec with a
DMK21AU618.AS
ドン・パーカー (DPk) フロリダ、アメリカ合衆国
2 Sets
of RGB Images (6, 29* June 2014)
36cm SCT @f/24, 41cm Spec @f/26* with an ASI 120MM
シャルレス・トリアーナ (CTr) ボゴタ、コロンビア
2 Sets of RGB + 1 Colour
Images (1, 2 June 2014) 25cm
SCT @f/28 with an ASI 120MM
モーリス・ヴァリムベルティ(MVl)
メルボルン、オーストラリア
3 Sets of RGB + 3 IR
Images (5 June 2014) 36cm SCT @f/24
with an ASI 120MM
ヨハン・ヴァレッル (JWr) スウェーデン
2 Sets of RGB
Images (1, 10 June 2014) 22cm Spec @f/27 with a DBK21AU618
デビッド・ウェルドレイク (DWd) ニューサウスウエールズ、オーストラリア
1 Set of LRGB
+ 1 L Images (7 June
2014) 13cm refractor @f/70
with an ASI 130MM
♂・・・・・・ 前回に引き続き、六月の観測を時刻順序にレビューする。観測者名は初出の後は、観測者コードで示す。上記名簿を参照されたい。4, 20, 26, 27 Juneは缺像であった。
1 June 2014
(λ=139°Ls~λ=140°Ls, δ=11.8")
Charles
TRIANA (CTr)氏はω=344°Wとω=002°Wで二セットを撮像した。前者ではマレ・アキダリウムの大半が出ていて、而もオクスス沿いとマレ・アキダリウム朝方沿いに雲帶が出ており、油断のならない風景である。マレ・アキダリウムと北極冠の間にも濃い明るい雲がある。対極にはヘッラスが白く明るく今隠れるところ。ω=002°Wではマレ・アキダリウム西北部からその朝方の雲の中に三角形の暗部が見えていて、これは1999年五月30日(λ=147°Ls)邊りで福井で観測された現象を思い起こさせる。CMO#234 1998/99
Mars CMO Note (13) (25 August 2000號を參照されたい)。一日だけの現象ではなかった。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140601/CTr01June14.jpg
Richard
HILL (RHl)氏がω=358°Wで單カラー像:北極冠の南側の雲が出ているが、マレ・アキダリウム上の雲は存在は分かるものの未だ有機的には見えない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140601/RHl01June14.jpg
Tsutomu
ISHIBASHI (Is)氏はω=118°W と127°Wの單画像を二枚並べた。北極冠が判るだけで、他は殆ど形をなさない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140601/Is01June14.jpg
Manos
KARDASIS (MKd)氏はω=240°Wでワンセット。ウトピアに濃い朝霧が出ている。北極冠と同じくらいに明るい。エリュシウムがCM近くでやや明るい。シーイングは悪くマレ・キムメリウムがぼんやり見え、南端はガスか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140601/MKd01June14.jpg
Leo AERTS (LAt)氏はω=255°WでRGB像とR-RGB像、ω=257°WでIR-RGB像。最後の二像は微細は出るが、ウトピアの美事な朝雲はRGBならではで、最後の二像では迫力がない。南端の白雲もRGBで最も綺麗。RGBでは朝のシュルティス・マイヨルが朝霧に隠れんばかり。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140601/LAt01June14.jpg
Johan
WARELL (JWr)氏はω=289°Wでワンセット。シュルティス・マイヨルの南中を各色で區別しているが、北極冠やヘッラスは形を成さない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140601/JWr01June14.jpg
2 June 2014
(λ=140°Ls)
Peter GORCZYNSKI (PGc)氏がω=320°Wでワンセット(IR742はω=323°W)。Rでの微細も含めて未だ迫力がある。ウトピアの朝雲は流石夕方になっても残っているようで、Bに明白でRGBでも見えている。ウトピアは沈み始めているが、北極冠は奇怪な形。シュルティス・マイヨルではホイヘンスなどが未だ明確で、舊モエリスの方への飛び出しも好く見える。シュルティス・マイヨルとウトピアの間の細かな模様も好く出ている。マレ・セルペンティスの邊りも、どうでしょう、一寸繋がりが見えるかも知れない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140602/PGc02June14.jpg
CTr氏はω=354°Wで單カラー像。像自身もたいへん好くて、シヌス・メリディアニからマレ・アキダリウム邊りに掛けての氣象的様子は興味深いが、單獨像であるから、続きが欲しいところ。マレ・アキダリウムの朝端も興味深い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140602/CTr02June14.jpg
LAt氏はω=248°WのRGB像。ウトピアの朝霧は明白。オリュムピアは健在。エリュシウム内部もピンク條も含めて詳しい。マレ・キムメリウムの詳細も見えている。シュルティス・マイヨルの朝霧は好く判らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140602/LAt02June14.jpg
3 June 2014
(λ=140°Ls)
Frank
MELILLO (FMl)氏はω=316°W。シュルティス・マイヨルが真っ黒、ヘッラスは真っ白。北極冠も見えるが、ウトピアは少し遅い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140603/FMl03June14.jpg
PGc氏はω=317°Wでワンセット(IR像はω=319°W)。矢張りウトピアに朝霧が残っている。シヌス・サバエウスの邊りはゴーストが目立つが、北極冠の南側は興味深い描写。 Bでは北極冠から吹き出しが出ている様な感じ。ヘッラス中心は白く明るいが、IRでは目立たない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140603/PGc03June14.jpg
5 June 2014
(λ=141°Ls)
Maurice VALIMBERTI (MVl)氏はω=074°W、ω=080°W、ω=084°Wで三セット。マレ・アキダリウム北西部が出ていて、興味のあるところだが、雲塊は無いようで僅かにガスっているかというぼやけた感じ。像の朝霧も強く描冩されないが、タルシス三山は暗點として出ている様子。視直徑の所爲か、全体淡い。然し、ソリス・ラクスは南端近くで濃い。北ではヒュッペルボレウス・ラクスが濃く、その北で北極冠が二つに割れた感じ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140605/MVl05June14.jpg
MKd氏はω=171°Wでワンセット。朝のウトピアに朝霧が出ている。Bでは他に朝のエリュシウムの邊りの雲が見える。オリュムピアも分離している様子。プロポンティス I は濃く見える。夕方のタルシス方面は特徴が退化して、見分けが付きにくい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140605/MKd05June14.jpg
6 June 2014 (λ=141°Ls~λ=142°Ls)
Don PARKER (DPk)氏はω=279°Wでワンセット。ιが36°で欠けが強く、シュルティス・マイヨルはCM前に見える。シュルティス・マイヨルはアエリア北の朝霧から完全に脱してはいない。夕方のエリュシウムは内部全体が白い。ここから霧が立ってシュルティス・マイヨルに向かっている。ヘッラスは鈍く見える。北極冠も靄を被ったように輪郭が出ない。然し、オリュムピアの片鱗は強く出ている。ウトピア北部には薄雲がなかなかの規模で漂っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140606/DPk06June14.jpg
MKd氏はω=213°Wでカラー單像。エリュシウムがCM近くに覗える程度でシーイングは悪いが、ウトピアに朝霧が出ているのは確認出來る。北極冠も明るいが、形など不明。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140606/MKd06June14.jpg
7 June 2014 (λ=142°Ls)
PGc氏がω=276°Wでワンセット、続けてω=279°W、284°WのIR742像を撮った。RGBでは朝方のシュルティス・マイヨルは然程蒼くはないが、Bではシュルティス・マイヨルが見えないから、それ相応の色彩だと思う。ヘッラスは南端で白い。重要事項として、ウトピア内部には白霧が強い。オリュムピアは北極冠と分離して見えている。エリュシウムは夕縁近いが、然程明るくはない。IR像はかなりの詳細を見せる。ホイヘンスなど好く見え、アエテリアの暗斑も濃い。ウトピア内部に淡い斑點が幾つか見えるが、Rに見られる様子やG,Bでの白雲(もしくは霧)との對應は判らない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140607/PGc07June14.jpg
FMl氏がω=286°Wの單像。シュルティス・マイヨルが濃紺、ウトピアは濃褐色、ヘッラスと北極冠、夕端は白い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140607/FMl07June14.jpg
David WELDRAKE (DWd)氏はω=055°WでLRGBと附属の成分を見せる。内部に淡い部分を示すマレ・アキダリウムが、濃いヒュッペルボレウス・ラクスと共に明確。イアクサルテスの西に雲状のものが見えるが、極雲らしいものは見えない。北極冠は明るい。マレ・アキダリウムの先方、後方に地面らしい茶色の部分が見える。ソリス・ラクスも濃いようで、その北に白雲を抱えているようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140607/DWd07June14.jpg
Sadegh
GHOMIZADEH (SGh)氏はω=162°Wの單獨像、ウトピアの朝霧が濃く出ているようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140607/SGh07June14.jpg
Xavier DUPONT (XDp)氏はω=170°W單獨像と、ω=186°WのR,V,Bと合成像を添付。前者、後者とも少し退化したタルシス山系、オリュムプス・モンス邊りを可成り描写し、後者では朝方のエリュシウムも明確で、Bでは雲のケブレニアからエリュシウムに及ぶ様子が出ている。プロポンティス I は濃い。北極冠は小さいが南西にオリュムピアが見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140607/XDp07June14.jpg
MKd氏はω=181°Wでワンセット。オリュムプス・モンスの邊りは夕方に出ているが、西側斜面の明部など出ているようだが、往時とは弱くなっている。エリュシウムは朝方で霧。Gで複雜。北極冠がオリュムピアと共に複雜。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140607/MKd07June14.jpg
8 June 2014 (λ=142°Ls~λ=143°Ls)
John BOUDREAU (JBd)氏はω=274°Wでワンセット、DPk氏と同じカメラで可成りの良像である。ウトピアの朝霧は感じよく、午前の姿を見せている。オリュムピアも夕方だが格好がよい。夕方のエリュシウムも内部構造が明白。南端は真っ白。シュルティス・マイヨル後方の朝霧は強くはない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140608/JBd08June14.jpg
PGc氏はω=276°Wでワンセット(IR像はω=279°W)。矢張り、ウトピアの朝霧は綺麗に殘っている。Bに明白。シュルティス・マイヨル後方の朝霧もかなり出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140608/PGc08June14.jpg
9 June 2014 (λ=143°Ls)
Stefan BUDA (SBd)氏がω=028°Wでカラー単像。ブランガエナも明確で、オクスス暗點(Oxus dark segment)も見えるかという良像で、マレ・アキダリウム内部や北極冠の描冩も好い。但し、極雲は見当たらない。南端も鈍い明るさで、全體ダストが漂っているのかもしれないという印象を与える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140609/SBd09June14.jpg
10 June
2014 (λ=143°Ls~λ=144°Ls)
MKd氏がω=147°Wでカラー単像。北極冠域もぼやけが來ており、タルシス關係の白雲も見られないが、地方時の問題もあるかもしれない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140610/MKd10June14.jpg
JWr氏がω=180°Wでワンセット。Rがやや見られるか。プロポンティス I は見えているが、北極冠ははっきりしない。高度18度の由。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140610/JWr10June14.jpg
11 June
2014 (λ=144°Ls)
Efrain MORALES (EMr)氏がω=234°Wでワンセット。些しぼやけているが、像が大きいのは見易い。ウトピアの朝霧は非常に綺麗である。Bではウトピアの朝霧は北極冠やオリュムピアと同等の明るさで冩っている。シュルティス・マイヨルに先行する朝霧も出ているが、ウトピアより薄い。Bで比較が出來る。 エリュシウム内部はやや白く、まだ明確ではないシュルティス・マイヨルの方に走っている。ケブレニアは明るく、アエテリアの暗斑は濃く、プロポンティスIは些し弱い。南端は些し靄っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140611/EMr11June14.jpg
Bill FLANAGAN (WFl)氏はω=262°Wで、R、G、B像 とLRGB像を示した。Bではウトピアの朝霧が濃く長細い形で明白に殘っているが、Rでは痕跡も見えない。LRGBでは夕方のエリュシウムの内部構造が明確で、エリュシウム・モンスの白雲も見えている。マレ・キムメリウムの西部がまだ見えていて、邊りはやや詳しく南端にかけてR像から得られる程良い明暗分布が興味深い。シュルティス・マイヨルはBではほとんど見えないが、Rで全體が見え、蒼くなっている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140611/WFl11June14.jpg
MKd氏がω=143°Wでワンセットを与えた。北極冠と分離してオリュムピアが朝に見える程度にシーイングは回復し、タルシス周邊に幾らか模様が見えているが、同定は保留する(23JuneのPGc像參照)。マレ・シレヌムの尻尾邊りも見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140611/MKd11June14.jpg
XDp氏もω=147°Wでワンセット撮っている。北極冠と朝のオリュムピアが分離して見えるが、タルシス周邊の濃淡の同定は難しい。特に夕端を潰すと難しくなる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140611/XDp11June14.jpg
12 June
2014 (λ=144°Ls~λ=145°Ls)
WFl氏がω=249°Wでワンセット。興味深いのは、エリュシウム・モンスらしい明點が、R、G、Bに同等に出ていることと、オリュムピアがB上で北極冠の鈍さと逆に際立って明るいことである。オリュムピアと北極冠の現状に違いがある。なお、ウトピアの朝霧は健在で、朝方のシュルティス・マイヨルを覆う霧とも連動しているようだが、Bでは特に輝く部分を含んでいる。 マレ・キムメリウムの大半が殘っていて、ヘスペリアと共に詳しい。南端は些し汚れた白さ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140612/WFl12June14.jpg
Martin LEWIS (MLw)氏はω=158°Wでカラー単像。オリュムピアと北極冠は分離している。オリュムプス・モンスのあたりも見当が附くが、ι=38°だから、まだ午後にはなっていないだろう。ウトピアの朝霧は分からない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140612/MLw12June14.jpg
13 June
2014 (λ=145°Ls~λ=146°Ls)
EMr氏がω=223°Wでワンセット。濃淡や色彩、霧の分布がよく判る良像。ウトピアの朝霧は明白で、Bでも北極冠域に次ぐ明るさ。シュルティス・マイヨルに先行する朝霧も出ているが、些し弱い。 エリュシウム内の霧は上部シュルティス・マイヨルの方向にも流れているが、夕方のケブレニアにも及んでいる。ケブレニアの西、ウトピアの南に広く霧の被らない地面が褐色で露呈して、Bでは杳い。 オリュムピアは南中で明るく白い。南端は白く靄っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140613/EMr13June14.jpg
Yukio MORITA (Mo)氏が梅雨の合間からω=021°Wの像を得た。L、R、G、BでLRGB像とRGB像を構築している。δ=10.7"の割に好い描冩だと思うが、北極冠の白さが出ないのはB像の悪さの所爲か。像としてはブランガエナも見えるし、オクシア・パルスもよく出ている。角度としてもマレ・アキダリウムが全部見えるので重要な角度だが、極雲は出ていない様子。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140613/Mo13June14.jpg
14 June
2014 (λ=146°Ls)
Mo氏は引き続きω=004°Wで同様のセットを得た。マレ・アキダリウムが朝方だが、極雲があってもBでは北極冠もしっかりした輪郭を持たないから、出ないであろう。RGB、LRGBでシュルティス・マイヨルが左端で細く空色で見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140614/Mo14June14.jpg
XDp氏がω=123°Wでワンセット。 北極冠とオリュムピアが割と好く見え、南端の被りも明白だが、南半球に見える微細斑點群がよく判らない。これは 11JuneのMKd氏像やXDp氏像にも見られたもので、一度詳しく調べたいと思うが、以下の23JuneのPGc氏像を參照されたい。尚、Derotationの所爲か左端がゴースト風。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140614/XDp14June14.jpg
15 June
2014 (λ=146°Ls~λ=147°Ls)
FMl氏がω=202°W、216°Wのカラー像を提出したが、最初から問題視された。要するにエリュシウムからケブレニアにかけて白い帶が出ていて、ダスト騒ぎになったようであるが、これは白雲が異常に冩った例であろう。FMl氏はR、G、Bの分解像を並べるのだが、どれも同じで、Bがこんな姿で写るはずがない。これはToUcamのカラー像を分解したものであろう。もしB像が單獨像であるなら、B像が全くIRを避けているようにも見えない異常な像である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140615/FMl15June14.jpg
Is氏がω=019°Wの像を二様に報告した。シヌス・メリディアニやマレ・アキダリウムの存在は判る程度で、北極雲域も明白でなく、何とも申し上げようがない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140615/Is15June14.jpg
MKd氏がω=104°Wのワンセットで可成りの像を示した。マレ・アキダリウムが左端に横たわるかたちで、ニロケラスも分離でき、南ではソリス・ラクスが濃く、ティトニウス・ラクスも見える。北極冠邊りは惚けが來て、もはやマレ・アキダリウム北の雲狀のものもうまく掴めないが、活動はある模様。タルシス三山やオリュムプス・モンスも所在は判る。Bではテムペ以西に雲が出ているが、タルシス邊りの朝霧は強く冩らなくなっている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140615/MKd15June14.jpg
16 June
2014 (λ=147°Ls)
FMl氏はω=185°W、198°W、213°Wと追っている。相変わらず、エリュシウムからケブレニアにかけての白雲が強く冩っている。プレグラが褐色で濃い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140616/FMl16June14.jpg
PGc氏がω=208°Wでワンセット(プラスω=210°WでIR像)。エリュシウム内の様子がよく出ている。Bでは然程エリュシウム内部やケブレニアの一部はRGBでも然程明るくない。ウトピア後続の朝縁は朝霧が強い。北極冠は輪郭が惚けているが、南にオリュムピアが淡く見えている。オリュムピアも夕方にならないと明るくならないか。IRではマレ・キムメリウムの可成りの詳細が冩っている。プレグラも普通、プロポンティスIは濃い。FMl氏の旧式な像が出てくると、PGc氏のC14は真価を出す。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140616/PGc16June14.jpg
17 June
2014 (λ=147°Ls~λ=148°Ls)
FMl氏がω=178°W、200°Wのカラー像。矢張りエリュシウムからケブレニアにかけて白雲状の写り方が強い。夕縁も真っ白になる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140617/FMl17June14.jpg
18 June
2014 (λ=148°Ls)
Mo氏がω=325°W、329°W、334°Wの三組を撮像した。シュルティス・マイヨルの先行部に夕霧が立ち込み始めている。ヘッラスはRGBでも然程白くも明るくもない。最終像ではシヌス・メリディアニの二股が見始めているが、北極冠も然程白くはない。ただRでは割と形が見えている。RGBはどれも標準以上。δ=10.4"だが、低空になって條件は悪くなっていると思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140618/Mo18June14.jpg
XDp氏はω=096°Wでワンセット。北極冠はどのフィルターでも明白。横になるマレ・アキダリウムの北、イアクサルテスの東と思われるところに夕雲。ヒュペルボレウス・ラクスは濃い。朝霧もタルシス山系に些し見え、アルシア台地が濃褐色で目立っている。ティトニウス・ラクスも見えている。18cmでなかなかの活躍である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140618/XDp18June14.jpg
19 June
2014 (λ=148°Ls~λ=149°Ls)
Teruaki KUMAMORI (Km)氏久々の登場で、ω=318°Wのカラー像とB像。シュルティス・マイヨルが午後に見える風景だが、ヘッラスと北極冠域がBでもやや明るい感じ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140619/Km19June14.jpg
Mo氏像は二連作からなり、ω=324°Wと329°Wでの撮像である。どちらかといえば前者が標準的な像が揃っている。北極冠はRでよく捉えられているが、RGBでは黄色っぽい。左端のヘッラスも白さがない。RはLより餘程好く、砂漠内の小班点なども傳えている。マレ・セルペンティスなども一時より濃く出ていると思う。Bではシュルティス・マイヨルの先行部、すでに左端近くでは、白霧が濃いのが両者で見て取れる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140619/Mo19June14.jpg
XDp氏はω=084°Wでワンセット。標準以上の像である。北極冠は小さく丸く、北極冠にくっつくヒュペルボレウス・ラクスは濃く、この濃度は南のソリス・ラクスにも見られる。こちらは南端の気象条件に影響されているのだろう。マレ・アキダリウムは十分に全貌を見せていて。ニロケラス、ガンゲスとたどれる。ティトニウス・ラクスも好く見える。實は朝方のタルシス山系も明確に分離出來る。その邊りの朝霧はBで明白。北の方では極雲など見当たらない。像は1.5倍ぐらいは大きくしても好いように思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140619/XDp19June14.jpg
21 June
2014 (λ=149°Ls~λ=150°Ls)
XDp氏がω=035°W、043°Wで二セット。RVB像は1.2倍にしてある(これだけでも我々には見易い)。どちらのマレ・アキダリウムも堂々としている。北西部が濃く、中央帶は些し靄っているかもしれない。少なくとも後続のテムペには朝霧があるようだ。ガンゲスが褐色。南端は可成り幅広く白い。λ=150°Lsというのは南極冠がシンメトリックに戻るときで、縁は50°Sぐらいにあるはずである(CMO #353の最後の稿 Ser2-1021p 參照)。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140621/XDp21June14.jpg
22 June
2014 (λ=150°Ls)
XDp氏がω=026°W、047°Wで二セット。両方とも良像である。マレ・アキダリウムには異常はないようだ。中央部からテムペにかけては霧。ヒュッペルボレウス・ラクスは明確。北極冠はどれにも円く明白。南端の白いところは南極冠であろう。濃いマレ・エリュトゥラエウムの南まで降りている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140622/XDp22June14.jpg
23 June
2014 (λ=150°Ls~λ=151°Ls)
PGc氏がω=133°Wでワンセット。 11JuneのMKd氏やXDp氏像のω=140°W邊りの見え方、14JuneのXDp氏像の南半球の斑點にこのPGc氏像は回答を与える様に思う。タルシス三山が出ていて、アルシアが可成り濃い。更に先行するポエニキス・ラクス、ティトニウス・ラクスなどが濃く見えているようだ。オリュムプス・モンスの邊りも指摘できるかもしれない。北極冠の邊りもIR像で出ている。但し、南北軸が傾いているようで、DPk氏やMo氏の方法を採り入れると好い。また、ωは前日のωと重なるように決めた方がよい。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140623/PGc23June14.jpg
24 June
2014 (λ=151°Ls)
Mo氏がω=269°WでR像、ω=279°Wで一組を撮った。δはついに10"を切った。前者ではエリュシウム内部やマレ・キムメリウムの西端などが好く出ているが、B光像がほしい。ω=279°WのRGBではウトピアの内部の濃淡が出ているが、朝霧が殘っているようには見えない。Bではシュルティス・マイヨルの東側にやや霧があるほか、オリュムピアの尾が南に延びている。ヘッラス側の南極冠が白く出ていない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140624/Mo24June14.jpg
XDp氏がω=010°Wで良像のワンセット。マレ・アキダリウムは全體面に入って居るが、Bではテムペの邊りに朝霧。北極冠の南側にも吹き出しがあるかもしれない。南端はシッカリと白い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140624/XDp24June14.jpg
25 June
2014 (λ=151°Ls~λ=152°Ls)
Akinori NISHITA (Ns)氏がω=263°Wとω=270°Wで二組を得た。シュルティス・マイヨルの朝方を狙ったものだが、特に後者のBではシュルティス・マイヨルの陰も見えないので結構である。その分、RGBで蒼さが出ていると思うが、可成り濃い。濃い草色か。ι=40°になっている。ウトピアは内部は淡いが、IRでもそうなので雲ではないだろう。北極冠の傾きが計算されていないようで、オリュムピアが好く分離されない状態だから、DPk-Mo方式を採用すること。 南端の傾きも從って問題だが、白さは好く出ていると思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140625/Ns25June14.jpg
28 June
2014 (λ=153°Ls)
EMr氏がω=079°Wでワンセット。マレ・アキダリウムが夕方に寝ている。北極冠はぼやけているが、案外Gで明白。朝霧はテムペ後方と朝方のタルシス周邊に見られる。ティトニウス・ラクスはチェックできるが、ソリス・ラクス邊りは濃いだけ。オピル・カンドルは各色で明るく、ガンゲスは褐色。南端は明るいが、偏りがあるか?
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140628/EMr28June14.jpg
29 June
2014 (λ=153°Ls~λ=154°Ls)
DPk氏がω=081°Wでワンセット。RGB像は稀に見る不思議な像で、全體が靄に包まれた風景で、ただ中心部だけに斑點模様が詳しく出ている。たとえば、マレ・アキダリウムの夕方側はボケボケだが、後方のニロケラスなどは微細が出ている。テムペ北の斑點もバッチリ出ている。アウロラエ・シヌスの北側も晴れているが、ティトニウス・ラクスは霧の中のような状態。タルシスの朝霧は濃く出ているが、タルシス三山は暗點として見えている。微細はR像に據るがここでは北極冠も南端の輪郭や明るさがない。イアクサルテス西南にやや明るいところが見られるが、Bでは然程ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140629/DPk29June14.jpg
SGh氏はω=298°Wの單獨カラー像。シュルティス・マイヨルとウトピアの雲の広がりは見えるが、北極冠もヘッラスも明らかではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140629/SGh29June14.jpg
30 June
2014 (λ=154°Ls, δ=9.5")
Mo氏がω=214°Wでワンセットを撮り、この月を締めた。特異なのはウトピア北部、リマ・ボレアリスの南に東西に横たわる白い帶が見られることで、これはBのみならずRでも顕著なので、正体不明である。エリュシウムは真ん中に見えているが、白霧は冩っておらず、ピンク色の縦筋は見えている。マレ・キムメリウムの南の南端は十分に白い。南極冠の端が見えているのだと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140630/Mo30June14.jpg