2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#09

2014年四月後半の火星観測 (λ=117°Ls~124°Ls)

CMO #423 (25 June 2014)

村上 昌己・南 政


 

・・・・・・火星は四月後半(16_April~30_April 2014)には14日の最接近を終えて「おとめ座」で逆行を続けていた。四月には視直径δ14"を下回ることはなく月末でδ=14.5"となった。火星の季節はλ=117°Lsから124°Lsとすすみ、引き続き北半球の夏の観測であった。位相角ι16日にι=06°であったが月末には18°になって、朝方の欠けがやや目立ってきた。中央緯度はφ=22°Nから24°Nと北向きに傾いて融解の進んだ北極域が此方を向いていた。月末にはマレ・アキダリウムの朝方に発生が期待されていた濃い朝霧が馬蹄形に捉えられて、翌月の活動に続いていった。

 

・・・・・・この期間には以下のように、34名の報告者から143件の報告を拝受した。国内から533観測、アメリカ大陸側から738観測、ヨーロッパから1553観測、オーストラリアから617観測、中近東から12観測であった。二月末からの追加報告もあり、18観測が寄せられている

 

    レオ・アールツ (LAt) ベルギー

   1 Colour Image (16 April 2014)  36cm SCT with a DMK21AU618

    ジェイ・アルベルト (JAl)  フロリダ、アメリカ合衆国

       1 Drawing (24 April 2014)  310×28cm SCT

    デーヴィッド・アーディッチ (DAr)  ミドルサセックス、英

       2 Colour Images (17, 18 April 2014)  36cm SCT with a Flea 3 

    ドン・ベーツ (DBt) テキサス、アメリカ合衆国

       4 Sets of RGB Images (16, 19, 20, 25 April 2014)  25cm Spec with an ASI 120MM

    リシャルト・ボズマン (RBs) オランダ

       1 Set of RGB + 1 Colour Images (16, 23 April 2014)  36cm SCT with a Basler Ace

    スティーファン・ブダ (SBd)  メルボルン、オーストラリア

       1 Set of RGB Images (30 April 2014) 40cm Dall-Kirkham with a DMK21AU04

    ブラシスラヴ・チュルチック (BCr)  メルボルン、オーストラリア

       3 Sets of RGB Images (27, 30 April 2014)  28cm SCT with a QHY5L-II

    グザヴィエ・デュポン (XDp) サン・ロック、フランス

       1 Sets of RGB Images (19 April 2014) 18cm Spec with an i-NOVA PLA C+

    ビル・フラナガン (WFl) テキサス、アメリカ合衆国

       1 Set of RGB Images (29 April 2014) 36cm SCT @f/27 with a Flea 3 ICX618

サデグ・ゴミザデ (SGh) .ルーデヘン、イラン

       2 Colour Images (17, 25 April 2014) 36cm SCT with a DMK21AU04.AS

    ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国

       7 Sets of RGB + 7 IR Images (17, 21, 22, 25, 28 April 2014) 36cm SCT with an ASI 120MM

    石橋 力  (Is)  相模原市、神奈川県

       8 Colour Images (23, 24, 26 April 2014) 31cm Spec with a SONY HC9 VideoCam

    マーク・ジャスティス (MJs)  メルボルン、オーストラリア

      10 Sets of RGB Images (24, 27, 30 April 2014) 30cm Spec with a DMK21AU618

    マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ

       2 Colour + 1 IR Images (24, 30 April 2014) 28cm SCT with a DMK21AU618

    近内 令一 (Kn) 石川町、福島県

       9 Colour Drawings (22,~24, 26, 27 April 2014) 600×, 500×30cm SCT

    熊森 照明 (Km)  堺市、大阪府

       4 LRGB + 4 B Images (18, 23, 24, 30 April 2014)  

28cm SCT @ f/45 with an ASI 120MC & Basler Ace acA1300-30gm

    ピート・ローレンス (PLw) ウエストサセックス、英国

       1 Colour Image  (22 April 2014) 36cm SCT with a Flea 3

    マーチン・ルヰス (MLw) ハートフォードシャー、英国

       2 Colour Images (28*, 30 April 2014) 45cm Spec, 25cm Spec* with an ASI 120MC

    フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

      15 Colour Images (17, 20, 22 April 2014)   25cm SCT with a ToUcam Pro II

    南 政 (Mn)  坂井市、福井県

       5 Drawings (25 April 2014)  400×20cm ED refractor  福井市自然史博物館天文台

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

       6 Sets of RGB Images (17, 19, 21, 23, 25, 29 April 2014)  31cm SCT with a Flea 3

    森田 行雄 (Mo)  廿日市市、広島県

       7 Sets of RGB + 7 LRGB Colour + 7 L Images  (22, ~24, 26 April 2014)  36cm SCT with a Flea 3

    デミアン・ピーチ (DPc)  バルバドス (ウエストサセックス、英国)    

      10 Colour + 4 B Images (16, ~22 April 2014)        (36cm SCT)

    クリストフ・ペリエ (CPl)  ナント、フランス

       2 Sets of RGB + 1 IR Images (16/17 April 2014)   25cm Spec with a PLA-Mx

    クリス・スメト (KSm) ベルギー

       1 Drawing (22 April 2014) 220×30cm Spec  

    ジュゼップ・ソルデビジャ (JSv) バルセロナ・スペイン 

       1 Colour Image (17 April 2014) 36cm SCT with a QHY5L-II

    ジョン・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ   

       1 Set of RGB + 1 Colour Images (19, 22 April 2014) 28cm SCT @f/20, 25 with a QHY5L-II

    デーヴ・タイラー  (DTy) バッギンガムシャー、英国

     11 Colour Images (16, 18, 19, 26, 29, 30 April 2014)  36cm SCT with a  Flea 3

    モーリス・ヴァリンバーティ(MVl) メルボルン、オーストラリア

       1 Set of RGB Images (30 April 2014)  36cm SCT @f/24 with an ASI 120MM

    ヨハン・ヴァレッル (JWr) スウェーデン

       5 Sets of RGB Images + 1 Drawing (19, 27, 29, 30 April 2014) 308×20cm Spec, and with a DBK21AU618

    デーヴィッド・ウェルドレイク (DWr) ニューサウスウエールズ、オーストラリア

       1 Set of LRGB Images  (17 April 2014)  13cm refractor @f/70 with an ASI 130MM

    フレッディ・ウイッレムズ (FWl) フロリダ、アメリカ合衆国

       4 Sets of RGB + 4 IR Images (22, ~24 April 2014)  36cm SCT with a DMK21AU618.AS

 

 

・・・・・・ 前回に引き続き、 四月後半(16 April~30 April)の観測を時刻順序に整理し、短評を加える。観測者の名前は略号コードで示すが、初出の場合はフルネームを入れる。詳しくは上の名簿を参照されたい。

 

16 April (λ=117°Ls)

   ドン・ベーツ (DBt)氏のω=053°Wのセット。R像には割と冩っているが、RGB像はまるで駄目。GBにはタルシス斑點が出掛かっているので、シーイングが足りないか。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140416/DBt16Apr14.jpg

 

 デミアン・ピーチ(DPc)はバルバドスでω=062°Wのカラー像とω=064°WB像を得た。このカラー画像はこれまでに得られたこの邊りの像の中で最高だと思われる。

シヌス・メリディアニとブランガエナは夕縁にありながら、詳細が出ている。オクシア・パルスから西のエオスを越えてティトニウス・ラクスまでの細かな模様は極めて詳細が出ており、アウロラエ・シヌスが退化したように見えるが内部描写がある。但し角(つの)などは明確である。イウェンタエ・フォンスもこの上ない描冩である。ソリス・ラクス周辺はφの所爲で南端に近いが、自然な感じで描冩されており、アウレア・ケルソの邊りも明確。但し、マレ・エリュトゥラエウムの邊りは夕方の所爲か、あまり濃淡がはっきりしない。アルギュレの邊りに霧の塊がある模様(南端)。霧関係では夕縁にテュミアマタ北側の霧の集合は好く描冩されている。クリュセは霧に殆ど無縁。朝方は白霧が濃く、ソリス・ラクス西方の何處で留まっているかが見られる。タルシス三山は暗點として頂上が霧を突き抜けている。特にアルシア台地は大きく濃褐色である。アスクラエウス雲は濃く、オリュムプス・モンス方向に擴がるが、オリュムプス・モンスは可成り大きな濃褐色斑點である。アルバはやや明るい。マレ・アキダリウムは複雜な濃淡があり、淡い部分は茶系統色。先行する例のブリッジは明確な小暗點である。ヒュペルボレウス・ラクスはやや淡く、少しこの邊りにダストの浮遊があるか。北極冠の描冩もナチュラルで、カスマ・ボレアレの出口付近には茶系統色のダストの分布が見られ、これも自然である。オリュムピアが北極冠の向こう側のリム近くに見え、これは凄い描冩である。以上、この像は地上から得られた最高の火星像の一葉ではないかと思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140416/DPc16Apr14.jpg

 

  デーヴィッド・タイラー(DTy)氏のカラー像がω=319°W326°W335°Wと並ぶ。夕霧が南へ些し揚がってシュルティス・マイヨルに斜めに這入って居る様子が三葉で判る。シヌス・サバエウスの東端は切れており、マレ・セルペンティスは淡いか無いかの状態であろう。ホイヘンスは明確。シヌス・メリディアニなどそこそこに出ている。朝霧はシヌス・メリディアニの北まで続いている。例のブリッヂは確認出來る。最終ではオキシア・パルスが明確になっている。ヘッラスは白く、内部に濃淡がある。北極冠の微細も可成り出ている。尚、ω=326°Wは前日にも撮っているので、比較が出來る。ヘッラス内部の濃淡は全く同じである。ただ、本日の方がシーイングは良いようで、微細は此方が勝ち。また本日のω=335°Wも前日のω=334°Wと比較でき、夕霧などの動きは全く同じに見えるが、イアクサルテス後方の運河は本日の方が明確である。シーイングの所爲であろう。しかし、処方がDTy氏のように安定している場合は、何か異変が起こったとき、こうした比較可能性は極めて有効であると思う。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140416/DTy16Apr14.jpg

 

  レオ・アールツ(LAt)氏がω=329°Wでのカラー單像。シヌス・サバエウスなど微細に富むが、全體ブレがある様な感じで(多分B光像か)DTy氏の15 Aprilω=329°Wと比較すると、ヘッラスやシュルティス・マイヨルの描写が酷く違う。不思議なことにノドゥス・アルキョニウスはLAt氏の方で鮮明である。R像とB像の違いか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140416/LAt16Apr14.jpg

 

  リシャルト・ボスマン(RBs)氏の單像はω=341°Wである。RGBの様だが、些し色彩に乏しく、ヘッラスなど白くはなく、朝霧も鮮やかではない。ゴーストも、例えばシュルティス・マイヨルの西岸に見られる。然し、シヌス・サバエウスなどは可成り微細に富んでいて、アリュンの爪先の先鋭化などはHST像を思い出すほどである。他の處ではゴーストが出ていながら、RBs氏の處理法が通じる、というか、こうした像を部分的にも出す方法が知られているのだと思う。他にシヌス・サバエウスの東端の北端の斑點などもそうである。例のマレ・アキダリウム東側のブリッヂは実に濃い小斑點として明確である。最早ブリッジとは言えない。しかし、この"斑點"1997年のHST像には出ていて、よく見ると斑點状ではなく、細長い線分に近いのが真相である。變化が起こったのかも知れないが、2007年のHSTでも同様に確認される。2012年のMROの破れ提灯でも、古い形が殘っているし、詳しくは調べていないが、2014年の破れ提灯でも見えている様だ。尚、笑ってしまうが、この角度もDTy氏の15 Aprilの画像の中にあって、比較が出來る。DTy氏像がノーマルなのに対して、RBs氏の像の異次元的なところが幾つか見つかる。然し、将来このアリュンの爪が標準的な目安になるであろうと思う。斑點問題のほか、リマ・ボレアリスの外側にオリュムピアに續く白い筋が未だ続いているような錯覚が起こる。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140416/RBs16Apr14.jpg

 

  クリストフ・ペリエ(CPl)氏の組畫像はω=350°Wω=002°Wで撮られている。マイルドな描冩で、 ヘッラスは真っ白で隠れようとしている。シュルティス・マイヨルの北部には夕霧が正常に見え、RGBでも沙漠の方に淡くはみ出しているがBでは明らか。朝霧も穏やかであるが、特筆するのはBで見るとオクシア・パルスの北側に可成りの強い霧溜まりがあることで、テュミアマタに張り出す朝霧と連結している。更にこれが夕霧と繋がっている模様で、帶をなすと言える。CPl氏発現のブリッヂは幽かだが見えている。北極冠の形もR Gで把握されている。IR(685nm)ω=358°Wで撮られている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140416/CPl16Apr14.jpg

 

17 April (λ=117°~118°Ls)

  デーヴィッド・アーディッチ(DAr)氏がω=002°Wで撮像。前、前々作と同じような色合いである。 シュルティス・マイヨル北部を夕霧が侵しているのが見えるが、この角度は前日にCPl氏が撮像していて、夕霧の被り方をもっとアッサリと、然し沙漠へのはみ出しも含めてリアルに描写している。朝霧の深さもBで見られると思う。北極冠の割れ目などは口徑差であろう。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140417/DAr17Apr14.jpg

 

  エフライン・モラレス(EMr)氏はω=046°W ワンセット。既にシヌス・メリディアニは夕方で、マレ・アキダリウムも午後。描冩は平均以上で、シヌス・メリディアニから西へティトニウス・ラクスまで詳細が出ている。夕端には濃い霧が貯まっていて、Bでは朝霧まで帶をなす。特にテュミアマタの北には霧溜まりがある。朝霧の中にはアスクラエウス・モンスが褐色斑點として際立つ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140417/EMr17Apr14.jpg

 

  フランク・メリッロ(FMl)氏は三時間弱を掛けて、ω=050°W053°W059°W063°W067°W071°W075°W079°W084°W089°Wと連写した。火星円盤の左側は正真のリムであるが、シヌス・メリディアニはω=063°Wまで痕跡がある。マレ・アキダリウムの西北部の濃い領域は最後ω=089°Wまでは濃いまま存続する。朝方は可成り欠けが大きくなっていると思うが、アガトダエモンは初めから見えていて、最後まで残るようだ。 ω=063°W 以降は朝霧の中にアスクラエウス・モンスが見え、次いでタルシス三山がポーク・アウトしている。 アスクラエウス雲は早くから顕れるが、ω=075°W084°Wでは本領発揮である。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140417/FMl17Apr14.jpg

 

   DPc氏は17Aprilにもバルバドスでω=055°Wの素晴らしい像で、前回16 Aprilω=062°Wカラー像に劣らない。少々の違いは見られ、16 Aprでは K色系の模様は弱めて濃淡をコントラスト弱く見易いようにしたが、今回の17Aprilはいくらか黒色系に戻しているように見える。それでもヒュペルボレウス内の黄塵による黄土色は遺している。コントラストの上がった所爲で、ソリス・ラクスやアウレア・ケルソの邊りの詳細が前回に比べて潰れてきている。コントラストの上がった所爲で、リアスでの微細模様はいきいきしているほか、タルシス三山のポーキング・アウトがより明確になっている。前者ではテムペの色合いは黄土色で鮮やかではなかったが、今回は沙漠は鮮やかで、濃くなっている。なお、ブリッジの斑點はコントラストの高い限り、濃い。裏面に廻っているオリュムピアの描冩は17Aprilの技法では潰れる。 1997年のHST像に比べてBは深みがない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140417/DPc17Apr14.jpg

 

   ピーター・ゴルチンスキ(PGc)氏はω=058°Wでワンセットを得る。少し色彩の鮮明度は無いが、可成り詳細は出ている。特にアウレア・ケルソのあたりの詳細が見え、その先行するマレ・エリュトゥラエウムの北側の詳細は興味が湧く。朝霧の中にはアスクラエウス・モンスとパウォニス・モンス、アルシア・モンス系の斑點が並んでいる。北極冠の詳細もある。もう一つ注意を引くのはタナイスの延長上のターミネーター近くに白雲の淡い塊があることである。これはGBにハッキリしている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140417/PGc17Apr14.jpg

 

   デーヴィッド・ウェルドレイク(DWd)氏はω=158°WLRGB像。オリュムプス・モンスの雲、その他タルシス山系の白雲が見えるが、西側かどうかなどの判断が出來ない。アルバも白い。北極冠、オリュムピアの詳細は判らない。エリュシウムは朝方に出てきているらしく、先行するプレグラ邊りはBでも暗い。プロポンティスIRで出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140417/DWr17Apr14.jpg

 

  サデグ・ゴミザデ(SGh)氏のω=250°Wの單像。ヘッラス中心部は真っ白、縁は蒼白く暈けている。エリュシウムは東端で真っ白で、ピンクの筋と色分けが出來ている。暗色模様はそれぞれ出ているが、輪郭は暈ける。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140417/SGh17Apr14.jpg

 

  ジュゼップ・ソルデビジャ(JSv)ω=324°Wの單カラー画像を始めて送ってきた。C14による画像であるが、ちょっとモノクロに色を付けたような色彩で、リアリティに乏しいが、模様の詳細は可成り出ている。多分シュルティス・マイヨルは夕霧を受けているはずだが、内部の斑現象とアエリアの明るさがそれを暗示している程度で正確な分布など判らない。然し、ホイヘンスは出ているし、シュルティス・マイヨルの北端の複雑さや、シヌス・サバエウスの微細などはある程度把握できる。マレ・アキダリウムの東のブリッジも点状に見えないことはないし、北極冠も單純ではない様子が出ている。處理を改良すれば直ぐ好くなるだろう。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140417/JSv17Apr14.jpg

 

18 April (λ=118°Ls)

    PGc氏のω=026°Wω=056°Wの二組。色彩には彩りが限定されるが、微細構造は好く描冩されている。前者ではアガトダエモン止まりだが、マレ・エリュトゥラエウムの北の少しく明るい處は出ている。 マレ・アキダリウムは南中で、その東の例のブリッヂはRで出ている。シヌス・メリディアニから運河がマルガリティフェル・シヌスの方に奔っている。像の東端にはシュルティス・マイヨルが沈んだ跡に白雲がリムに貯まっている。

後者ではティトニウス・ラクスが丸っぽ出て、ソリス・ラクスとアウレア・ケルソ邊りが上手く描冩されている。この像は白霧描冩に心掛けていて、テュミアマタ北部に小圓形の雲溜まりがあり、Bで顕著、これはω=026°Wでも淡く出ている。朝霧の中にはタルシス三山が濃褐色で突き出ていて、更に白霧はティトニウス・ラクスの南側へも廻っているが、ノクティス・ラクスの西側にはぽっかり霧が消えたところがある。 北のほうではタナイスの延長線上の朝方縁近くに雲が出ている。マレ・アキダリウム内では微妙な濃淡が出ている。ヒュペルボレウス・ラクスに抱かれる北極冠にはカスマ・ボレアレの處には茶色の黄塵が降りている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140418/PGc18Apr14.jpg

 

   DPcは前日と同じくバルバドスでω=057°Wのカラー單像を得た。 これはPGc氏の第二セット(ω=056°W)と殆ど同じ角度で、上で述べたことは更に詳しく描冩されている。またDPc氏は前日ω=055°Wで撮っているから、此方とも対照できる。 實際のところ、17AprilDPc氏の画像と殆ど同じように処理されていて、違いがあるのはごく僅かで、テュミアマタ北の白雲の濃度と、タナイス東側、朝方に出ている白霧に違いがあること、アルシアの南東方向の霧の分布に差がある程度であろう。從って像の紹介は省き前日のものと同じとする。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140487/DPc18Apr14.jpg

 

   熊森 照明(Km)氏はω=188°Wで撮像した。マレ・キムメリウムの全體がディスク内に這入ったところ。蟻ンコの足が見えている。マレ・シレヌムがその東端に出ている。オリュムプス・モンスの雲が先行する縁雲と未だ分離していて白いが、一頃より白さを減じている。エリュシウムは未だ朝方だが、淡い白霧がエリュシウム内に分散して、オリジナルなエリュシウムを彷彿とさせる。尤も内部構造は少し出ていて、アエテリアの暗斑(これは南部の二條も出ている)際の赤い筋はみえるようだ。プレグラ邊りは茫洋とした少し濃いめの茶色系。プロポンティスI は南中である。オリュムピアの尻尾附近にリマ・ボレアリスを越えて北極冠に繋がる枝が出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140418/Km18Apr14.jpg

 

   DTy氏がω=302°Wで單像。 ヘッラスは白く輝くが、その縁は雲が溢れているように暈けている。エリュシウムは真っ白で東端リムにある。シュルティス・マイヨルなどは緩く再現されていて、却って内部のデリケートな濃淡がわかる。ホイヘンス・クレーターは好く見える。シヌス・サバエウスはシヌス・メリディアニまで既に円盤内だが、後者は朝霧の中である。北極冠の縁は凸凹しており、オリュムピアも沈むところが見えるが、北端付近はよく分からない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140418/DTy18Apr14.jpg

 

   DAr氏はω=342°Wの單像。色彩は白色も含めて、芳しくないが、微細を心掛けて処理したのであろう。お蔭でシヌス・サバエウスなどの微細構造は彷彿とするが、ティミアマタの白霧などはどうなっているか判らない。シュルティス・マイヨルへの夕霧の関与も判らない。 マレ・アキダリウム西側の朝方白雲もチェックできない。 ただ、マレ・アキダリウム東側に接する明帯の中の例のブリッヂは見えているし、シヌス・メリディアニからマルガリティフェル・シヌスの方への橋渡しも二本ほど見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140418/DAr18Apr14.jpg

 

19 April (λ=118°~119°Ls)

   グザヴィエ・デュポン(XDp)氏はω=006°Wでワンセット: 夕端にシュルティス・マイヨルの遺した白雲が少し殘って沙漠の方に出たようだ。朝霧は主に北半球に見られ、クリュセとマレ・アキダリウムの南部を掠めて中に這入っている。イアクサルテスと後方の運河の二本がマレ・アキダリウムとヒュペルボレウス・ラクスを繋いでいるのが好く見える。その西に白雲がターミネータ近くに見えるようだ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140419/XDp19Apr14.jpg

 

   DPc氏はバルバドスでω=013°Wでのカラー像とω=017°WでのB像を撮った。もう大抵は驚かなくなったが、これも凄い像である。先ず眼が行くのはシヌス・サバエウスであろう。少し痩せすぎと思うぐらい、淡い部分が濃い部分を補って來ていたか、と思える。 これは過剰處理のようには思えない。シヌス・メリディアニの内部構造もHST像の印象よりも濃淡が違っている。ブランガエナも途切れとぎれで描冩された。これは2001年頃のHSTの描冩型と違っている。オクシア・パルスの邊りもこんな具合になっていたのか、と改めて感じ入ったが、特徴のあるアラム・カオスは明らかではない。オクススと言っていた運河状のものも(斑点状の二重運河を含む)複雑な斑點群である。例のブリッジは明らかな孤立點で、どうやってブリッジに化けるかというのも興味がある。未だ詳しく調べていないが、2001年のHST2002年のMGS像では少し細長くなっている。場所はオクスス・カウス(Oxus Cavus)の少し(30kmぐらい)南に位置する地溝に依ると思う。以後、この斑點を"オクスス暗斑點"もしくは"線分"と呼ぶことにする。HSTでは円くはなく、棒状であることを記憶しておこう。今回のマレ・アキダリウムもアキッリス・ポンスがどうなったかのヒントを示しているかも知れない。ヒュペルボレウス・ラスクも単に濃いという表現がここでは當たらなくなっている。北極冠の内部の亀裂は非常に明確で、展開図が描けそうである。タナイスの西に雲の流れがあるが、この追跡が欲しかった。 尚、南部高緯度も興味深い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140419/DPc19Apr14.jpg

 

   EMr氏がω=034°Wで一組。RGBは矢鱈大きいが、見易い。白霧の描写が好く、南端が少し白くなっている。夕端はシュルティス・マイヨルの消えた邊りに白霧が残って居る。テュミアマタの北に小さな白雲溜まりがあって、これは夕霧と連絡し、またマレ・アキダリウムの南部とクリュセを覆う白霧に通じている。と同時に、朝霧とも繋がっている。 マレ・アキダリウムは南中だが、案外本体の上にも薄い霧があって、これはイアクサルテスを覆う可成りの白霧と通じている。テムペにも霧があり西に擴がっている。 朝霧はターミネーター沿いに顕著で、その中へアスクラエウス・モンスの山頂が這入った處である。もう一点顕著なのは、ターミネーター側の朝霧とは離れて、タナイスの延長上に細長い白雲の存在することで、これはテムペ側の霧とは連動せず、 北極冠の方に枝を出していることで、そろそろサイクロン型の白雲の出番を思わせる。これは前後の観測の欲しいところである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140419/EMr19Apr14.jpg

 

   DBt氏がω=036°Wでワンセットを得ている。一見して、シュルティス・マイヨル跡の夕霧と朝霧が クリュセとマレ・アキダリウム南部を介して太い霧で繋がっているのが判る。Bで明白で、その他、テムペの白雲とEMr氏像で出た北極冠近くのレンズ雲がでている。殘念ながらアメリカ側の観測はこれで終わり。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140419/DBt19Apr14.jpg

 

  ジョン・スーセンバッ(JSb)氏がω=296°Wでワンセットを撮った。オランダである。シュルティス・マイヨル中心の堂々とした像であるが、色合いが鮮明ではない。但し、詳細には富んでいると思う。ホイヘンスの邊りの描冩も好く、シュレーター・クレータも浮き彫りになっている。マレ・テュッレヌムの北邊、シュルティス・ミノルの邊りの凸凹も出ている。但し、ヘッラスや北極冠などは輝きが無く、 エリュシウムの沈むところも白さがない。ヘッラス内の暗部は興味深い。明るい部分はZ字型である。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140419/JSb19Apr14.jpg

 

  DTy氏はω=297°W303°W312°Wと並べるが、最初の像はJSb氏と同じ角度である。處理などは安定している。ヘッラス、夕端のエリュシウム、北極冠共に白が映えている。ヘッラス内の暗部も見えているが、観測時間内の變化は餘り見られない。明部のZ字型は少し変わる。朝霧の集中するのはティミアマタの北部で時間で少し廣くなる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140419/DTy19Apr14.jpg

 

ヨハン・ヴァレッル (JWr) 氏は火星はアマチュアとして我々の仲間としてスウェーデンと美国で経歴は長いが、今ではプロの天文学者である。今期は27Febから観測しているが、報告開始が遅かった。このセットは22cmニュートニアンでω=299°Wで拵えている。RGB像の色調は好いと思うが、詳細さはない。朝霧はテュミアマタの北のターミネーターに強く出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140419/JWr19Apr14.jpg

 

20 April (λ=119°Ls)

   DPcω=013°Wでカラー画像とB像を与えている。カラー像は少し引っ掻いたような感じのする画像だが、シヌス・メリディアニなどは前日と同じように詳細を見せている。夕端でシュルティス・マイヨルに夕霧がかかり、アエリアへ出ている。なお、マルガリティフェル・シヌスの北部にはアラム・カオスがでているようだ。オクスス暗線分の周りは少し明るく取り囲むように出ている。朝霧の他に、タナイスの西に雲塊がターミネーターに沿って見えている。この雲形は前日とは少し違う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140420/DPc20Apr14.jpg

 

  DBt氏の組写真はω=042°Wで、中央の霧の帶などRGBでもよく分かる。マレ・アキダリウムの南部を侵している。朝霧の中にアスクラエウス・モンスの山頂が這入って來ている。北極冠の西南方向に雲塊があるが、不鮮明。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140420/DBt20Apr14.jpg

 

   FMl氏の画像はω=044°Wω=050°W。暗色模様の濃度が高く、綺麗ではない。朝霧は白く出ているが、マレ・アキダリウムの西北に雲塊が感じられる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140420/FMl20Apr14.jpg

 

 21 April (λ=119°~120°Ls)

    DPc氏は ω=347°W001°W012°Wで連続三像を得た。第三像は20Aprilω=013°Wに似ており、殆ど同質の出来栄えである。少し引っ掻きの印象がこの日の方が強い。ただし、細々したものが此方には出ているのかも知れない。タナイス西の伸びた雲塊は19ω=013°Wから見えるが、20ω=013°Wの方がはっきり強くなっている。そして21ω=012°Wには少し弱くなって顕れているわけである。21日は雲の凝結前の影像がω=247°W001°Wとあるわけだから、生成過程を表していよう。(雲は前日のものではなく新しく朝作られたものである。)  なお、北極冠内の亀裂はどれにも顕れていて、鳥瞰図は可能である。オクスス暗影線分はどれにも点状で、點の周りは円く明るいのが特徴。ヘッラスの隠れ方も、ターミネーターサイドではないから、ω=347°Wでは未だヘッラスが見えているが、ω=013°Wでは縁がリム上に來たという判断で好いと思う。この日はアラム・カオスは見えていると言って良い。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140421/DPc21Apr14.jpg

 

    PGc氏がω=033°W像は沈んだ色だが、DPc氏の描冩に拮抗するような微細な模様が垣間見られる。シヌス・メリディアニは夕縁に近いが可成りの詳細を確保していて、ブランガエナの他、マルガリティフェル・シヌスの北部の描冩は素晴らしい。アラム・カオスも見えているようである。次の接近ではこうした影像が増えるであろうと思う。マレ・アキダリウムの東側明部内のオクスス暗斑點は圓形の明部のなかに斑点状に見える。マレ・アキダリウムの南部も可成り詳しい(RIR參照、IRはもっと優しい方が好いだろう)。朝霧にはアスクラエウス・モンスの山頂が這入って來ている。問題のマレ・アキダリウム後方、朝方の雲は小規模だが、少し複雑な様子を見せ、雲が二重になった部分がある。北極冠も複雑な様相を示す。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140421/PGc21Apr14.jpg

 

  EMr氏の画像はω=035°Wで、RGB像はデカイ。マレ・アキダリウムは南中で、一部はガスが掛かったように見える。テムペは靄っている。タナイス延長上の問題の白雲は矢張り二筋に分かれ、間は地面が見えているものか。その南の方には固まった雲塊がある。朝霧にはアスクラエウス・モンスの山頂が半分ほど入った様相。北極冠はPGc氏像ほどの鮮鋭度がない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140421/EMr21Apr14.jpg

 

     22 April (λ=120°Ls)

     DPc氏がω=349°Wω=006°Wでのカラー二像を並べて報告してきた。どちらにも骨だけになったようなスカスカのシヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニが中心で、安定した處理である。後者ではアラム・カオスが明確に出ている。ブランガエナからマレ・アキダリウムの南部にかけての描冩は後者が好い。旧称ブリッジことオクスス暗線分に起因する暗斑點はどちらにも圓形の中に斑點が鎮座する形で出ている。シュルティス・マイヨル内のホイヘンスやシュレーター・クレーターは勿論前者の方で充分出ている。前者では夕霧のシュルティス・マイヨルの侵し方の詳しさが加わったかも知れない。なお、マレ・アキダリウム北の北極方の雲塊も出ている。もう少し中へ這入ったところを見たいものである。なお、前者にはノドゥス・アルキュオニウスが出ているが、こんな端っこの描冩は見たことがない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/DPc22Apr14.jpg

 

  FMl氏がω=358°W015°W023°W029°W036°Wの像を並べる。最初は東端に押し込められたシュルティス・マイヨルが見え、シヌス・サバエウスの全貌が見えるが、最後はシヌス・メリディアニが東端近くに來ている。 後半にはニロケラスの双葉型が見える。マレ・アキダリウムの北後方には雲塊が喰っついている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/FMl22Apr14.jpg

 

   PGc氏がω=360°W=000°Wでワンセットを得た。未だ華やかさが無いが、これまでにない落ち着いた色合いである。多分沙漠の色合いが好くなったのであろう。暗色模様はマイルドに仕上げられていて、好い感じである。しかし、シヌス・サバエウスやシヌス・メリディアニの詳細は可成りのものである。ヘッラスは東端で細く白いが、直ぐ隠れそう。シュルティス・マイヨルも東端近くに來ていて、夕霧で北部は青色、で夕霧はアエリアの方に流れ出ている。テュミアマタの白霧は弱い。クリュセとマレ・アキダリウム南部(ニリアクス・ラクスを含む)は霧に覆われて、朝霧に續く。朝霧は綺麗な分布。これら霧はB像で確認出來るが、Bの中で最も密度の高い雲塊が マレ・アキダリウムの西北端に喰っついている。追跡が欲しいところ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/PGc22Apr14.jpg

 

   フレッディ・ウィッレムズ(FWl)氏がω=007°W019°Wで撮像したが、R像が好くなく(IR像も)RGB像は火星像としては落第點に近い。折角の口徑で、夕端のシュルティス・マイヨルを越えて沙漠に出る夕霧が好く捉えられているのに殘念である。マレ・アキダリウムの北部に従う白雲塊もω=019°Wでは少し構造を示すようだが、何ともこれではねぇ。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/FWl22Apr14.jpg

 

  近内 令一(Kn)氏がω=140°Wでカラースケッチ。CMやや東でオリュムプス・モンスの雲を検出。その先にタルシス山系の雲とクサンテ邊りの縁雲が出ている。北極冠も明白。オリュムピアが北極冠西に上がってきている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/Kn22Apr14.jpg

 

 森田 行雄(Mo)氏がω=154°Wで、LRGBRGB像を造った。オリュムプス・モンス、アスクラエウス・モンスに関わる白雲とアルバの白雲が夕方で三角形の頂点を作っている。夕端は先行する雲で明るい。プロポンティスIの後方にアエテリアの暗斑も窺え、それに付随してエリュシウムの雲が見えるが、未だほんの朝霧である。北極冠と斜めに昇っているオリュムピアの間(リマ・ボレアリス)は矢鱈杳い條。同時に北極冠側から南東方向に北極冠の吹き出しが見えている。 南方で濃いのはマレ・シレヌムであろう。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/Mo22Apr14.jpg

 

 

  クリス・スメット(KSm)氏がω=269°Wでカラースケッチ。朝方にシュルティス・マイヨルが出ていてヘッラスか、その南に白い領域がある。夕方にはエリュシウムが白く描かれている。北極冠の南にはウトピアが三角形暗部をなしている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/KSm22Apr14.jpg

 

  ピート・ローレンス(PLw)氏がω=276°Wの單像を提出。暗色模様は可成り細かいところも暗示的に示す。例えば、マレ・キムメリウムの西北端はすんなりとした槍型ではなく、文字通りcrossed fingersになっているのだが、それを彷彿とさせる。更に夕方にも拘わらず、マレ・キムメリウムから南に向かう柱の内、一本は甚だ独立して濃いが、これもデジャ・ヴュのような気がする(うまく思い出せないが)。暗色模様ではシュルティス・ミノルの邊りやカシウスなどは好い方の影像だと思う。明部ではヘッラスは境界がぼやけ、エリュシウムは常態だと思う。ここから発する霧は上手く出ていない。北極冠はまぁまぁである。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/PLw22Apr14.jpg

 

  JSb氏の像はω=296°Wで單像: 白は目立たずヘッラスなど平凡で、夕方のエリュシウムもあるのか無いのか判らないが、たとえば、シュルティス・マイヨルの西岸でシュレーター・クレーター邊りは参考になる・北極冠の形も好いようだ。オリュムピアはあるのか無いのか判らない状態。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140422/JSb22Apr14.jp

 

23 April (λ=120°~121°Ls)

    FWl氏はω=350°W005°Wで二組画像。前者ではヘッラスが夕縁に少し殘って白い。後者でも少し細く見えている。前者ではシュルティス・マイヨルは夕方で北部が夕霧で蒼く、霧は沙漠に伸びている。後者でも東端近くでシュルティス・マイヨルは細く見えていて、夕霧の状態は同じ。東端はリムである。像としてはブランガエナが見えるぐらいだから、標準以上なのだが、特別詳細は記録されていないと思う。朝霧は可成り濃く、両方ともマレ・アキダリウムの南部は霧の下。タナイスの方向のターミネーター近くに霧の塊があるが詳細は判らない。IR像には可成り詳細な模様が見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140423/FWl23Apr14.jpg

 

   EMr氏がω=030°Wで一組撮っていて、マレ・アキダリウム北西の雲は可成り中まで這入ってきた。Bでは濃い圓形雲。RGBでは圓形というよりも南の朝霧と連結している風。そして連結箇所の更に内側に褐色の目立つ領域がある。これは前日のPGc氏のω=000°Wに予兆が見られるかも知れないし、21AprilEMr氏自身のω=035°Wにも拡散した形で見られる様だ。この色は今回の他の領域では見られないが、ターミネーターまで続いていて、霧の連結線はその上に在るらしい。

 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140423/EMr23Apr14.jpg

 

 石橋 (Is)氏のω=131°Wはオリュムプス・モンスの雲を狙ったものかと思うが、淡いものがチラホラ見えるだけで、積極的に言えるのはオリュムピアぐらいか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140423/Is23Apr14.jpg

 

   Mo氏がω=134°Wとω=139°Wで撮っていて、オリュムプス・モンスの位置などはチェックできるが、その邊りに特筆するものは出ていないと思う。前者のB光像は好く、地が暗く締まっているが、オリュムプス・モンスの雲など弱くなっているのかも知れない。プロポンティスIは出ている。尚、北極冠から南へ吹き出しが見られる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140423/Mo23Apr14.jpg

 

   Km氏はω=146°Wの像。アスクラエウス・モンスの山頂とオリュムプス・モンスの頂上は瞥見できるし、雲は西側山腹だが、確かに然程強くない。なお、リマ・ボレアリスの南の東端近くに霧の塊が見えるが、一寸気になる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140423/Km23Apr14.jpg

 

   Kn氏がω=150°W159°Wでカラースケッチ:前者ではオリュムプス・モンスとアスクラエウス・モンスの山頂西雲がクサンテ邊りの夕霧と分離しているが、後者ではオリュムプス・モンスのみが分離している。後者ではエリュシウムが這入って來たのか、朝方が明るい。但し、北極冠西側で上昇のオリュムピアは前者ではっきりしている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140423/Kn23Apr14.jpg

 

   RBsω=274°Wの良像一組。ヘッラスは内部構造が出ているが、Rで弱く、Bで強い。エリュシウムは夕縁に近く、明部は重構造。シュルティス・マイヨルはホイヘンスやシュレーター・クレーターが出ている。北極冠は輪郭が好く、オリュムピアは尻尾が複雜。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140423/RBs23Apr14.jpg

 

24 April (λ=121°Ls)

   ジェイ・アルバート(JAl)氏はフロリダからω=332°Wでの眼視スケッチ、ALPOの会員だと思う。DPk氏宛がCcされてきた。シュルティス・マイヨルとシヌス・サバエウス、それにマレ・アキダリウムが這入ってくるところ。28cmSCT使用。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/JAl24Apr14.jpg

 

    FWl氏がω=338°Wω=351°Wの組畫像二組。前者では東縁のシュルティス・マイヨルの北部の夕霧に侵される様子が好く出ていない。後者ではスッカリ霧の下、注目点はマレ・アキダリウムの西北のターミネーター近くに雲塊がある。朝霧とは分離している。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/FWl24Apr14.jpg

 

    Kn氏がω=090°W101°Wでカラースケッチ:画面左上ではソリス・ラクス邊りと思われるところが薄暗く、マレ・アキダリウムも夕方に寝ている。前者では朝霧が可成り濃い、アスクラエウス雲が這入っているか。後者ではアルバ・パテラらしきところが円く白い。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/Kn24Apr14.jpg

 

   Is氏がω=118°W128°W138°W40分刻み。前日よりシーイングが良いらしく、夕方のソリス・ラクスやティトニウス・ラクスが リムに近づく様子が出ている。それに対してオリュムプス・モンスの雲は弱く、動きが好く掴めない。特筆するのは、先日来Mo氏像に見られる北極冠から南に向かっての吹き出しが三葉ともに出ていること。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/Is24Apr14.jpg

 

    Mo氏はω=124°Wω=134°Wの組畫像二組。此方もシーイングが少し回復したようで、R像でオリュムプス・モンスは山頂を取り巻いてリングが見えるが、RGBでは西側は雲である。アスクラエウス・モンス西側山腹の雲は可成り強く、そこから西北方向に可成り長い霧状の流れが出ている。LでもRでも見えるので、少し黄塵が含まれるかも知れない。Rではタルシス丘陵が少し暗點として見える。LRGBでもRGBでもアルバもやや明るく見え、北極冠からは少し南西寄りに吹き出しが確かに出ている。暗部のリマ・ボレアリスを跨いでいるのでよく分かる。暗色模様としては、ω=124°Wでは、ソリス・ラクス、ティトニウス・ラクスが夕縁近くに見え、ポエニキス・ラクスも見える。マレ・アキダリウムも細く横たわっているが、近くに濃い雲は見当たらない。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/Mo24Apr14.jpg

 

  Km氏はω=129°Wで撮像。Lカラー画像では、オリュムプス・モンスが綺麗なリング状に見え、一見雲と地肌の區別が着かないが、Bで西側山腹は雲だと判る。アスクラエウス・モンスの雲からの北西に向かう流れは見えている。但し、北極冠からの吹き出しは見えない。寧ろB像で判る。暗色模様としてはソリス・ラクスが夕縁で、ティトニウス・ラクスも見える。ポエニキス・ラクスも見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/Km24Apr14.jpg

 

   マーク・ジャスティス(MJs)氏はω=181°Wで組画像。オリュムプス・モンスの山岳雲は白く濃く、先行するタルシスの雲と未だ分離している。夕方北の方にはアルバが白い。朝方のエリュシウム内の南半分は朝霧を被っている。アエテリアの暗斑は朝霧の下に覗いている。プロポンティスIとプレグラは充分に霧の外。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/MJs24Apr14.jpg

 

   マノス・カルダシス (MKd)氏はω=211°W の画像。エリュシウムが南中だが、内部は仄かに明るく、これは朝霧の中に続いているか。オリュムピアは分離しないが、IR+R(ω=213°W)で分離。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140424/MKd24Apr14.jpg

 

   25 April (λ=121°~122°Ls)

      DBt氏がω=321°Wでワンセット拵えた。 北極冠の境界の凸凹が出ているので、だいぶDBt氏も慣れたようである。然しRは過剰處理であろう。テュミアマタ北の朝霧は濃いのか膨らんで居るように見える。マレ・アキダリウムの北に附随する雲片が出掛かっている(GB)。その後が問題。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140425/DBt25Apr14.jpg

 

  PGc氏がω=326°Wでワンセット。 マレ・アキダリウム北の朝雲は、Bで見ても朝縁の霧に紛れて分離していない。朝霧の中でもマレ・アキダリウム南部へは浸透してテュミアマタの北へ届いているようだ。ヒュペルボレウス・ラクスはCM附近で何か被っているのか少し淡化して見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140425/PGc25Apr14.jpg

 

   EMr氏がω=330°Wでワンセット。 マレ・アキダリウム北の白雲は朝霧とは分離していて白の濃度が高い。朝霧はテュミアマタの北へ淡く張り出している。一方、夕霧のシュルティス・マイヨルへの侵入は起こっているが著しくはない。Bでは北極冠から南へ靄が出ている様子。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140425/EMr25Apr14.jpg

 

     政次(Mn)12hGMT台から連続観測を試みた。Ns氏が不都合ということで、単独で40分ごとにω=116°W126°W136°W145°W155°W(15:20GMT)と眼視観測を行った。シーイングは普通で、初めから北極冠は好く見え、輪郭は滑らかではなく、左端の方がより明るい。横になったヒュペルボレウス・ラクスが極めて濃く見えた。ただ、CM通過前のオリュムプス・モンスは甚だ弱くもうコットン・ボールの時期は過ぎたと感じた。ω=126°Wでは、朝霧の強さに比べて、オリュムプス・モンスの雲は甚だ弱く、東側から弱い暗帯が北東に流れている。夕縁には矢張り濃い夕雲があって、一部飛び出しているかのように感じるほどだが、この邊りは模様の同定が難しい。南の夕端にはソリス・ラクス邊りが殘っている風。北極冠は輝いていて、その東は暗い。更にその東南はワインカラーに見える。ω=136°Wではオリュムプス・モンスは南中だと思うが、さっぱり顕著ではない。朝方ではプロポンティスIが見えていて、エリュシウムが明るくなるはずだが、朝霧と紛れる。夕端の白雲には縦に條が入っているように見える。北極冠はクリアで輝く。ω=145°Wでは火星南中過ぎ。ドーム内気温は14°C。相変わらずオリュムプス・モンスは不確か。夕雲には縁取りがある如く。最後のω=155°Wでは北極冠は恒常的に見えるが、シーイングは向上しない。アエテリアの暗斑は這入って來ているが、朝霧と一緒にエリュシウムも見えるかといった程度。夕縁は明るいが、オリュムプス・モンスの雲がそれらしいと判るだけで、明るくはなく、先行する雲は夕縁に明るく見えるが、アスクラエウス・モンスの雲がどこかは判らない。

 

  SGh氏はω=226°Wで撮像。古典的なエリュシウムが南中で、内側全體が明るいか。シュルティス・マイヨルが朝のターミネーター近く。青味。オリュムピアが分離しない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140425/SGh25Apr14.jpg

 

26 April (λ=122°Ls

   Is氏がω=090°W100°W110°W116°Wでヴィデオ撮影。ω=090°Wでは北極冠が明るく、南にソリス・ラクスの痕跡、マレ・アキダリウムも夕端近くに横たわってきている。ω=110°Wの像はこれまでで最高に好く、北極冠の東にヒュペルボレウス・ラクス、南にはソリス・ラクスとティトニウス・ラクスが見える。北極冠西側のリマ・ボレアリスは好く切れ込んでいる。ω=116°Wは前日のMnの角度と同じで、濃いヒュペルボレウス・ラクスに接して北極冠が見え、オリュムピアが上がってきている。オリュムプス・モンスはいずれの像でも、眺め透かして判らないことはないが、全く明るくないと言える。ω=110°Wではアスクラエウス雲が鋭く白い。尚、北極冠から南へ吹き出しがある様にも見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140426/Is26Apr14.jpg

 

   Mo氏がω=107°Wω=124°Wで組像二組。兩組とも、北極冠がすっきりしないので、シーイングは良くないのだと思うが、とにかく、難しい画面である。ω=124°Wの方が好く、オリュムプス・モンスより、アスクラエウス・モンスの雲の方が明瞭で、ここから北西への直線状の霧の流れがある。オリュムプス・モンスの雲はどちらを向いているのかも判らないが案外アルバが明白。マレ・アキダリウムは霧に包まれて没するか。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140426/Mo26Apr14.jpg

 

   Kn氏がω=110°Wでカラースケッチ。東端近くにソリス・ラクスあたりとマレ・アキダリウムの暗部、後者のやや南のリム近くには濃い夕霧。アルバとおもわれる白斑がCM附近にある。北半球ターミネーター附近に朝霧。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140426/Kn26Apr14.jpg

 

   DTy氏がω=227°W237°Wの像を並べる。エリュシウムの南中だが、エリュシウム内部には明るさが擴がっているもののエリュシウム・モンスの位置などは判らない。前半ではシュルティス・マイヨルが這入って來たところ、後半では完全に這入っている。少し青味。面白いのは南端に南アウソニアが來て沙漠色で案外明るいこと。ω=237°Wでオリュムプス・モンスがリム上のようである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140426/DTy26Apr14.jpg

 

27 April (λ=122°~123°Ls)

     Kn氏がω=050°W071°W119°Wでカラースケッチ三葉:最初の像ではシヌス・メリディアニが夕端に見える。マレ・アキダリウムは淡い。西北端に極型朝雲が固まっている。まだ、ターミネーター近く。ω=071°Wでは朝霧の中に、タルシス山系が連鎖して褐色で透けて見える。オリュムプス・モンスも褐色で大きく這入って來た。マレ・アキダリウムは少し草色。ω=119°Wでは、先の雲塊はマレ・アキダリウムに附いてきて居るみたいでもある。オリュムピアが出てきている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140427/Kn27Apr14.jpg

 

   MJs氏はω=065°W079°W088°W102°W107°W117°W121°Wと殆ど四時間に亙って連続で組み写真を作った労作である。最初の三像はシーイングの所爲か、暈けているが、然しそれでもR像では主な模様は細かく把握できるし、タルシス三山とオリュムプス・モンスの朝霧からのポーキング・アウトは確認出來る。何よりも霧の分布が出ている。特にマレ・アキダリウム南部に水蒸氣が固まる様子が掴める。後の四像は単独でも秀逸な像である。ω=102°Wは最も好い画像だが、アスクラエウス・モンスの西山腹に濃い白雲が張り付いていて まだ、アスクラエウス雲が好く見える。アルシアの山丘の地肌も綺麗に褐色系で見える。オリュムプス・モンスも環状に見えている。アルバの白雲は強くない。なお、ソリス・ラクスの北側には霧が這入っている。オピル・カンドルにも霧で満たされている様子で、これは殘りの像でも見えている。 特に、はっきりしているのは、オリュムピアの先立つ雪片(複数)から南の方に霧状の條が何本か出ていることで、ω=107°Wでも同じような状態。これは先の1415AprilDPc氏の像ではそれ程はっきりしていない。ω=107°Wは角度としてはHST30 March in 1997の像と殆ど同じで、両者の模様は符合するところが多い。夕霧のマレ・アキダリウムとの関係はそっくりである。但し、オリュムピアに先行する雪片から出た吹き出しの様な流れはHSTでは見えないが、MJs氏の今回の像ではω=121°Wで強く出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140427/MJs27Apr14.jpg

 

   ブラシスラヴ・チュルチック(BCr)氏がω=087°Wω=096°Wでツーセットを得る。R像が過剰處理気味だが、全體の霧の状態を好く描写している。 最終的な夕霧はテュミアマタではなく、マレ・アキダリウムの東側に押し込められるようである。タルシス三山頂の他、オリュムプス・モンス山頂もGBでは雲から飛び出ている。この像で面白いのはRで出た人工的なゴースト・ラインの一部が、RGBではGBの影響で青色になることである。Blue Syrtisというなら、Blue ghostもありと言うことになる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140427/BCr27Apr14.jpg

 

   JWrω=233°WRGB, R, G, Bの一組を与えた。少し雲で明るいエリュシウムがCMを過ぎたところである。シュルティス・マイヨルが朝縁から蒼く出てきたところ。南ではマレ・キムメリウムが東側に濃く、北ではウトピアが濃いが濃淡が出ている。Bではエリュシウムの雲が朝霧と繋がっているのが判る。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140427/JWr27Apr14.jpg

 

28 April (λ=123°Ls)

   PGc氏がω=299°Wでワンセットを撮っている。東端の真っ白のエリュシウムから太い霧帶がシュルティス・マイヨルに飛び込んでいる。ヘッラスは特に西側で白さを減じ、内部構造が變わって來ている。模様は全體に不鮮明と言えるが、ホイヘンスは見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140428/PGc28Apr14.jpg

 

   マーチン・ルヰス(MLw)氏はω=232°Wの單像。エリュシウム内の色分けが出來ていて、エリュシウム・モンスの雲は白く、アエテリア暗斑の東側の地肌色は鮮明。これは新しい様相で、アエテリアの暗斑も再評価が必要の様子。ウトピア内部の濃淡が出ている。オリュムピアの尻尾が弱い。南端では南アウソニアが赤っぽく際立っている。マレ・キムメリウムの蟻ンコの眼(ハーシェル・クレーター)と脚(ゲール・クレーター*とクノーブル**・クレーターの邊り二本)はほぼ確認出來る。

*W F ゲール(1865~1945)は澳大利亞の銀行家で天文家、

**E B クノーブル(1841~1930)は英國の実業家で天文家。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140428/MLw28Apr14.jpg

 

29 April (λ=123°~124°Ls)

   EMr氏がω=302°Wでワンセット:東端のエリュシウムからガスは出ているが、シュルティス・マイヨルへの動きは少し判りにくい。ヘッラスは内部西側に凹みを作っている。東側の明るいところは未だGBの所爲で明るいようだ。 朝霧は這入ってくるマレ・アキダリウムに先立ってターミネーターに沿って出ている。北極冠は二つ玉にみえ、オリュムピアの尻尾からは冷気が立ったようにガスが伸びている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140429/EMr29Apr14.jpg

 

   ビル・フラナガン(WFl)氏の今期初めての登場であるが、技術を持つ観測者である。ω=315°Wでワンセット。ヘッラスの内部が細かいようで、西端にはフリルが出ている。こちら側を向いたところは白さが落ちているが、泡だったように見える。シュルティス・マイヨルではホイヘンス・クレータとシュレーター・クレーターが明確である。シヌス・サバエウスの北端が点描。アリュンは円盤に這入って來ているが、ターミネーター端はι=17°で暗くなってきた。 朝霧はマレ・アキダリウム南部に先立つようである。またテュミアマタの方に昇っている。ボレオシュルティスの描冩は詳しい。北極冠の二つ玉も落ち着いているが、吃驚するのは、殆ど沈んだオリュムピアの尻尾は異様に長く続くらしいこと。途中切れ目もあるが、北極冠真東では、北極冠とも繋がっている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140429/WFl29Apr14.jpg

 

   JWrは二組のセットをω=209°Wω=226°Wで与えた。前者はエリュシウムの南中前、後者は南中後である。後者の方が像としては良質である。シュルティス・マイヨルは後者で朝縁に蒼く出ている。マレ・キムメリウムも可成り好い描冩で蟻ンコの脚が出ている。西北端の描冩も好い。エリュシウムも後者では細部まで出ていて、ピンク色の部分が明白。カシウスも好く切れている。B像で見ると、エリュシウムは後者の方が明るいが、朝霧との連結は前者の方のB像が綺麗である。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140429/JWr29Apr14.jpg

 

   DTy氏はω=210°Wの單像:エリュシウムはCM近いが、内部がやや明るい程度。プレグラ邊りが太く淡く出ている。左端にはオリュムプス・モンスの雲が未だリムに接していない様子。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140429/DTy29Apr14.jpg

 

JWr(再度登場)ω=216°Wで眼視観測を行い、スケッチを行った。古典的なエリュシウムが中央に描かれているが、プレグラも含めて、少しレアルでなく、アエテリア側の境界も現実の形を捉えていないと思う。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140429/JWr29Apr14d.jpg

 

30 April (λ=124°Ls)

   モーリス・ヴァリンバーティ(MVl)氏が ω=052°Wでワンセットを得たが、これには北極型の白雲が冩っており、この日の第一号になった。R像は可成りの微細まで写し込んでおり、Gでもブランガエナが見えるぐらいだから、シーイングは良かったのだと思うが、何故かRGBがしっかりせず、餘り像は綺麗ではない。しかし、マレ・アキダリウムの西北、ターミネーター近くに、馬蹄型と言おうか、或いは南方向の開いたランドルト氏環(検眼に用いるC字型のチャートLandolt C optotypes )の形と言おうか、必ずしもサイクロン型ではないが、奇妙な朝雲が出ている。その北側にも雲が続いていて、これはヒュペルボレウス・ラクスに接する幅を持つ雲か雪片に連なっている。一方でカスマ・ボレアレからは砂塵が出入りしているような構図があるが、これは常態であろう。なお、朝霧の中にはアスクラエウス・モンスがpoke outしている。テュミアマタの北の方にはガスの塊がある。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/MVl30Apr14.jpg

 

    次にBCr氏がω=062°Wで撮った。ランドルト雲は少し中に這入ったようだが、見えている。朝霧の中には更にパウォニス・モンスの頂上が見えてきている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/BCr30Apr14.jpg

 

*   三番目にMJs氏がω=071°Wω=081°Wで撮った。示し合わせたわけでもないだろうが、これでメルボルンだけで10°W毎の像が四葉揃ったことになる。ω=071°Wでは朝霧の中にアルシア・モンスが這入って來て、揃い踏みとなり、オリュムプス・モンスも見える。アルシアの東には少し霧の薄いところがあるが、ノクティス・ラクスからは再び濃い霧が南に走っている。夕端ではテュミアマタに霧が濃く二ヶ所に固まってきた。これも面白い課題である。問題の馬蹄形雲の南側は朝霧の方に繋がっているのかも知れないがさしあたりはアルバ・パテラの雲に流れている感じである。 尚、中芯("")は褐色系の色をしている。ω=081°Wでも健在で、は褐色系である。そして馬蹄の北は昇ってくるオリュムピアの先陣と連なっている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/MJs30Apr14.jpg

 

  スティーファン・ブダ(SBd)(同じくメルボルン)ω=073°Wで撮っている。この像も優れた像で、淡い霧の拡がりを好く傳えている。アルシアも三次元的な様相である。SBd氏像は北極冠の邊りの描冩も好く、北極冠自身も好い描冩だが、ヒュペルボレウス・ラクスの内外の描冩も優れて居るので、馬蹄の北ではオリュムピアに先行する雪片がどのように馬蹄の底と連関するか、判る。馬蹄の内側の眼が褐色で可成り濃いのは、矢張りサイクロンの眼と同じように、真ん中の霧が拂われて、地肌がまともに出ているからであろう。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/SBd30Apr14.jpg

 

  Km氏がω=086°Wで撮ったので、更に範囲が広がった。馬蹄形雲は健在である。Km氏像ではオリュムプス・モンスが三次元的に見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/Km30Apr14.jpg

 

   歐羅巴へ行ってMkd氏がω=155°Wで撮った。少し、ボケボケだが、オリュムプス・モンスが夕方へ行って、雲が西側というのは判る。アルバも白い。エリュシウムはターミネーターか。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/MKd30Apr14.jpg

 

   DTy氏はω=197°W。可成りの像で北極冠附近はオリュムピアも含めて好く出ている。オリュムプス・モンスは夕方で分離している。エリュシウムも朝方で地肌の赤味色など好く出ているが、エリュシウム・モンスの邊りは本体が出ているかも知れないが、白くはない。然し、エリュシウム南部発現の霧が朝縁の方に太く流れている。マレ・キムメリウムも好く出ている。オリュムピアも北極冠の南に鎮座。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/DTy30Apr14.jpg

 

  JWr氏がω=199°Wでワンセットを得た。オリュムプス・モンスは真っ白で、未だ夕端には達していない。エリュシウムは古典的で、内部は未だ少し明るい程度だが、よく見ると色分けなど出來ているようである。Bは良像で、エリュシウムから朝方へ向かう霧が好く捉えられている。マレ・キムメリウムも、Rで見ると、可成り詳細が見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/JWr30Apr14.jpg

 

  MLw氏がω=201°W:オリュムプス・モンスが未だ分離していることなど、DTy氏と殆ど変わらないが、エリュシウムのプロポンティスI側の色合いにはもう少し詳細があり、オリュムピアも内部の詳細が出ている。但し、エリュシウム以西の朝霧はDTy氏像の方が好く出ている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140430/MLw30Apr14.jpg

 

 

 Editors Note:

 28, 29 Aprilには澳大利亞の観測も日本の観測もないので、30日が初発現日かどうか判らない。しかし、次号での報告になるが、1 May 2014には、上の馬蹄形がサイクロン型になって再生され、その後暫く極雲は見られた。なお、音叉型の極雲は、既に例えば、HST17 May 1997には凹みが南向き、27 June 1997には凹みがマレ・アキダリウムの方を向いた形で出ている。

 


http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/solar%20system/mars/1997/23/image/a/

http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/solar%20system/mars/1997/24/image/a/

 

 

・・・・・・追加報告:    次のように古い友人JWr氏からのまだレヴユーをしていない画像が存在する。

    ヨハン・ヴァレッル (JWr) スウェーデン

       8 Sets of RGB Images + 1 Drawing (24 February; 3, 12, 21, 26, 29 March; 11 April 2014) 

                                               308×20cm Spec, and with a DBK21AU618

 

 


・・・・・・参考:

この期間の現象の解説は

CMO/ISMO #395 (25 March 2012)の巻頭解説 「2011/2012年の火星(そのII )」 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/395_MNN.htm

も参考にされたい。

  


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