2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#06

2014年二月の火星観測 (λ=084°Ls~096°Ls)

CMO #420 (25 March 2014)


 

・・・・・今回の観測レポートは今期6回目となり、2014年二月中の観測を取り上げる。二月には「おとめ座」のスピカの北を三月はじめの「留」に向けて順行していて、期間末には視赤緯は08°Sに下がった。この為、南半球に属する観測たちが、とくにメルボルンでの観測者が増え、観測に活況を齎している。一方日本では寒気の入ることが多く、関東でもなかなか観測機会に恵まれない。特に北陸は今冬は厳しいようで、福井での活躍の報は入って居ない。季節はλ=084°Lsから096°Lsとすすみ、北半球の夏至(λ=090°Ls)15Febにすぎて、オリュムプス・モンスの午後の山岳雲の活動がピークとなる時期となっていた。視直径はδ=8.9"から10”を越えて、期間末には11.6"と大きくなっている。位相角はι=34°から26°と変化して、夕方側の欠けが目立たなくなりつつある。傾きはφ=21°Nから19°N台とまだ北に傾いていて融解の進む北極冠が捉えられていた。

 

・・・・・この期間に拝受した報告と報告者は次の通りである。

    レオ・アールツ (LAt) ベルギー

        4 Colour + 1 R Images (3, 24* February 2014)   36cm SCT, 25cm SCT* with a DMK21AU618

    阿久津 富夫 (Ak)  セブ・フィリッピン

        2 Sets of RGB + 2 IR Images (24 February 2014)   36cm SCT @f/24 with a DMK21AU618AS

    スティーファン・ブダ (SBd)  メルボルン、オーストラリア

        7 Sets of RGB Images (4, 9, 10, 17, 23, 27, 28 February 2014) 40cm Dall-Kirkham with a DMK21AU04

    ブラスチラフ・チュルチック (BCr)  メルボルン、オーストラリア

        1 Set of RGB Images (24 February 2014)  28cm SCT with a QHY5L-II

    サデグ・ゴミザデ (SGh) .ルーデヘン、イラン

        2 Colour Images (24, 25 February 2014)    (28cm SCT with a DMK21AU04.AS)

    ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国

        3 Sets of RGB + 4 IR Images (12, 23, 27 February 2014) 36cm SCT with an ASI 120MM

    カーロス・ヘルナンデス (CHr) フロリダ、アメリカ合衆国  

        3 Sets of Colour Drawings (14, 19, 22 February 2014) 23cm Maksutov-Cassegrain, 258×

    マーク・ジャスティス (MJs)  メルボルン、オーストラリア

        8 Colour Images (4, 5, 9, 11, 20, 23, 24, 27 February 2014)  25cm Dall-Kirkham with a DMK21AU618

    ジョン・カザナス (MKz)  メルボルン、オーストラリア

        2 Sets of RGB + 4 Colour + 1 R + 3 IR Images (1, 5, 6, 10, 22, ~ 24 February 2014)

 32cm SCT with an ASI 120MM 

    近内 令一 (Kn) 石川町、福島県

        2 Colour Drawings (12, 23 February 2014) 30cm SCT, 500×

    フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国

      1 Colour Image (8 February 2014)   25cm SCT with a ToUcam Pro II 

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

       3 Sets of LRGB + 4 Sets of RGB Images  (5, 8, 12, 15, 20, 21, 27 February 2014) 31cm SCT with a Flea3

    森田 行雄 (Mo)  廿日市、広島県

       8 Sets of RGB + 8 LRGB Colour + 8 L Images  (10, 16, 20,~22, 24, 25, 27 February 2014) 36cm SCT with a Flea3

    ドナルド・パーカー (DPk) フロリダ、アメリカ合衆国

       4 Sets of RGB Images (8, 12, 18, 23* February 2014)   36cm SCT @f/23, 41cm Spec* @f/26 with an ASI 120MM

    クリス・スメト(KSm) ベルギー

        1 Drawing (3 February 2014) 30cm spec, 167×

    ジョン・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ

        1 Set of RGB Images (3 February 2014)   28cm SCT @f/25 with a QHYL5II

    モーリス・ヴァリムベルティ(MVl) メルボルン、オーストラリア

       13 Sets of RGB + 2 IR Images (1, 4, 7, 9, 23, 27, 28 February 2014)  36cm SCT @f/24 with an ASI 120MM

    アンソニー・ウエズレイ(AWs) ニューサウスウエールズ、オーストラリア

        3 Colour + 4 IR Images (6, ~8, 21, 22, 24 February 2014)   (37cm spec) with a Point Gray Grasshopper3

 

  

・・・・・ 前回と同じようなかたちで各観測に短い論評を附ける

 

 M VALIMBERTI (MVl): 彼は先ず、1 Feb (λ=084°Ls) at ω=197°Wに於いて撮像し、moderateRVB像を獲た。シーイングは然程好くない様だが、南半球のマレ・キムメリウムの北岸から發する蟻ンコの足が出ている。エリュシウムは未だ朝方だが、RGB共に明るくRGBでは白みを帯びている。アエテリアの暗斑は濃い。北極冠は円く明るいが小さくなっている。4 Feb (λ=085°Ls) at ω=181°WMVl氏の像は、暗めの像だが、新しく夕方にオリュムプス・モンスの雲が殘っているのが目立つ。エリュシウムの明るさはケブレニアの方に流れている。プロポンティス I は見えている。アエテリアの暗斑も。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140204/MVl04Feb14.jpg

7 Feb (λ=087°Ls)にはω=162°Wω=173°Wで撮った。AWs(ω=159°W)の後である。オリュムプス・モンスの雲は立体感を示し、陰が出ているようである。タルシス山系の白雲が夕縁の上にある。朝縁の處理も好く、エリュシウムの全体像が出ている。特にω=162°WR像が好い。プレグラ邊りの詳細が出ていると思う。北極冠域ではω=162°Wω=173°W共に、リマ・ボレアレスが少し見え、オリュムピアも捉えられているようである。オリュムプス・モンスの雲はGで落ち着いて綺麗である。マレ・キムメリウムは未だ少し角度が足りないかと思う。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140207/MVl07Feb14.jpg

MVl氏は9 Feb (λ=088°Ls )には17:21~18:04 GMT (ω=135°W, 143°W)二度のセッションをこなした。両者とも雲を被ったオリュムプス・モンスが鎮座している。その先夕端近くには凸凹に雲被ったタルシス山系が複雜に鎮座している。北極冠は平べったいが、φ=20°Nで、右側にオリュンピアが付随しているようで、リマ・ボレアリスも少し見える。一時より靄が落ち着いたか。リマは両者ともRGで明確で、その外に朝方のオリュムピアが見えている。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140209/MVl09Feb14.jpg

 23 Feb (λ=094°Ls)にはω=350°W003°Wの範囲で沢山の像を得ている。合成像としてはω=359°Wであろう。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140223/MVl23Feb14.jpg

前日22Febに同じ角度のIR像をAWs氏が得ている。MVl氏はIR像に依らないが、ほぼ同じディテールを得ている。ブランガエナの處や、オキシア・パルスのニリアクス・ラクス(マレ・アキダリウム)への連絡路、マルガリティフェル・シヌスからアウロラエ・シヌスまでの間の枝葉などRで細かく得ている。ゆったりした像で、強調はない。北極冠の近くではヒュッペルボレウス・ラクスの詳細が判る。合成全体はシャープさに欠けるが、全体マイルドに仕上げられている。シュルティス・マイヨル北の縁に沿う夕霧はB光像のお蔭で描冩されている。問題は北極冠で、北極冠が円の中に入っていることは確かだが、MVl氏の画像では北極冠が入り過ぎに見える。然し、これは寧ろ正確で、MROMARCIの動画に依れば、北極冠の(この角度からの)北側の部分は黄砂に埋まっていて、南側に綺麗な部分がある爲とわかる。http://www.msss.com/msss_images/2014/02/26/ を見られたい(2/26はリリースの日付)。この北極冠の明るい部分は22FebAWs氏のIR(後述)と比較されたい。北極冠は南半分が出ているが、依然北半分は綺麗に出ず、北極冠が上にずれたように見える。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140223/MVl23Feb14.jpg

27 Feb (λ=096°Ls)ω=313°Wで撮像。シーイングは好くないようだが、IRR像ではアリュンの爪など出している。ヘッラスも北極冠もぼんやりである。28 Feb (λ=096°Ls)ω=295°Wで撮る。像は些しザラついて綺麗ではないが、可成りまだ内側のシュルティス・マイヨルの霧は蒼っぽくみえる。ただし、ヘッラスなどはもっと密度が高い筈という気がする。

 

J KAZANAS (JKz): もメルボルンの觀測者で1 Feb (λ=084°Ls)ω=215°Wの畫像は同日のMVl氏の上の観測時より74分の遅れた觀測で、画面はよく似ており、エリュシウムやマレ・キムメリウムは同じように見える。だがJKz氏像では多分水平高度の違いで、ヘスペリアなどは若干、よりクリアに出ているし、経度の所爲か、後者ではノドゥス・アルキュオニウスが明確である。北極冠も小さく明確で、南側にオリュムピア(の残滓)がみえている。

5 Feb (λ=086°Ls)にはMJs氏に続きメルボルンでの画像をω=180°Wで撮る。MJs氏より6分後。オリュムプス・モンスの綿毛玉は可成り縁に來ているが健在。北極冠・オリュムピアの南には矢張り靄。エリュシウムもやや白く、Bの描冩は好い。Rではマレ・キムメリウムの北岸がやや描冩されている。朝縁には線状ゴーストは無く、處理が好い。

6 Feb (λ=086°Ls)にはω=177°Wで、AWs氏の後にIR685で撮った。オリュムプス・モンスなどは面影もない。アエテリア暗斑は出ているが、前日とは違ってゴースト線が出てしまう。北極冠南のリマ・ボレアリスに繋がる暗帯は出ているかも知れない。JKz氏もMJs氏も三月に入ってオリュムピアを顕在化させるので期待されたい。

10 Feb (λ=088°Ls)にはω=134°Wで撮った。オリュムプス・モンスは南中に近いが、白く輝き、その東には少し陰った暗帯が見られ、タルシスの複雑な夕方の白雲地帯が出ている。同日のY MORITA (Mo)氏の同じωの像と比較できる。北極雲域はMo氏の場合よりシーイングがシャープらしく、オリュムピアが朝方に明白である。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140210/JKz10Feb14.jpg

  22 Feb (λ=093°Ls)にはω=015°WR像一像。シヌス・メリディアニ邊りの詳細、ヒュペルボレウス・ラクス邊りは申し分ないが、朝縁の處理が不好。23 Feb (λ=094°Ls)にはω=354°Wの一像:シヌス・メリディアニの邊りはブランガエナも含めて詳細を出しているし、マレ・アキダリウムも必要な描冩は入って居るが、全体に像に美しさがない。明るい朝縁の様子が判然としない。なお、シュルティス・マイヨルの沈んだ邊りに夕霧が出ている。ヒュペルボレウス・ラクスは顕著である。δ11"となった。

24 Feb (λ=094°Ls)にはω=333°Wで観測。シヌス・メリディアニの二つ爪が綺麗に見えている。マレ・アキダリウムは北西部に見えているが、殆ど朝霧の下であろう。シュルティス・マイヨルは夕方であるが、矢張り北部は薄雲の下である。ω=349°Wではシュルティス・マイヨルは殆ど沈み、その後方の霧が殘っている。ヘッラスはω=333°Wでは夕方端に白く見えているが、ω=349°Wではだいぶ隠れた。前日のω=354°Wでは靄は見えない。これらは対になるが、40分間隔の方がいい。なお、JKz氏の角度では北極冠がひどく内部に入ったように見える。

 

 L AERTS (LAt): 3Feb (λ=085°Ls)の觀測は二時間45分ほど掛かって気儘に撮っていて、並びの意味はよく分からないが、RGBω=352°Wω=354°Wω=004°Wω=010°Wと並んでいる。03:48GMTに撮ったω=352°Wが最も優れ、色合いが好く出ていると思う。シヌス・メリディアニは形も好く、又濃度もそれらしく出ており、オクシア・パルスから南への描冩も好い。近年眼に着くイオス延長のヒュダスピス・シヌスも意外と濃く出ている。マレ・アキダリウムは大きく朝方を支配するが、全体未だ朝方の靄の爲にやや淡い。分解写真がないから、よく分からないが、マレ・アキダリウムのずっと北東に靄らしいものが「二段重ね」で陣取っている。黄塵の溜まりであろうか、先月から出ている靄状の気体とも關係してオリュムピアの後方に繋がって殘っているのかもしれない。随伴のω=351°WIR像にもこれは見られるが、Bでは如何。北極冠は小さく円く、ヒュペルボレウス・ラクスが北極冠に接して濃い。アルギュレの邊りに白靄が出ているか?

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140203/LAt03Feb14.jpg

  LAt氏は24 Feb (λ=094°Ls)にはω=168°Wで観測した。夕方の山岳地帯は白雲を被っており、エリュシウムの後方も朝霧で白い。ケルベルスからプレグラを經てプロポンティIまでのラインは鮮やかに出ている。プロポンティIは茶系統色である。北極冠は小さく輝かない。

 

 J SUSSENBACH (JSb): 3 Feb (λ=085°Ls)JSb氏の像は穏やかなRGB分解像の合成である。ω=355°W で前項のLAt氏の像と似た構図で比較が出來る。シヌス・メリディアニは不十分だが、オクシア・パルスから南の描冩は好い。北極冠の描冩も好い。ただ、マレ・アキダリウムの北東の「二段重ね」は白くはなく、Rには見られるが、GB光に見られない。黄塵であるということであろう。

 

 M JUSTICE (MJs): 矢張りメルボルンのMJs氏の觀測は4 Feb (λ=085°Ls) at ω=190°W はカラー一枚物。夕端にオリュムプス・モンスの山岳雲の隠れるところ。エリュシウム邊りは内部の最輝部が可成り小さいこと、プロポンティス I からケルベルスに掛けての描写が緩やかで好い感じ。但し、朝縁近くにはゴーストらしい長い線が出ているのは困る。マレ・キムメリウムの描冩は一寸不足。

5 Feb (λ=086°Ls) にはω=178°Wで撮像。オリュムプス・モンスは夕端から少し中に入って、眼視なら「綿毛玉」のように見えると思う。逆にエリュシウムの邊りは前日ほどディテールが出ていない。北極冠の南は矢張り靄っぽい。しかし、北極冠の右側にはオリュムピアが見え始めているようである。

9 Feb (λ=088°Ls)にはMJs氏がω=142°Wでカラー像一片を提出した。綿毛玉(コットン・ボール)状のオリュムプス・モンスがきれいに出ている。更に夕端方面では先行するタルシス山系が雲を被って複雜で、このトポロジーは課題である。オリュムピアは朝方に北極冠と分離している。北極冠に接して蒼黒い取り巻きか亀裂があるようである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140209/MJs09Feb14.jpg

  11 Feb (λ=089°Ls)にはω=133°Wで、前日のJKz氏やMo氏の觀測と競合し、綿毛のオリュムプス・モンスや夕方の山岳雲などを描写している。エリュシウムは未だ朝縁だが、プレグラとプロポンティス I を濃く描写している。北極冠も朝方でオリュムピアと分裂している。

20 Feb (λ=092°Ls)にはω=050°Wで撮像。ソリス・ラクスが南の朝方に見え、その更に南端には白雲があるらしく見える。ティトニウス・ラクス邊りの様子は好く出ていて、オピルなども明確だが地肌の様。夕方ではオクシア・パルスが青味を帯びるが、此は白霧があるからであろう。北極冠は明白で、ヒュペルボレウス・ラクスが濃い。氣になるのは朝端の雲であるが、タルシス山が暗點として出ているようにも見えるが、ゴーストの筋が通っているので、判別が難しい。

23 Feb (λ=094°Ls)にはω=010°Wで撮像。合成像だけだが、ターミネータ近くの夕霧は描冩されている。同日のMVl氏の像と同じくらい好く出ているが、矢張りここでも北極冠の北側が北へ寄りすぎた様な錯覚を与える。南端に白雲ないし氷雪があるらしいのはMVl氏より印象が強い。赤道付近の朝方縁の明るさはよく分からない。

24 Feb (λ=094°Ls)ではω=006°Wで撮っている(單像)。ブランガエナなど出ているが、暈け気味で、シュルティス・マイヨルは沈み、残った白雲が夕端に見える。クリュセの南側の詳細も出ている。北極冠は北側の描写が難しい。アルギュレは雲が被っているか。

27 Feb (λ=096°Ls)ω=339°Wで撮像。何か汚れたような感じのする影像だが、北極冠 (の南部?) は明るいが白くない。SBd氏のこの日の觀測を參照。

 

 S BUDA (SBd): 矢張り、4 Feb (λ=085°Ls)でのメルボルンからのMJs氏に続く ω=204°Wでの觀測で最早オリュムプス・モンスは沈み、夕縁に白霧が漂っている。マレ・キムメリウムの描冩は、Rでは完璧に近く、蟻ンコの足を彷彿とさせる。エリュシウムの中はエリュシウム・モンスの雲が局在化しているのが感じられる(MJs氏の場合も然り)。特にBに著しく明白。オリュムピアのあたりは靄を被っている様子。北極冠の南にリマ・ボレアリスを挾んでやや砂塗れのオリュムピアが鎮座するようだ。プロポンティス I やアエテリアの暗斑、ノドュス・アルキュオウスの描冩も成功している。南端はアウソニア邊りと思うが、色はワイン色で少し詳細があるようである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140204/SBd04Feb14.jpg

9 Feb (λ=088°Ls)にはω=164°Wで撮像した。見事な像のセットである。RGBでは綿毛のオリュムプス・モンスの雲は一様な広がりではない。先行する左端にはタルシス系の雪雲であろう。朝方のエリュシウムは最早著しい大気活動は見えず、中央もオフ・ホワイト色である。薄べったい北極冠からは南西に直線上のダストが流れているのが注目される。オリュムピアも関わっていると思う。時間的に近隣の観測が望ましい。暗色模様ではプレグラのあたりが詳しい。この映像群は重要でNoteで採り上げる必要があろう。

   http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140209/SBd09Feb14.jpg

10 Feb (λ=088°Ls)には、SBd氏はJKz氏やMo氏より少し後だがω=154°Wで良像を得た。前日の黄塵の筋が些し変化して出ているのが判る。実はこの観測の40分後にもう一度観測すれば、前日と同じ角度の像が得られたのに、惜しまれるところである。一方、綿毛のオリュムプス・モンスはよく目立ち、JKz氏像やMo氏像と同様夕端の雲中に火口の暗點(特にパウォニス火口)を見せている様に思う。エリュシウムが朝方で可成り強く中に入り、プレグラやプロポンティス I を見せ、良像である。朝方の北極冠は濃いリマ・ボレアリスを挾んでオリュムピアが見えている。(その東端から黄塵の流れが出ている)。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140210/SBd10Feb14.jpg

17 Feb (λ=091°Ls)にはSBd氏が魅力的なω=082°Wの角度で撮った。ソリス・ラクスが大きく夕方にあり、アガトダエモンからティトニウス・ラクスの邊りも描冩され、オピル-カンドルは白雲で明るくなっているように見える。クリュセあたりから來たものか。地肌ではない。尚、タルシス三山が朝方に來て、山の朝方には雲が見られるが、左側には小さな暗部が先行する。これらは1997年に観測したものの再現で、もう些し季節が進むとアスクラエウス雲が観測され、タルシス三山などは暗點として検出されるだろう。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140217/SBd17Feb14.jpg

SBd氏は23 Feb (λ=094°Ls)ω=020°Wで撮像した。この日は澳大利亞勢が揃い踏みであった。SBd氏も微細な暗色模様を齎しながら、強調画像に奔らず、マイルドな影像を拵えている。ブランガエナやマルガリティフェル・シヌス以西の幾つかの微少暗色模様の北側への飛び出しや、マレ・アキダリウム内外の微細構造、ニロケラスの二股やマレ・アキダリウム西北部の三角構造、北極冠に接する濃いヒュペルボレウス・ラクスとの關係など過不足無く表現して居ると思う。良像である。縁も南端ではアルギュレかも知れないところや、朝縁の明るい白さなど納得のいく描冩である。唯一些し気懸かりなのは、北極冠の邊りで、北極冠本体の北側に惚けがある。此は23FebMVl氏の處で述べたことであろう。こうしたことは手持ちのデータでは解決できないので、似たような結果は(可成り多いが)纏めて後述し、追っていずれ過去を振り返ることとする。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140223/SBd23Feb14.jpg

27 Feb (λ=096°Ls)ω=347°Wで撮像。微細構造は然程追求されていないのが好くて、朝夕に白霧が淡く掛かった様子はリアルな感じである。その中からブランガエナやオクシア・パルスが垣間見られる。北極冠は明るい南部が冩っているのだと思う。28 Feb (λ=096°Ls)ω=346°Wで、前日と同じ角度だが、やや締まりが好くて、ヘッラス(本体は沈んでいる)から西へ出た霧が見えるほか、夕方のシュルティス・マイヨルを覆うやや蒼い夕霧も格好いい。北極冠は些し北側も出ているかも知れない(北側は多分被黄砂)

 

 E MORALES (EMr):  EMr氏は5 Feb (λ=086°Ls)ω=064°Wでの觀測が今月最初で、ソリス・ラクスが出ている。但し、朝靄を被っているように見える。マレ・アキダリウムも夕方に擴がり、ニロケラスからルナエ・ラクスまで瞥見でき、オピール・カンドルの明部も判るが、赤道帶霧はBなどで描冩されていない。

  8 Feb (λ=087°Ls)にはω=038°Wで描冩、秀逸なDPk氏の像の一時間半ぐらいの後の撮像で。シヌス・メリディアニが沈むところで、暗色模様が少しゆったりと見えているが、マルガリティフェル・シヌスの南端が明確で、ここからクリュセを越えて赤道帶霧が朝端にまで擴がっている。アガトダエモンが濃いが霧の帶はここも越えて朝縁に達する。マレ・アキダリウムの北東の三角形暗部は出ていて、北極冠までイアクサルテスがヒュペルボレウス・ラクスまで奔っていているようである。

12 Feb (λ=089°Ls)にはω=345°Wで撮っている。シヌス・メリディアニやマルガリティフェル・シヌス、マレ・アキダリウムなど好く出ている。シュルティス・マイヨルは沈んだ様だが、白霧の残滓がアエリアに見える。北極冠は暈けているが、北半球朝方の端は明るく、但しoff-whitishである。アラムの邊りもそうだが、砂漠地帯の明色は微妙な再現が望まれる。

北半球の夏至の15 Feb (λ=090°Ls)にはω=324°Wで良像を得た。シヌス・サバエウスなど詳細はないが、シュルティス・マイヨルの北半分は夕の白霧に覆われ、若干蒼い。朝方のクリュセは相當強く白霧に覆われ輝いている。ヘッラスも夕端に少し見える。Bの赤道帶霧がもう少し強調されれば、RGBでも見えたであろう。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140215/EMr15Feb14.jpg

20 Feb (λ=092°Ls)にはω=244°Wで撮像。ヘッラスが朝縁で白く明るい。まだι=30°であるから、早朝とは言えない。エリュシウムは夕方に白い小さい塊。なお、ヘッラスの南の南アウソニアは案外ワインカラーで赤味が目立つ。

21 Feb (λ=093°Ls)にはω=269°Wでシュルティス・マイヨルがやや紫色で中央朝方に見え、ヘッラスが白く大きい。内部構造もあるようである。エリュシウムの白雲が沈むところで、Bでも出ている。シュルティス・マイヨルも通常通りで、ノドゥス・アルキュオニウスも見えるが、DPk氏が18 Feb (λ=091°Ls) at ω=270°W(後述)で見せたような構造を見せない。

27 Feb (λ=095°Ls)ω=182°Wで。オリュムプス・モンスの綿毛の白さは抜群。エリュシウムは朝方に出ているが、内部に雲は無い。北極冠は北極に収まっていて、リマ・ボレアリスがその外側を占め、更にその南にオリュムピアが暈けて出ている。プロポンティス I とアエテリアの暗斑は濃い。

 

 A WESLEY (AWs):  6 Feb (λ=086°Ls)にはω=171°Wのカラー単独像。オリュムプス・モンスは綿毛玉というよりも立体感のある雲。エリュシウムは更に朝方へ行ったが、内部は明るく見え、ケルベルス-プレグラも茶系統色で出ている。プロポンティス I も好く見え、アエテリアの暗斑も斑点状に見えている。暗色模様では茶色のマレ・キムメリウムが好い描冩。北極冠の周りは矢張り霞んで、オリュムピアが明白とは言えない。

7 Feb (λ=087°Ls)にはω=159°Wで撮像。カラー一枚物で、夕端にはタルシス山系が白雲を被って出てきたようである。オリュムプス・モンスは陰が出ているが如し。朝方のエリュシウムの邊りは迫力がないが、ケルベルス-プレグラやプロポンティス I などは區別が着く。北極冠の周りやマレ・キムメリウムの西部などディテールがあるように思うが、矢張り今ひとつ迫力がない。

8 Feb (λ=087°Ls)にはω=142°Wで撮像:RGBではオリュムプス・モンスが綿毛状タルシスは夕端に沿って幅廣く擴がっている。オリュムプス・モンスの白雲はIRでも捉えられている。

21 Feb (λ=093°Ls)ω=009°WIR一枚画像。シヌス・サバエウスもマレ・アキダリウムも詳細に富んでいるが、白霧などの配置は判らない。アルギュレも判らない。詳細ではブランガエナやイアクサルテス、ヒュペルボレウス・ラクスなどは明確である。

22 Feb (λ=093°Ls)ω=359°WIR像。IR像としては申し分ない。シヌス・メリディアニやその周邊、マルガリティフェル・シヌス邊り、マレ・アキダリウムの詳細などどれもOKである。マレ・アキダリウム西北端の三角暗部も明確。ヒュペルボレウス・ラクスも内部構造を見せて、四角く良好。しかし、白雲の動きは全く察知できない。

24 Feb (λ=094°Ls)にはω=347°WIR單像。詳細が出ているように見えるが、北極冠などもっとキッカリ出せれば價値があろう。

 

F MELILLO (FMl): 今期30Nov2013以來、二番目の觀測は8 Feb (λ=087°Ls)ω=009°Wであった。マレ・アキダリウムが大きく中央朝寄りに出ている。北極冠は案外大きく白く冩っている。

 

 D PARKER (DPk): 時間的にはFMl氏の後で、DPk氏は8 Feb (λ=087°Ls)ω=015°Wで撮った。δ=9.5"とは思えない秀逸な像で、これはCMO/ISMOのファサードに常時見られる様に受領直後から擧げてある。特筆し出すとキリが無いと思うが、目を引くのは暗色模様がマイルドに描冩されているところである。DPk氏は寧ろ強調画像で知られた觀測者であったが、ここに來てニュアンスを出すように心がけている様に見える。その点で例えばマレ・アキダリウム内部の様子が通常活写されるよりもよりマイルドだがリアルな表現になっているように思える。アラムが明るく、ブランガエナ飛び出しを際だたせている他に、共にマルガリティフェル・シヌスの北部を跨いでクリュセ南部に幾つかの小さい明部を見せている。オクススとマレ・アキダリウムに囲まれている領域はやや色彩が変わっているので、高低差など調べると好いだろう。マレ・アキダリウムの内部は今後、別様に捉える必要があろう。特にマレ・アキダリウムの北西部の二段構えの黄塵的明部は気象と關係があろうから注意事項である。夕方のアエリアから朝方のオピル-カンドルを越えてタルシスまで赤道帶霧に覆われている事は明らかである。λ=087°Lsでは南極大氣の影響が未だ見られないが、この時期のこれまでの最高傑作である。

    http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140208/DPk08Feb14.jpg

12 Feb (λ=089°Ls)にはω=325°Wで撮った。シヌス・サバエウスとシヌス・メリディアニが中央にあるが両方とも見事な描冩で、アリュンの爪は東側が濃い。この角度のシヌス・サバエウスはたいへん魅力がある。シュルティス・マイヨル自身は夕方で平凡であるが、アエリアには白い霧だまりが出來ている。シュルティス・マイヨルを越えて夕方の白霧がアエリアまで達していて、シュルティス・マイヨルの上では白が蒼に化ける。オクススがジグザグに見え、マレ・アキダリウムとの間はgroung-litである。シュルティス・マイヨルもマレ・アキダリウムも然程起伏の富んだ内部を見せないが、白いヘッラスは夕端に少し見える。マレ・アキダリウムからはイアクサルテスが北極冠に奔る。マレ・アキダリウムの東北端に接する部分には矢張り前回と同じく明部が入って居るのが目立つ。

   DPk氏は18 Feb (λ=091°Ls)にはω=270°Wの興味深い像を得た。早々とヘッラスが白くなっている風景が正面である。ヘッラスは南極冠の一部を担うようになる(非対称)。この図で面白いのは、シュルティス・マイヨルの左側、つまり高度の無い地面に靄が固まっていることで、次第にアエリアの方に抜けるのだが、低空の白雲の動きが出ていて、興味深い。エリュシウムの綿毛玉は夕端に追いつめられている。ノドゥス・アルキュオニウスも詳細な形を見せ(HST)、ウトピアの描冩も面白い。北極冠近くではリマ・ボレアリスが出ていて、オリュムピアは暈けている。シュルティス・マイヨルの北端の描冩も見事で、昔ドルフュス氏が描いた二重運河(もはや地溝的なものであるが)の端くれが見えている。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140218/DPk18Feb14.jpg

23 Feb (λ=094°Ls)にはω=208°Wで撮像。暗色模様には鮮鋭度が無く、マレ・キムメリウムなどの像は不満だが、エリュシウム内の輝部は明快。エリュシウム・モンスの周りだけである。アエテリアの暗斑は明瞭。ウトピアの詳細は不明だが、北極冠の南にオリュムピアが見えている。

 

Y MORITA (Mo):  Mo氏はseeingに苦労しているが、10 Feb (λ=088°Ls)になってω=134°Wで穏やかなセットを得た。オリュムプス・モンスや夕端のタルシスのB像に形好く捉えられている。特に二者の間のB暗部の様子はこの季節特有で、1980年代から特筆されていることである(下記參照)Rでの濃度も好く、LRGB, RGB共にその影響が出ている。Gの様子も好い。北極冠はクリアではないが、朝方にぼんやりとオリュムピアがあるようだ。像は獲がたい角度を示している。同日のJKz氏の像と同じ角度である。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140210/Mo10Feb14.jpg

16 Feb (λ=091°Ls)ω=064°Wでは些しシャッキリしないが、ソリス・ラクスやマレ・アキダリウム-ニロケラスの存在とオピル-カンドルの明部は確認出來る。北極冠は小さくなった。20 Feb (λ=092°Ls)にはω=014°Wで撮ったが、シーイングが悪く、RLでも大雑把にしか冩っていない。Bでは辛うじて赤道帶霧が検出できる程度。

21 Feb (λ=093°Ls)ω=014°Wの像は前日に比べて格段に向上した。シヌス・メリディアニからアウロラエ・シヌスまでは好く出ていると思う。エオスからクリュセに突き出ている暗色模様は固定して來ているようだ。マレ・アキダリウムの内部、外郭の描冩も好い。ヒュペルボレウス・ラクスも濃く位置好く捉えている。北極冠の輪郭は未だはっきりしない。ニロケラスの二股はRで好く出ている。デウテロニルスとマレ・アキダリウムの間はRLで際だって明るいが、合成像ではやや暈ける。色合いの問題か。なお、B像では赤道帶霧が出ていると思うが、合成像では不明になる。Bでの工夫がもう一つ必要かと思う。またブランガエナはRで好く見えるが、RGBでは暈ける。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140221/Mo21Feb14.jpg

22 Feb (λ=093°Ls)ω=009°Wはまたシーイングの所爲か、些し内容が下がる。シヌス・サバエウスも不好で、ただマルガリティフェル・シヌス邊りとの關係は好い位置にある。ヒュペルボレウス・ラクスは明確である。Bの赤道帶霧の描写が弱く、合成像に反映されない。24 Feb (λ=094°Ls)にはω=344°Wで撮像した。シーイングは冴えないようだが、シュルティス・マイヨルが残り、その東側から発した雲の帶がRGBでは相當長く内部に入って居る。ヘッラスはもう見えない。 25 Feb (λ=095°Ls)にはω=325°Wで撮像。全体出來は悪いが、夕方のシュルティス・マイヨルを赤道帶霧が過ぎって朝方に続いているのは判る。他にヘッラスは夕端で明るい。27 Feb (λ=096°Ls)ω=303°Wで夕端のヘッラスが明るい。Mo氏の場合、火星が未だ低いのではあるまいか。

 

 P GORCZYNSKI (PGc)は一月には観測はなく、12 Feb (λ=089°Ls)DPk氏より約一時間後に(PGc氏が) ω=341°W(8:47GMT)で撮った。コントラストが好すぎるが、 殆どのものが描冩されている。IR742ω=339°W(8:38GMT)はバランスが良く、シヌス・メリディアニやマレ・アキダリウムが好く出ている。但し、B像には夕端に白霧(赤道帶を貫いて朝方まで來ているか)があって、夕端のシュルティス・マイヨルを少し蒼くし、アエリアでは白霧。この方面からは北極冠は円くみえる。

23 Feb (λ=094°Ls)にはω=231°Wの像、シュルティス・マイヨルが入ってきている。ヘッラスもその南に些し見えている。南アウソニアは砂漠の色。マレ・キムメリウムの蟻ンコの足はおぼろげに出ている(IRでは明確)IRで明確に出ているリマ・ボレアリスはRではよく分からない。從ってRGBでは不明。

27 Feb (λ=095°Ls)にはω=198°Wで撮り、オリュムプス・モンスの綿毛が没するところ。エリュシウムの内部に微細構造、Bによれば白雲もあるらしい。アエテリアの暗斑にも(前回接近に見られた)微細構造、今期初か。δ11.4"

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140227/PGc27Feb14.jpg

                                              

 R KONNAÏ (Kn):  12 Feb (λ=089°Ls) at ω=130°Wでのカラースケッチである。Staedtlerかどうか、たいへん綺麗な色づかいで、 赤味の部分が處どころにexplicitなのはccdより好いのかも知れない。綿毛に見えるほどオリュムプス・モンスは強く描かれないが、夕方のタルシスの白雲はリアルである。

23 Feb (λ=094°Ls)にはω=010°Wでスケッチした。これは同日のMJs氏の角度と同じである。好い角度で、北極冠なども収まりがいい。南端には明部があって、アルギュレ邊りであろうか。マレ・アキダリウムもワインレッドで囲まれているようだ。夕端の白霧も押さえている。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140223/Kn23Feb14.jpg

 

C HERNANDEZ (CHr): ベテランのCHr 14 Feb (λ=090°Ls) ω=308°W にいつものカラースケッチを行った。暗色模様は一定の褐色に近い。ヘッラスの北部まで白い。マレ・アキダリウムは未だ一部しか見えていない。

19 Feb (λ=092°Ls)にはω=258°Wでカラースケッチ。シュルティス・マイヨルからマレ・キムメリウムの方の暗部が主眼で(ヘスペリアが切れている)、夕方ではエリュシウムを大きく描いている。朝方のヘッラスは既に明るい。Wr#38Aでのスケッチではゼピュリア邊りの白雲を夕縁に捉えて居る。朝方南にはヘッラス。エリュシウムの明部は小さい。

22 Feb (λ=093°Ls)にはω=230°Wでスケッチ。シュルティス・マイヨルがはいってくるところ。夕方にはエリュシウム領域が大きい。北極冠の亀裂はオリュムピアがみえるためか。非常に優れたスケッチだと思う。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140222/CHr22Feb14.jpg

 

T AKUTSU (Ak):  24 Feb (λ=094°Ls)ω=010°Wω=026°Wの觀測、今回は不作のAk氏だが、これは此までにない画像で、この条件なら少なくともこの朝40分ごとにティトニウス・ラクスの現れるところを連続して撮れそうなシーイングだったようだ。ω=010°Wの角度は前日MJs氏やKn氏が観測したところで、他人と雖も後日に観測する人はωを揃えることは心掛けるべきである。特に何か事象が起こったときには有効となる。Ak氏の場合、MJs氏と同じく、北極冠北側周邊の描写が判然としない。朝方縁の處理もゴースト、合成色合いも含めてすっきりしない。

  http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/140224/Ak24Feb14.jpg

 

B CURCIC (BCr): テュルティック(BCr)氏はメルボルン、我われにとっては新顔である。 24 Feb (λ=094°Ls)ω=013°Wの撮像で、DPk氏の8 Febの図柄に似ている。C11では可成りの描写力だが、朝方縁の處理は面白くない。從って北極冠の記述も曖昧になる。次回報告の18Marの像は素晴らしいが、なお縁處理は問題である。

 

S GHOMIZADEH (SGh):  24 Feb (λ=094°Ls)ω=071°W。暗色模様がバックに飲まれている。北極冠も見えない。論評不可である。 25 Feb (λ=095°Ls)ω=069°Wで當然似た様な構図だが、處理が強調路線でどうしようもない。

 

・・・・・・参考暗點問題は

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/97Note12j.htm

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/97Note03j.htm

を參照されたい。アスクラエウス雲については

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/97Note16j.htm

を見られたい。

なお、綿毛のような(cotton ball-like)山岳雲については

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmomn0/97Note03j.htm

 など。

 

(村上 昌己/  )  


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