2013/2014
CMO/ISMO 観測レポート#10
2014年五月前半の火星観測 (λ=124°Ls~131°Ls)
CMO
#424 (
村上 昌己・南 政 次
♂・・・・・・四月に最接近を終えた火星は五月前半にも「おとめ座」にあって逆行を続けていて、視赤緯は3°S付近をゆっくり下がっていった。視直径はδ=14.5"から13.3"に一回り小さくなったが十分な大きさだった。位相角はι=18°から27°に増加して欠けが大きくなっていった。火星の季節はλ=124°Lsから131°Lsへ進み、傾きはφ=24°Nから25°Nと大きく北を向いて、夏の北半球の観測は続いていた。マレ・アキダリウムの朝方の濃い朝雲は、期待どおりに五月1日にはサイクロン型で出現したのが、オーストラリアのウェルドレイク (DWr)氏と森田(Mo)氏によって捉えられた。その後も期間中は連日姿を変えて発生が見られた。
♂・・・・・・この期間には以下のように、32名の報告者から180件の報告を拝受した。国内から8名72観測、アメリカ大陸側から7名18観測、ヨーロッパから10名51観測、オーストラリアから6名35観測、中近東から1名4観測であった。追加報告は、1名7観測が寄せられている。
レオ・アールツ (LAt) ベルギー
2 Colour Images
(3, 5 May 2014) 36cm SCT with a
DMK21AU618
阿久津 富夫 (Ak) 那須烏山市、栃木県
12 Sets
of RGB + 12 IR Images (2, 4, 6, 7* 11 May 2014)
32cm Spec,
40cm Cassegrain* with a DMK21AU618AS
*宇都宮大学天文台
ジェイ・アルベルト (JAl) フロリダ、アメリカ合衆国
1 Drawing (6 May 2014) 400×28cm SCT
ドン・ベーツ (DBt) テキサス、アメリカ合衆国
2 Sets of RGB Images (2, 4 May
2014) 25cm Spec with an ASI 120MM
リシャルト・ボズマン (RBs) オランダ
1 Set of RGB Images (3 May 2014)
36cm SCT with a Bsaler Ace
スティーファン・ブダ (SBd) メルボルン、オーストラリア
5 Sets of RGB Images (10, ~12 May 2014)
40cm Dall-Kirkham with a DMK21AU04
ブラスチラフ・チュルチック (BCr) メルボルン、オーストラリア
5 Sets of RGB Images (7, 8, 10, 11 May 2014) 28cm SCT with a QHY5L-II
グザヴィエ・デュポン (XDp) サン・ロック、フランス
3 Sets of RGB Images (2, 14 May 2014) 18cm Spec with an i-NOVA PLA C+
ビル・フラナガン (WFl) テキサス、アメリカ合衆国
4 Sets of LRGB Images (5, 6 May
2014) 36cm SCT @f/27 with a Flea 3 ICX618
サデグ・ゴミザデ (SGh) ルーデヘン、イラン
4 Colour + 1 B Images (3, 8, 11, 12 May 2014) 36cm
SCT with a DMK21AU04.AS
ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
3 Sets of RGB + 3 IR Images (6, 12,
14 May 2014) 36cm SCT with an ASI 120MM
カーロス・ヘルナンデス (CHr) フロリダ、アメリカ合衆国
1 Colour
Drawing (5 May 2014) 190, 258×23cm Maksutov-Cassegrain
石橋 力 (Is) 相模原市、神奈川県
8 Colour Images (4, 7,
マーク・ジャスティス (MJs) メルボルン、オーストラリア
16 Sets of RGB Images (7, 11,~13 May 2014) 30cm
Spec with a DMK21AU618
マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ
5 Sets of RGB + 2 Colour Images (2, 4, 8, ~ 10, 12, 13
May 2014) 28cm SCT with a
DMK21AU618
ジョン・カザナス (JKz) メルボルン、オーストラリア
2 Sets of RGB Images (11, 12
May 2014) 32cm Spec with an ASI 120MM
近内 令一 (Kn) 石川町、福島県
4 Colour Drawings (6,
熊森 照明 (Km) 堺市、大阪府
7 LRGB
+ 7 B Images (2, 6, 7, 10, 11, 13 May
2014)
28cm SCT @ f/45 with an ASI 120MC & Basler Ace acA1300-30gm
マーチン・ルウィス (MLw) ハートフォードシャー、英国
3 Colour
Images (4, 14, 15 May 2014) 45cm Spec with an ASI 120MC
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
2 Colour Images (3, 6 May
2014) 25cm SCT with a ToUcam
Pro II
南 政 次 (Mn) 坂井市、福井県
9 Drawings (2, 10 May 2014)
480×20cm ED refractor*
福井市自然史博物館天文台*
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
5 Sets of RGB Images (1, 4, ~ 6, 15 May 2014) 31cm SCT with a Flea 3
森田 行雄 (Mo) 廿日市市、広島県
9 Sets of RGB + 9 LRGB Colour + 9 L + 5 Colour Images (1,
2, 6,~8, 13 May 2014)
36cm SCT with a Flea3
村上 昌己 (Mk) 横浜市、神奈川県
13 Drawings
(2,~ 4, 7 May 2014) 320×20cm Spec
西田 昭徳 (Ns) あわら市、福井県
5 Sets of RGB Images (2*, 10** May 2014) 京都大学飛騨天文台*、福井市自然史博物館天文台**
65cm refractor*, 20cm ED refractor** with a DMK21AU618.AS
クリストフ・ペリエ (CPl)
ナント、フランス
16 Sets of RGB + 3 IR Images (3, 14, 15 May 2014)
25cm Spec with a PLA-Mx
ホセップ・ソルデビジャ (JSv) バルセロナ・スペイン
3 Colour Images (4, 14, 15 May
2014) 36cm SCT with a QHY5L-II
ジョン・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ
1 Colour Image (3 May
2014) 28cm SCT @f/25 with a
QHY5L-II
デーヴ・タイラー
(DTy) バッギンガムシャー、英国
8 Colour Images (2, 4, 14, 15
May 2014) 36cm SCT with a Flea 3
モーリス・ヴァリムベルティ (MVl) メルボルン、オーストラリア
4 Sets of RGB + 3 IR Images (10, 13 May 2014) 36cm SCT @f/24 with an ASI 120MM
ヨハン・ヴァレッル (JWr) スウェーデン
3 Sets of RGB Images (1, 7, 15
May 2014) 20cm Spec @f/27 with a DBK21AU618
デーヴィッド・ウェルドレイク (DWr) ニューサウスウエールズ、オーストラリア
3 Sets of LRGB +
♂・・・・・ 追加報告
デミアン・ピーチ (DPc) バルバドス (ウエストサセックス、英国)
7 Colour + 1 B Images (24, 26, 27 April 2014) (36cm SCT with a
SKYnyx 2-0M)
♂・・・・・・ 前回に引き続き、 五月前半(1 May~15 May)の観測を時刻順序に整理し、短評を加える。観測者の名前は略号コードで示すが、初出の場合はフルネームを入れる。詳しくは上の名簿を参照されたい。
1 Mayの稿で示すように、既にマレ・アキダリウムの西北に極雲が発見されたので、この現象を中心にレヴューを進める。
1 May 2014 (λ=124°~125°Ls,
d=14.6"~14.5")
Efrain
MORALES (EMr)氏のω=288°Wの一組の観測がある。EMr氏は4 Mayに於いてω=285°Wで撮像していて、こちらの方が俄然良質で、然程本質的な違いが見当たらない以上、論評は4 Mayに譲る。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140501/EMr01May14.jpg
David WELDRAKE (DWr)氏がω=028°Wの像を撮ったが、これはマレ・アキダリウムの西北にサイクロン型の極雲をターミネター近くで撮していて重要である。オーストラリアでは今期活躍の觀測者が多いが、この日はDWr氏のみである。このLRGB像の範囲でサイクロン型か馬蹄型かは俄には判らないが、B像ではサイクロン型だと思われる。その南の朝霧の様子もテムペ邊りはかなり複雜で今後の議論の対象になろう。 尚、DWr氏の像は口徑13cm使用にも拘わらず、多くの今期の特徴を押さえている。新しい處では、マレ・エリュトゥラエウムに沿って白雲が横たわっている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140501/DWr01May14.jpg
Yukio MORITA (Mo)氏が幸いω=054°Wで観測出來た。サイクロン型の極雲は相当に明白である。サイクロンの渦巻き雲はDWr氏の場合より、少し中に入って、渦巻き雲の縁は円盤に入って居て、朝を離れても残存する可能性を暗示するほど明確になっている。ι=18°だから圓環はターミネーターで既に出来上がっていると言うべきか。この點、G像では明確だが、この圓環雲は尻尾を保っているかも知れない。尚、Mo氏の場合はアスクラエウス・モンスの頂上が朝霧の中に突き出てきているが(パウォニス・モンスはターミネーター上) 、R 像やG像ではサイクロン像と似ている。RGB像では露出しているところの色彩も似ている。 Mo氏は連続像を作ることを心懸けている優秀な觀測者だが、このときはシーイングが悪化したらしく、後続がない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140501/Mo01May14.jpg
Johan
WARELL (JWr)氏の像はω=179°W。朝方にエリュシウムの雲、夕端にオリュムプス・モンスを分離する雲塊が見える。
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2 May 2014 (λ=125°Ls)
Don BATES (DBt) 氏はω=272°W で一組。赤道帶に沿って霧のバンド、シュルティス・マイヨルはかなり中だが、朝霧に未だ浸っている模様。朝方のいシュルティス・マイヨルは朝霧の影響。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140502/DBt02May14.jpg
Masami
MURAKAMI (Mk)はこの日極雲を追うため、薄明のω=015°Wから、025°W、035°W、045°W、054°W、064°Wと眼視観測で追った。ω=015°Wでは北極冠が白くはっきりしているが、まだ朝雲は小さく、後半白さが出ている程度。アラビアは赤味を示す。ω=025°Wではマレ・アキダリウムの朝方に白い靄が擴がる。明るさは減じたようだが、白さは明白。少々風があるが、シーイングは落ち着いている。18°C。ω=035°Wでは矢張り極雲は白さが目立つが然程明るくない。ω=045°Wでは極雲はだいぶ中に這入り、タナイスの南か。アルギュレが南端通過中。ω=054°Wでは無風状態。タナイスの邊りに極雲はあるが、微細ははっきりしない。ω=064°Wでは極雲は朝方の方に伸びるが、朝方の方が明るい。シーイングが悪化し、細部が見えなくなり、終了とする。極雲は1999年の場合に比べて遙かに弱いという印象を持った。
Masatsugu MINAMI (Mn)はこの日足羽山でω=035°W、054°W、064°W、076°Wと眼視観測を行った。しかし、シーイングが思わしくなく、報告するような詳細は得られなかった。ただ、マレ・アキダリウムが思っていたほど淡くないと感じた。
Mo氏はRGB像を五像並べ、マレ・アキダリウム西北方向の音叉型の極雲をω=050°W、055°W、059°W、065°W、074°Wに亙って追った。ω=055°Wは前日の観測と比較でき、前日と極雲の位置とズレて居るように見えるが、殘念ながらシーイングが未だ悪く、落ち着くのはω=059°W以降である。ω=059°Wの像ではサイクロン型と言うより、南が切れており、音叉型といえ、テムペの後方は面白い。この極雲の南側は地肌が東西に見えていて朝霧が消えているような感じである。ω=074°Wでは、音叉の右側はターミネーターから可成り離れている。この角度ではオリュムプス・モンスが這入って來ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140502/Mo02May14.jpg
Tomio
AKUTSU (Ak)氏がω=055°Wとω=066°Wで組像を撮った。前者はMo氏の前日、と比較できるが、シーイングが悪いようである。後者はMo氏のω=065°Wに対応するが、U字型は見えるが、矢張りシーイングが伴わない。タルシスの描冩も劣る。
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Teruaki
KUMAMORI (Km)氏はω=067°Wで撮った。カラー像もB像も暗色模様部は細かい模様まで可成り好い。問題の極雲は少し暈け気味だが、U字型である。朝方の枝の方が雲は厚い。オリュムピアは未だ見えないが、その先行部にU字の底は接している。B像ではUというよりI I字型と言えるぐらい底も切れかかって見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140502/Km02May14.jpg
Akinori NISHITA (Ns)氏は淺田 正氏のお世話で京大飛騨天文台でω=074°Wとω=093°Wの二組を撮った。前者はMo氏と同じ角度で、極雲はU字型であるが、強調されたB像では、Uの底は切れて見えるほどである。ω=093°Wはこの日最も深い角度であるが、極雲の形は保存されたまま、かなり中まで這入ってきている。朝霧はオリュムプス・モンスの邊りでは濃いが、その南のアルシア台地の邊りは濃い霧から逃れ、アルシア・モンスを含む勾玉風の濃茶色が顕著である。
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Xavier DUPONT (XDp)氏はω=166°Wとω=173°Wで撮像した。夕縁の處理が好くないが、B像はどちらとも好く、タルシス、オリュムプス・モンス系の雲やアルバの雲が夕方をどのように支配しているかよく分かる。エリュシウム系の雲は朝霧のように餘りソリッドではない。プレグラが褐色系でプロポンティスIなどの暗色系と際立って違っている。南ではマレ・シレヌムの西部がみえ、マレ・キムメリウムの東部が可成り這入って來ている。北極冠とオリュムピアは分離しており、北極冠の東側にはU字型極雲が殘っているようであるが、ゴーストが邪魔をする。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140502/XDp02May14.jpg
David TYLER (DTy)氏は ω=175°W、179°W、186°Wのカラー三像を並べる。矢張りタルシス系とオリュムプス・モンスの雲が夕縁近くで目立つが、多分オリュムプス・モンスの東壁を含む縦狭間が濃褐色でタルシス山系の雲とオリュムプス・モンスの東側の雲(か積雪)を隔てている。この濃褐色の筋はω=186°Wでは顕著に見える。オリュムピアと北極冠を隔てるリマ・ボレアリスは極めて濃い。 オリュムピアの遙か前方の夕方には、U字型もしくはI I字型の極雲の残滓が出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140502/DTy02May14.jpg
Manos KARDASIS (MKd)氏はω=178°Wでワンセットを与えた。像が大きくて見易い。北極冠近くではオリュムピアの先行部が一方では北極冠と連なり、他方沈み掛けている極雲とも複雜に繋がっているように見える。依然U字型で言えば、極雲の右側の枝は濃い雲條である。オリュムピアの尻尾も北極冠と繋がっている。Bは少し暈けるが、RとG像は良像である。エリュシウム内部には二本の明るい縦スジが見える。オリュムプス・モンスの東側の雲と無縁の狭間も好く描けていて、付録にはオリュムプス・モンス邊りの投影図が出ている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140502/MKd02May14.jpg
3 May 2014 (λ=125°Ls)
Frank MELILLO (FMl)氏はω=269°Wで、そこそこの模様を描いている。シュルティス・マイヨルはは浅葱色が解けたところか。この像の問題点はB光像がリアルでないということである。正しいBフィルターを使えば、雲や霧は白く冩るが、地は真っ暗なはずである。元のカラー像から分解・抽出したものであれば、こういうことが起こるだろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140503/FMl03May14.jpg
Mkは眼視でω=016°Wとω=026°Wと観測したが、その後曇る。ω=016°Wではイアクサルテス朝方に雲を感じるが、次の観測では判らなくなる。
Sadegh GHOMIZADEH (SGh)氏はω=151°Wのカラー單像。オリュムプス・モンスの邊りのもう少し情報量のある像を得るように願う。極雲のあたりも締まりがない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140503/SGh03May14.jpg
Christophe
PELLIER (CPl)氏はω=163°W、172°W、181°W、191°W、201°W と追跡した。極雲はω=163°Wでは前日の面影はあるが、やや淡いか。ω=172°WではU字の底の雲は濃いが、U字の上部は淡き霧状で、次の二葉も似ている。オリュムピアの締まりの程度から言えば、ω=181°W の極雲が暗示的である。Gで見るとω=163°W、172°W、181°Wが資料としては上等である。他方、オリュムプス・モンスの邊りの様子はω=172°W像が好く、後は狭間の濃褐色はω=181°Wも面白い。R像(ω=162°W) やG像(ω=163°W)もこの邊りは面白い描冩である。エリュシウムの方では、矢張り内部の二本の明るい筋の成因が探求されるべきであろう。なお、それぞれのセットはIR685による赤外像も含んでいて、極雲や朝霧などは冩らないが、エリュシウムの内部の詳細が読める。プロポンティスIもIRでは奇妙な形を露呈する。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140503/CPl03May14.jpg
Leo AERTS (LAt)氏はω=175°Wのカラー單像である。北極冠も明るくなく、極雲の面影が北極冠の東に見えない。オリュムプス・モンスの火口を巡る雲の描冩など優れているが、狭間の色合い、更には朝方のプレグラの色合いに違和感が感じられる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140503/LAt03May14.jpg
Richard BOSMAN (RBs)氏のRGB圖はω=176°W でオリュムピアの先行部を可成り詳細に傳えている。これを見ると極雲のI I部はそれぞれ根っこをオリュムピアの先行部の氷塊に持っている様にみえる。RBs氏は北極中心の展開図も作っている。なお、このRGB像は優秀で、オリュムプス・モンスの周りの様子を納得行く形で示している。アスクラエウス雲の残滓からは西北方向に鋭い明條が出ている。朝方のエリュシウムでは朝霧がどのようにエリュシウムに懸かっているかを示している。プロポンティスIとプレグラの間の描冩も興味深い。マレ・シレヌムとマレ・キムメリウムの間の繋がりが好く見える。尚、B光での像も集められている(ω=152°W~178°W)。
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John
SUSSENBACH (JSb)氏もω=177°Wでカラー單像を得ているが、前者と口徑差が出ているようで、オリュムピアも弱く、先行部も朦朧としていて、白霧にしかみえない。 エリュシウムに懸かる朝霧はRBs氏像とおなじである。オリュムプス・モンスの西壁の白い部分(雲でないかも知れない)が線分に見えることはRBs氏像と比べて考察する必要がある。
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4 May 2014 (λ=125°Ls~126°Ls)
DBt氏がω=256°Wで撮ったが、RとG のバランスが悪く、RGBでは緑色が強く不自然である。Bではエリュシウム発の白霧が朝方のシュルティス・マイヨルまで届いている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140504/DBt04May14.jpg
EMr氏がω=285°Wで良像を撮っている。1 Mayの像の改良版の如し。オリュムピアが夕端で、極雲は反対側に沈んでいる。ウトピアは淡いが白雲の擾亂などは見られない。エリュシウムは夕端で白く、少しシュルティス・マイヨルの方に白霧が出ている。シュルティス・マイヨルは堂々とし、ヘッラスは真っ白ではみ出すところもあれば、少し白の輝きの鈍いところもある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140504/EMr04May14.jpg
Mkがω=358°W、007°Wで眼視観測を行った。前者ではマレ・アキダリウム全體が這入って來ているはずだが、北極方面ではまだターミネーターサイドの明るさと區別がつかない。後者ではイアクサルテス西でやや明るく白味がある。空は雲が擴がり、シーイング劣化、観測終了とする。
Ak氏がω=010°W、035°W、046°Wとマレ・アキダリウムの西北方向の極雲を追った。いずれにも朝雲の塊のように出ているが、シーイングの所爲か内部構造はわからない。ω=046°Wでは真ん中に眼があるようにも見える。
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Tsutomu ISHIBASHI (Is)氏はヴィデオ像から、ω=019°W、028°W、(030°W)の像を落としたが、いずれにも朝方の極雲は冩っている。但し内部構造までは判らない。
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MKd氏はω=151°Wで一組撮った。北極部夕方に極雲の残滓が見えている。U字型であった可能性がある。北極冠からオリュムピアの先行部(イエルネのように纏まって見える)に雲の橋渡しがある。尚、オリュムプス・モンスの邊りはカルデラや西壁の雲か雪、周りの濃褐色部など纏まっている。アスクラエウス・モンス寄りのアスクラエウス雲からは(前にも見られたように)西北方向に明るい條が走っている。
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DTy氏がω=167°W、173°Wでのカラー像を並べている。前者ではU字型の残滓が見えるが、後者では右辺が弱くなっている。
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Martin LEWIS (MLw)氏がω=169°Wでカラー單像。オリュムピアの先行部は幾つかの氷片に分裂して見え(45cmドブソン)、極雲の残滓もその一部に連なっているか。オリュムプス・モンスの山頂は暗點で見え、西壁の雲は線分状。プロポンティス I のあたりは詳しい。マレ・シレヌムの形もはっきり見える。カラリス・フォンスも見えるかも知れない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140504/MLw04May14.jpg
Josep SOLDEVILLA (JSv)氏はω=182°Wでのカラー單像だが、白が冴えない。マレ・キムメリウムの北側縁の微細(蟻ンコの脚など)が出ているし、エリュシウム内の明るい筋二本など見えるが、全體としては何か物足りない描冩になっている。余裕がない感じ。
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5 May 2014 (λ=126°Ls)
EMr氏がω=226°Wで一組撮った。白霧の夕方での擴がりとエリュシウムから朝方のシュルティス・マイヨルに向けての擴がりが上手く描冩されている。昼過ぎのエリュシウム邊りの霧はエリュシウム・モンスの小さな白雲から南に擴がったように見える。オリュムプス・モンスは夕端に來ていて真っ白である。ウトピアも全體うまく描冩されているが、擾亂は無い模様。オリュムピアは南中で、白く尻尾が北極冠と繋がっている感じ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140505/EMr05May14.jpg
Carlos HERNANDEZ (CHr)氏独特のカラースケッチで、ω=254°W。シュルティス・マイヨルが朝方に顕れていて、朝霧に大部が覆われているが、青色は出ていない。ノドゥス・アルキュオニウスは綺麗に見ている。午後のエリュシウムは古典的で、内部は明るい。オリュムピアの見え方は拙いと思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140505/CHr05May14.jpg
Bill FLANAGAN (WFl)氏のω=254°W、261°Wの二組は素晴らしい。オリュムピアの後続部の描写がこれまでレヴューした像にはない詳しさで、この構造は二組ともに見られるから、ゴーストなどではない事は確かである。(マレ・アキダリウム西北方の極雲が裏側なのは殘念である。) エリュシウムは夕方であるが、エリュシウム・モンスの頂点の小さな白雲は特にω=254°Wでクッキリしている。ω=261°Wでは少し雲が擴がった様子。アエテリアの暗斑の描冩も好く、その東側のピンク色の明帯も明白である。マレ・キムメリウムは半分沈んでいるが、蟻ンコの眼のハーシェル・クレーターは明確で、ゲール・クレーターとクノーベル・クレーターを内包する蟻ンコの脚も綺麗に出ている。ヘスペリアを横切る数本の運河も見事に描かれている。ウトピアは淡く平静であるが、ω=261°Wではオリュムピアの遙か後方に白い筋が出ている。ウトピアの南端頂点のフラクタルな様子も明確である。アエリアの朝霧はB光で穏やかに描かれる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140505/WFl05May14.jpg
LAt氏がω=134°W でカラー單像。極雲の残滓と思われる雲の拡がりが北極部夕端に見られるが形状がどうなっているかはよく分からない。オリュムピアの先行部もよく分からない。なお、オリュムプス・モンスは甚だ明確である。アスクラエウス雲から西北方向への明線も好く見えるし、アルバ附近の様子も好く傳えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140505/LAt05May14.jpg
6 May 2014 (λ=126°Ls~127°Ls)
Peter GORCZYNSKI (PGc)氏がω=230°W で一組。RGBは色が冴えないが良像である。シュルティス・マイヨルが昇ったところ。マレ・キムメリウムも平均的な様子。午後のエリュシウムは内部が弱くミスティでエリュシウム・モンスにやや集中。その邊りは二本の明るい筋状になっており(右側一本はアエテリア暗斑東側の例のピンクの縦筋)その構造はω=240°WのIR742画像に好く分解されて見えている。オリュムピアは南中を過ぎたところだが、尻尾が北極冠と連絡する様子は、前日のEMr氏のω=226°Wとよく似ているが、WFl氏の画像の複雑さを暗示しない、のは少し不思議。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/PGc06May14.jpg
FMl氏はω=236°Wのカラー單像。シュルティス・マイヨルは朝縁近くで朝霧の下で蒼い。エリュシウム内部は明るいが詳細はない。 南端は白くなってきたか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/FMl06May14.jpg
EMr氏がω=240°Wでワンセット。PGc氏より柔らかい描冩で白霧の分布は好く出ている。オリュムピア附近は少し暈け気味。なお、南端はアウソニアの赤味地肌で白くはない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/EMr06May14.jpg
Jay
ALBERT (JAl)氏がω=245°Wでスケッチ。シュルティス・マイヨルが朝方に見える。北極冠はディスクの中に這入っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/JAl06May14.jpg
WFl氏のω=245°W、252°Wでの画像が二セット。LRGBではオリュムピアの邊りは可成り複雜で、前日の描冩を彷彿とさせ興味深い。これはGで綺麗に出ている。南端はBの所爲でやや白く見える。エリュシウム・モンス邊りの雲あるいは氷の配置の微細が読み取れる。しかし、ω=245°W画像ではマレ・キムメリウムの邊りは過剰處理のようにも見える。尚、ケルベルスの邊りの描冩も前日とおなじだが、微細が出ていると思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/WFl06May14.jpg
Ak氏がω=348°W (19:33JST)、017°W、022°W、036°W、044°Wで撮った。シーイングは優れないが、ω=017°Wで極雲はイアクサルテスの西側に接するバルティアぐらいの位置にあり、可成り濃い。ω=036°W、044°Wでは極雲は東西に延びて、その北側は少し地が出ており、極雲は今までと少し違った蘇生の形を取ったようである。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/Ak06May14.jpg
Mo氏はω=356°W、009°W、054°Wと撮っているが、最後の二像は三時間の差があり、跳びすぎ。空に雲が出たのかも知れない。シーイングも更に悪化したようだ。但しω=054°WはMo氏自身の1 Mayでのサイクロン像の角度と対応するので價値がある。ω=009°Wではイアクサルテス西の極雲の他にテムペ西方の朝霧も濃い。後者はω=054°Wではターミネータ附近に留まっている模様。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/Mo06May14.jpg
Reiichi
KONNAÏ (Kn) 氏はω=010°W、020°Wでカラースケッチを行った。イアクサルテス西のバルティアの極雲を眼視で捉えている。テムペ側の縁霧も見えている。ω=010°Wではエデンは赤っぽい。ω=020°Wでは極雲は少し細長くなった。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/Kn06May14.jpg
Km氏がω=038°W で撮像。極雲の形が上手く捉えられた。極雲はバルティアの他、ヒュペルボレウス・ラクスの西に流れていて、雲は二條になって居る様に見える。像としては、この後のオリュムピアが濃くなる頃の画像も欲しいところ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140506/Km06May14.jpg
7 May 2014 (λ=127°Ls)
DWr氏がω=329°Wでワンセット。極雲はイアクサルテスの西、バルティアに濃く出ている。未だターミネータに接している。このほかマレ・アキダリウムの南部が朝霧に侵されている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140507/DWr07May14.jpg
Mark JUSTICE (MJs)氏がω=337°W、355°W、006°W、017°W、031°Wで組畫像を撮った。ω=337°Wでは未だ極雲は明るくない。ω=355°Wでは新しい様子を見せ、バルティアよりもマレ・アキダリウムの西北部を侵しているように見える。ω=006°W、017°Wではマレ・アキダリウム西北部の白雲に続いて矢張り濃い朝雲が不連続に続いている様子で、最後のω=031°Wの良像(北極冠の描冩好し)では極雲は上手くフィックスされていると思う。しかし、この後の画像が欲しいところ。テムペ西の朝霧は消える傾向。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140507/MJs07May14.jpg
Is氏がω=353°W、002°W、012°Wで刻んだ。ω=002°Wで極雲はマレ・アキダリウムの一部を侵していることを見せている。最後の像ではそれが濃い朝雲を伴っていることを示している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140507/Is07May14.jpg
Mkは眼視でω=358°W、007°W、017°Wで観測した。ω=358°Wでは4Mayの同じ角度より、マレ・アキダリウムの北西がやや明るく感じられるが未だ集中はない。ω=007°Wではマレ・アキダリウムの西北端の朝靄が青味を感じさせて可成り這入って見える。ω=017°Wではマレ・アキダリウム西北端の極雲は北側に明るさを見せる。火星は視野内で横倒し。終了。
Ak氏が 宇都宮大学の40cmでω=006°W、017°W、032°Wで撮った。ω=017°Wの邊りがシーイングは良かったかと思える。このような朝方に現象が再現される場合、連日同じ角度から撮像するのが望ましい譯であるが、Ak氏の場合前日のω=017°Wと一致する角度を得たのは幸いであった。が、もう一ヶ所ぐらいは欲しいところ。ω=017°Wを比較すると、微妙な違いのあることが判る。ω=044°Wの対応画像があれば更に好かったと思う。なお、Ak氏の7Mayでの角度はMJs氏と偶然重複するので、Ak氏には参考になろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140507/Ak07May14.jpg
Km氏はω=007°Wの一点もの。前日は14hGMTであったが、この日は12.5hGMTで理由が分からない。前日のω=038°Wは良像で、極雲の形を捉えたので、是非7Mayでも狙って欲しいところであった。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140507/Km07May14.jpg
Mo氏も浅いω=014°Wの組写真のみ。空の状態が悪いのであろうが、前号のLtEに依れば忙しさもあるのかも知れない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140507/Mo07May14.jpg
Bratislav CURCIC (BCr)氏はω=028°Wで組畫像。北極冠も可成り再現されているし、B画像も好いから本日のω=028°Wでの極雲の様子はこれで決まりで、MJs氏のω=031°W像を補佐するであろうし、1 MayのDWr氏のω=028°Wのサイクロン圖とばっちり比較が出來る。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140507/BCr07May14.jpg
JWr氏の画像はω=135°W の組像。オリュムプス・モンスが南中だが、不明。北極部の雲も対応するものがあるかも不明。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140507/JWr07May14.jpg
8 May 2014 (λ=127°Ls~128°Ls)
BCr氏がω=001°Wで撮像。矢張りマレ・アキダリウムの西北端部を侵して湾曲した雲帶が出ているが、前後關係はどうか。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140508/BCr08May14.jpg
Mo氏はω=024°Wでの撮像。前日のBCr氏のω=028°Wで見られたマレ・アキダリウム上の濃い雲帶は見られないので、単なる朝霧に戻った可能性もある。但し、B上に淡い雲帶が殘っているので、弱いながら未だ存在するかも知れない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140508/Mo08May14.jpg
MKd氏がω=082°Wのカラー單像。タナイスの西北方に一寸した雲の塊。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140508/MKd08May14.jpg
SGh氏はω=085°Wでのカラー像とB像: MKd氏の場合と同じような處に淡い雲塊。朝霧の處も像が甘い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140508/SGh08May14.jpg
9 May 2014 (λ=128°Ls)
MKd氏がω=116°Wでの一組。イアクサルテスの西に極雲があり、右上が開いたLandoltランドルトのC型と見られないことはない。その位置は30Aprilに見られたものに似ていようか。R像で見ると、這い上がってくるオリュムピアの先行部に幾つかの氷片があり、極雲もこれに連なっているような感じ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140509/MKd09May14.jpg
10 May 2014 (λ=128°Ls~129°Ls)
Maurice VALIMBERTI (MVl)氏の久しぶりの出番で、ω=313°W、317°W、326°W、337°Wの連続組画像。最初の畫像はオリュムピアが東に沈むところで、極雲は向こう側。像は平均以上で、オリュムピアの尻尾の邊りの様子はWFl氏の5May, 6Mayに記録したものが概略出ているほか、シュルティス・マイヨル内部のクレーターなどが見えている。ウトピアも淡い感じが出ている。 ω=326°Wでは朝方にマレ・アキダリウムがあらわれ、明白にマレ・アキダリウムの北部を侵す朝雲が内部に這入って來ている。ω=337°Wでは少し中に這入って雲塊らしく見えるし、さらにその北西のターミネーターには雲が出てきている様子。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140510/MVl10May14.jpg
Stefan BUDA (SBd)氏もω=318°W、324°W、341°Wで三組作っている。ω=341°W像がMVl氏を越えているが、まだ極雲かどうか、西端がターミネータを離れていないので判らない。この雲に沿う東側にはマレ・アキダリウムの地が少し濃化して見えている。西の縁雲は未だ正体を露わさない。SBd氏の像はどれも秀逸で、ω=318°Wなどはシヌス・サバエウスやシュルティス・マイヨルも詳しく、北極冠、オリュムピアがやや詳しい。また、ω=341°W像には先の19Aprilで議論した微細な「オクスス暗斑線分」(Oxus dark segment)が見えている。もう一つ、ヘッラスの描冩が好く、輪郭の内外には注目する必要がある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140510/SBd10May14.jpg
BCr氏はω=321°Wでワンセット。好い影像だが、マレ・アキダリウムが盤内に這入って來たところで、GとBでその西北部に雲が顔を出しているだけ。朝霧とは違う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140510/BCr10May14.jpg
Km氏はω=331°Wとω=011°Wだが、シーイングが少し悪く、前者では、朝雲は未だ充分に這入って來ていない。後者ω=011°Wでは極雲は「眼」を暗示しているかも知れない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140510/Km10May14.jpg
Mnは福井市自然史博物館天文台でNs氏と交代で(眼視)観測をω=338°W, 348°W、358°W、007°W、017°Wで行った。ω=338°Wではマレ・アキダリウム西北部の極雲がターミネーターまで見えている。但し濃いヒュペルボレウス・ラクスとの微妙な関係は判らない。ω=348°Wでは更に中に這入ってマレ・アキダリウム上で安定。アラビアが赤っぽい。ω=358°Wではターミネータ上に雲が相當濃く明るい。シュルティス・マイヨルが夕縁に近い。ω=007°Wではシーイングがmoderateでバルティア邊りで極雲は顕著。ω=017°Wでは極雲は二重になり外側がより明るい感じ。
Ns氏は同じく福井市自然史博物館天文台でのccd観測でω=349°W、002°W、012°Wと追求。最初の像では極雲はBCr氏、Km氏の場合より少し中に這入り、マレ・アキダリウムの西北端を濃く遺しているが、その東、ターミネーターに接して濃い縁雲が見える。ω=002°W ではその縁雲が太く濃く顕れ、テムペ東にも及んでいる。ω=012°Wではマレ・アキダリウム上の雲は淡化してきて、極雲はタナイスを横切る先の縁雲がそれらしいと暗示している。雲の中に眼らしいものがあるが、雲は北に開いているように見える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140510/Ns10May14.jpg
MKd氏の観測はω=106°Wでワンセット。少し暈けた像だが、オリュムピアの先行部の分解が判る程度に好く、その先、夕方にNs氏の最後の像に捉えられた逆U型(∩) の雲が殘っているように思う(B像)。MKd氏のこの像は暈けながらも、幾つか良い点があり、朝方のオリュムプス・モンス周辺はRとG(およびB)で 極めて明確。アルシア台地も濃褐色で勾玉型、その南からソリス・ラクスの北側に雲の帶、等を描写している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140510/MKd10May14.jpg
11 May 2014 (λ=129°Ls)
Kn氏がω=300°Wと330°Wでカラースケッチを行っている。ω=300°Wでは朝霧は出ているが、未だマレ・アキダリウムは出ていないようだ。ヘッラスの縁はリアルな感じである。オリュムピアは北極冠東側に立っている。ω=330°Wではマレ・アキダリウムの大半が朝雲に隠れているようだが、朝雲は二條の筋雲でターミネーター近くを這っている。北極冠の微細構造が少し窺え、オリュムピアも健在。これから極雲の登場劇が始まるところ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/Kn11May14.jpg
John KAZANAS (JKz)氏はω=310°W単一の観測。殘念ながら、マレ・アキダリウムは未だ殆ど出ていないが、出ているマレ・アキダリウム上に既に雲が二本の帯状になって、Kn氏の画像と同じく複雑な様相を暗示している。この像は大変好く、ホイヘンスやオリュムピアの後続部を可成り詳しく描写している。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/JKz11May14.jpg
SBd氏がω=312°Wの像。同じく、マレ・アキダリウム上の朝雲が霧状で少し見える程度だが、像は良質で、霧状雲の東側の色が明確(濃褐色)さが注目される。シュルティス・マイヨルやヘッラスの描冩も好い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/SBd11May14.jpg
Is氏がω=317°W、327°W、336°Wで撮像。Is氏の観測の中では最優秀に属する。最初の像ではオリュムピアがやや詳しいし、マレ・アキダリウム北部の霧状と地の対比が好い。最後の像では縁雲が濃くなっている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/Is11May14.jpg
BCr氏(28cm SCT)のこの日の追求は以下のMJs氏の活動とと共に素晴らしい: ω=329°Wから始まり、332°W、337°W、346°W、349°Wで R, G, B, RGB像を拵えた。最初に見えていた朝のマレ・アキダリウム上の霧状雲は矢張り次第に薄くなったが、それに續く雲筋がω=332°W頃から発達して後続の地面を巻き込んで目玉を作るようになり、更に ターミネータ沿いに顕れた雲はω=337°Wでは北部に別の目玉を見せるようになり、ω=346°W、349°Wでは目玉がクッキリし、目玉二つで8字型または逆S字型に際立った形を呈している。なお、こうした渦巻き現象と目玉は、R, G, B各像で面白い様相を呈している。二つ目玉の内、より明確な目玉の位置はマレ・アキダリウムの西北端ではないかと思われる。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/BCr11May14.jpg
MJs氏(30cmニュートン)は更に観測を加えた。ω=329°W、338°W、351°W、001°Wの観測である。出発はBCr氏と同じだが、ω=351°W、001°Wが新しい。ω=338°Wでは第一の目玉は朧だが、第二の目玉は実に明確である。BCr氏のω=337°Wに相当するが、處理の違いが出ている。ω=351°W、001°Wでは更に中に這入って、サイクロン状である。尻尾を南側に持っているのが新しいが、ω=001°Wではスパイラルがヒュペルボレウス・ラクスの西側に延びている。G像がどれも印象深い。これらの像は今期の最大の収穫の一端であろう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/MJs11May14.jpg
Km氏はω=330°Wの観測である。マレ・アキダリウムは可成り出ているが、二本の朝雲の條のその後の状況は未だ暗示されない範囲。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/Km11May14.jpg
Ak氏はω=336°W、346°Wの観測。前者では、第一の目玉が朧に見え、後者でも第二の眼が暗示されるが、シーイングが悪化したようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/Ak11May14.jpg
SGh氏がω=069°Wでカラー單像を出した。非常に重要な局面であるが、殘念ながら北極冠の白さも出ない状態で、問題の處には雲の痕跡も見当たらない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140511/SGh11May14.jpg
12 May 2014 (λ=129°Ls~130°Ls)
PGc氏がω=185°Wでワンセット。色が冴えないし、模様も締まりがない。エリュシウムの朝霧は以前の如し。模様はIR742で保っている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140512/PGc12May14.jpg
MJs氏がこの日も頑張って、ω=288°W、298°W、308°W、319°W、328°W、337°Wと10°W毎に6組を作った。ω=328°Wでは前日に見られた「眼」が見えている。マレ・アキダリウム上には霧の抜けた筋が二本ほど奔っている。ω=337°Wでは眼が更に入って、直ぐ西に複眼が見えている。G像でこの邊りの雲分布は綺麗に見えている。像としてはマレ・アキダリウムが出てくる前のω=288°Wが相當宜しい。その後一旦シーイングが悪化したようだ。なお、MJs氏像の美点は11May像とほぼ同じ角度で撮っており、比較できることで、この場合ω=328°Wと337°Wが、前日のω=329°Wと338°Wとに対応する。當然違いがよく分かる。
11MayにはBCr氏のω=337°W もある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140512/MJs12May14.jpg
SBd氏はω=297°Wのみである。そこそこの像。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140512/SBd12May14.jpg
JKz氏が前日と同じω=312°Wで撮像。問題の箇所が出掛かっているが、追求はない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140512/JKz12May14.jpg
MKd氏がω=043°Wでカラー單像。非常に重要な角度だが、像がぼやけている。マレ・アキダリウムの西北端は濃く出ている様子。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140512/MKd12May14.jpg
SGh氏はω=052°Wで當然重要な瞬間だが、像の先鋭化が無く、Gも無いから駄目。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140512/SGh12May14.jpg
13 May 2014 (λ=130°Ls)
DWr氏がω=285°Wでワンセット。マレ・アキダリウムが極雲を暗示しながらターミネータ附近にあるが、追求なし。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140513/DWr13May14.jpg
MJs氏も追求は諦めたか、ω=302°Wのワンセットのみ。明らかに極雲がターミネーター上に出掛かっていて眼が見えている(G, Bに明白)。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140513/MJs13May14.jpg
MVl氏もω=302°Wのワンセットのみ。以下同文。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140513/MVl13May14.jpg
Km氏がω=303°Wのカラー像(とB像)。極雲の先端がターミネータ上。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140513/Km13May14.jpg
Mo氏がω=314°W、324°W、334°Wで40分ごと三組。既にω=314°Wで、眼を持った極雲が出てきている。MJs氏の12Mayのω=319°Wの場合と似ているか。Mo氏のω=324°Wでは全體明確で、但し眼がマレ・アキダリウムの北にあるように見える。案外イアクサルテスの部位か。ω=334°Wでは少しシーイングが劣化したが、Gで好く見えている。今後、位置を特定する必要あり。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140513/Mo13May14.jpg
MKd氏がω=049°Wで一組。既にイアクサルテスの邊りの雲は逸散したか。殘りの雲がマレ・アキダリウムの西北端の西にボンヤリと殘っている。G, Bで好く確認出來、その西はターミネーター近くで霽れて濃褐色に見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140513/MKd13May14.jpg
14 May 2014 (λ=130°Ls~131°Ls)
PGc氏のワンセットはω=161°Wで、色は冴えないが、午後のアスクラエウス雲は明るく、オリュムプス・モンス邊りも明確。アルバ雲は三角形に見え、Rではその南が複雑で面白そう。RではプロポンティスIは三角型で明確。同じくRでオリュムピアの先行部の氷片群は分解・分離している(但しIR像では暈ける)。東端に極雲の名残があるかどうか、よく分からないが、雲は散らばっている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140514/PGc14May14.jpg
XDp氏はω=050°Wでワンセット。V像やB像で見ると、テムペ近くの從來から見られる濃斑點が雲の眼の様に見えるが、本体は朝方ターミネーター近くの眼を囲む雲であろう。追求が必要。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140514/XDp14May14.jpg
JSv氏はω=059°Wのカラー單像。然しRRGBで、白雲の描冩には不都合。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140514/JSv14May14.jpg
CPl氏がω=060°W、067°W、074°W、082°W、089°W、096°Wの六像セットを二時間半ぐらい掛けて撮っている。ω=060°Wでターミネーター近くに眼を持った∩型の極雲らしいものが見えているが、マレ・アキダリウム内部の西北部に小型のc字型の雲が出ており、これは正午近くだから残存型である。これらはB像に明白に出ている。ω=067°Wでも先行の小さな雲のリングはマレ・アキダリウム上に見えており、Bでも確認出來る。実はこのマレ・アキダリウム上の先行の小さな雲の輪っかは最後のω=096°Wまで立派に位置を変えずに残存し、G, Bで明白である(但し、XDp氏像では不明確)。なお、紛らわしいがもともとテムペの北部に暗斑があり、これが眼のように見える画像もあるが、雲の動きは明確ではない。一方、∩型の極雲らしいものは活發ではないが、矢張り最後まで残存し、その西の朝雲の部分はω=074°W以降大きく発達している。これはアルバと関係するかも知れない。ω=082°W以降の畫像では、オリュムピアが顔を出し、先行する氷片が分解して見えるが、極雲との関係は掴めない。但しω=089°Wでは少し、関係を示すかも知れない。尚、CPl氏像ではω=082°W以降アルシア台地が朝から晴れて濃褐色の勾玉型が好く見える氣象となっている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140514/CPl14May14.jpg
DTy氏はω=069°Wのカラー單像。ヒュペルボレウス・ラクスやオリュムピア先行の氷片等は出ているが、マレ・アキダリウム上の圓形雲など鮮明ではない。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140514/DTy14May14.jpg
MLw氏のカラー單像はω=085°Wで与えられている。マレ・アキダリウム西北部の半円形の雲は明確。後続の弱い∩型の極雲らしいものは(左辺の雲が濃い様子で)見えていて、オリュムピアの先行部に存在する二つばかりの氷片と何らかの関係があるように見える。アルシア台地は非常に濃く顕れている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140514/MLw14May14.jpg
15 May 2014 (λ=131°Ls)
EMr氏はω=140°Wでワンセット。オリュムピアの先行部が明確には顕れないようなシーイングだが、その南には雲の残滓があるようだ。アルバは明白。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140515/EMr15May14.jpg
CPl氏がω=051°W、061°W、070°W、080°W、089°Wと刻む。この日のω=061°W像と前日のCPl氏のω=060°W像をくらべると、前日のマレ・アキダリウム西北部上の小さなc字型雲はこの日は消えていることが判る。但し、その後方の雲に挟まれた褐色地は同じように見えている。これはω=089°Wまで確認されるが、これが極雲であるかどうかははっきりしない。オリュムピアは出ていないが、先行する氷片は見えており、この雲との連関は暗示される。四月に比べて、この邊りの雲の動きは活發である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140515/CPl15May14.jpg
DTy氏はω=058°W、061°W、068°Wのカラー像を並べた。いずれにもオリュムピアの先行部は氷片に分かれ、その南側には雲がタナイス邊りに存在し、褐色の分け目を挾んで濃い雲が擴がっている。イアクサルテスの西にも薄雲はある。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140515/DTy15May14.jpg
MLw氏のカラー單画像はω=065°Wで、オリュムピアの先行部の氷片とその南の雲、褐色部、更に朝雲は好く描冩されている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140515/MLw15May14.jpg
JWr氏のワンセットはω=066°W。マレ・アキダリウムの西北方向に雲、褐色部、更に雲の三点セットは好く出ている。全體、少し像が流れるが、なかなかの像。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140515/JWr15May14.jpg
JSv氏のカラー單像はω=067°Wでタナイスの雲と後続の褐色部は見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140515/JSv15May14.jpg