2013/2014
CMO/ISMO 観測レポート#07
2014年三月の火星観測 (λ=096°Ls~110°Ls)
CMO
#421 (
♂・・・・・・今期7回目の今回の観測レポートは、2014年3月中の観測を取り上げる。火星は三月一日には「おとめ座」で「留」となり、逆行に移って再びスピカの北を通過した。視赤緯は8°Sから6°Sと少し回復したが北半球での南中高度は低い。いよいよ接近も本番となって視直径はδ=11.6"から14.7"と急速に大きくなっている。季節はλ=096°Lsから110°Lsとすすみ、北半球の夏至過ぎの火星面の観測であった。位相角はι=26°から07°と変化して、衝効果が見られる直前となった。傾きはφ=19°Nから21°Nと再び北に少し傾きが戻ってきた。
♂・・・・・・この期間には以下のように、33名の報告者から189件の報告を拝受した。国内から5名29観測、アメリカ大陸側から9名37観測、ヨーロッパから12名63観測、オーストラリアから5名54観測、中近東から1名4観測、追加報告2件であった。
レオ・アールツ (LAt) ベルギー
10 Colour + 1 IR
Images (2, 4, 7, 13, 25, 26, 29/30 March 2014) 36cm SCT with a DMK21AU618
阿久津 富夫 (Ak) 烏山・栃木
6 Sets of
RGB + 6 IR Images (24, 27,
デイヴィッド・アーディッチ (DAr) ミドルサセックス、英国
1 Colour
Image (23 March 2014) 36cm SCT with
a Flea 3
ドン・ベーツ (DBt) テキサス、アメリカ合衆国
9 Sets of
RGB + 2 IR Images (8, 13, 14, 18, 19, 21, 29, 30 March 2014)
25cm Spec with an ASI 120MM
ジョン・ブードロー (JBd) マサチューセッツ、アメリカ合衆国
1 Set of
RGB Images (19 March 2014) 37cm
Dall-Kirkham with an ASI 120MM
スティーファン・ブダ (SBd) メルボルン、オーストラリア
7 Sets of
RGB Images (3, 8, 12, 19, 24, 28 March 2014) 40cm Dall-Kirkham with a DMK21AU04
ブラスチラフ・チュルチック (BCr) メルボルン、オーストラリア
3 Sets of
RGB Images (19, 25 March 2014) 28cm
SCT with a QHY5L-II
グザヴィエ・デュポン (XDp) サン・ロック、フランス
4 Sets of RGB + 7 Colour + 7 R + 7
B Images (7, 14, 16, 18, 20 March 2014)
18cm Spec with an i-NOVA PLA C+
サデグ・ゴミザデ (SGh) ルーデヘン、イラン
4 Colour Images
(7, ~9, 20 March 2014) 28cm SCT with a DMK618.AS
ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
2 Sets of
RGB + 2 IR Images (1, 27 March 2014) 36cm SCT with an ASI 120MM
カーロス・ヘルナンデス (CHr) フロリダ、アメリカ合衆国
1 Colour Drawing
(5 March 2014) 23cm Maksutov-Cassegrain, 258×
石橋 力 (Is) 相模原、神奈川
1 Colour
Image (15 March 2014) 31cm Spec with a SONY HC9 VideoCam
マーク・ジャスティス (MJs) メルボルン、オーストラリア
9 Sets of
RGB Images (3, 7,~ 9, 12, 13, 19, 23*, 28*, 30* March 2014)
25cm Dall-Kirkham and 30cm Spec* with a DMK21AU618
マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ
3 Sets of
RGB + 5 Colour + 1 R + 1 IR Images (14, 18, 21, 23, 28, 31 March 2014)
28cm
SCT with a DMK21AU618
ジョン・カザナス (JKz) メルボルン、オーストラリア
2 Sets of
RGB + 3 Colour Images (13, 18, 19, 25, 27 March 2014) 32cm Spec with an ASI
120MM
近内 令一 (Kn) 石川町、福島県
4 Colour
Drawings (3, 23, 27 March 2014) 30cm SCT, 600×
ピート・ローレンス (PLw) ウエストサセックス、英国
1 Colour
Image (7 March 2014) 36cm SCT with a Flea 3
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
5 Colour
Images (1, 16, 23, 25 March 2014)
25cm SCT with a ToUcam Pro II
南 政 次 (Mn) 福井
3 Drawings
(31 March 2014) 480×20cm ED
refractor 福井市自然史博物館天文台
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
12 Sets of RGB
Images (2, 5, 7, 8, 10, 13, 17, 20,
25, 29 March 2014) 31cm SCT with a
Flea 3
森田 行雄 (Mo) 廿日市、広島県
15 Sets of RGB +
15 LRGB Colour + 15 L Images (10,
11, 15, 16, 22, 23, 27 March 2014)
36cm SCT with a
Flea 3
ドナルド・パーカー (DPk) フロリダ、アメリカ合衆国
4 Sets of
RGB Images (4, 11, 17 March 2014)
36cm SCT @f/24 with an ASI 120MM
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、英国
1 Set of
Images (19 March 2014)
(36cm SCT with a SKYnyx 2-0M)
クリストフ・ペリエ (CPl) ナント、フランス
3 Sets of
RGB + 6 Colour + 2 R + 6 B + 3 IR Images (2, 6, 9*, 10, 13, 20 March 2014)
25cm Spec, 106cm Cassegrain* (T1M/Pic du Midi Obs) with a PLA-Mx
ジャン=ジャック・プーポー (JPp) エソンヌ、フランス
5 Sets of
RGB + 2 Colour + 1 B + 6 IR Images (5,~7, 10, 13, 17, 18 March 2014)
35cm Cassegrain @f/23 with a Basler acA640-100gm
ステファーノ・クアレジマ (SQr) イタリー
1 Set of RGB Images (21 March
2014)
クリス・スメト (KSm) ベルギー
2 Drawings
(6, 26 March 2014) 30cm Spec, 250× 300×
ジョン・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ RGB Colou
1 Set of RGB
+ 1 Colour Images (6, 13 March 2014)
28cm SCT @f/20 with a QHYL5-II
チャールズ・トリアーナ (CTr) ボゴタ、コロンビア
2 Colour
Images (30 March 2014) 25cm
SCT @f/28 with an ASI 120MM
モーリス・ヴァリムベルティ (MVl) メルボルン、オーストラリア
25 Sets of RGB +
20 IR Images (3, 8, 12, 19, 23, 25, 28 March 2014)
36cm SCT @f/24 with an ASI 120MM
アンドレア・ヴァノーニ (AVn) モッツェカーネ、イタリー
7 IR
Images (9, ~ 12, 15, 17, 21 March 2014) 31cm SCT with an ASI 120MM
アンソニー・ウエズレイ (AWs) ニューサウスウエールズ、オーストラリア
5 Colour
Images (2, 6, 9 March 2014)
(37cm Spec) with a Point Gray Grasshopper3
フレッディ・ウイッレムズ (FWl) フロリダ、アメリカ合衆国
1 Set of
RGB + 2 IR Images (23 March 2014)
36cm SCT with a DMK21AU618.AS
♂・・・・・・ 追加報告も以下のようにあった。
レオ・アールツ (LAt) ベルギー
1 Colour +
1 R Images (31 January 2014)
36cm SCT, with a DMK21AU618
デイヴィッド・アーディッチ (DAr) ミドルサセックス、英国
1 Colour
Image (21 February 2014) 36cm SCT
with a Flea 3
♂・・・・・・ 今回は日付順にレヴューする。從って、名前については初出を除き省略コードを使う。上の名簿参照。観測報告が増えてレポートが長文になっているので、旬日毎に区切ってファイルを作る。以下のリンクから進んでほしい。
この期間には視直径が大きくなり、細部が捉えられるようになっている。観測された現象は、融解が進んだ北極域の様子。ヘッラスの振る舞い、午後の山岳雲の発達、 朝方の高山の暗点に見える様子、アスクラエウス雲、赤道帯霧の様子、夕縁・朝方のシュルティス・マイヨル、エリュシウム・モンスに懸かる雲とアエテリア暗斑との間の地肌の色の違い、淡化しているマレ・アキダリウム、暗色模様の詳細などである。
○ 3月 1日から 9日まで (λ=096°Ls〜λ=100°Ls)
オ−ストラリア・日本からは、廻ってゆくヘッラスの明るさ、エリュシウム域の午後から夕方の様子、北極域のオリュムピア。
アメリカ側から、午後のタルシス山岳雲、 北極域のオリュムピア。
ヨーロッパ側から、朝のタルシス山岳域、アスクラエウス雲、マレ・アキダリウム付近の詳細。
○ 3月10日から19日まで (λ=100°Ls〜λ=105°Ls)
オ−ストラリア・日本からは、朝縁の青いシュルティス・マイヨル、エリュシウム域、オリュムプス・モンスの午後の山岳雲の発達、北極域のオリュムピア、期間末には午後のタルシス山岳雲。
アメリカ側から、朝のタルシス山岳域、マレ・アキダリウム付近の詳細、南縁のアルギュレ付近、北極冠内カスマ・ボレアレの検出など。
ヨーロッパ側から、夕縁のシュルティス・マイヨル、内部の見えてきたヘッラスの様子、マレ・アキダリウム付近の詳細、エリュシウム域の夕方の様子。
○ 3月20日から31日まで (λ=105°Ls〜λ=110°Ls)
オ−ストラリア・日本からは、朝のタルシス山岳域の山頂の暗点、アスクラエウス雲、マレ・アキダリウム付近。期間末には夕縁にシュルティス・マイヨルがみえるところとなった。
アメリカ側から、夕縁のシュルティス・マイヨルとヘッラスから、正面にヘッラスが入ってくる図柄、期間末にはヘッラスは朝方まで廻っている。エリュシウム域の様子、北極域のオリュムピアなど。
ヨーロッパ側から、ヘッラスの内部の様子、シュルティス・マイヨル、エリュシウム域、午後のオリュムプス・モンスとタルシス山岳雲。期間末にはオリュムプス・モンスが正面。
♂・・・・・・参考:
極小期の北極冠のHSTの画像は 1996/97
Mars Sketch (4) CMO #202 (25 April 1998)を見られたい。
他にも、ミニマル状態の北極冠について、古いCMOのWeb記事がある。参考になると思う。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmo/183/cmo183.html CMO #183 (25 Jan 1997)號
タルシス三山とオリュムプス・モンスの朝夕雲 に関しては、
1996/97
Mars Sketch (3) CMO #201 (25
March 1998) を見られたい。
(村上 昌己/南 政 次)