2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#04

2013年十二月の火星観測 (λ=057°Ls~070°Ls)

CMO #418 (25 January 2014)


 

・・・・・今回は2013年十二月中の観測報告から火星の様子を概観する。冬場の視相の悪さもあって、観測数は伸びてこない。惑星撮影家達は夜半前の木星の撮像に傾いているようである。この期間、火星は「おとめ座」を順行して、夜半過ぎに出現して日の出時には南中をするようになった。しかし、十二月末には視赤緯は02°30'Sに下がって、南中高度は50度ほどになってしまった。季節λ057°Lsから070°Lsへ進み。北半球の高地や山岳に水蒸気の影響が見られたり、暖まりつつある赤道帯にも霧の発生する季節になっている。融解の進む北極冠の周囲には融け残った雪片の明るさも分離する頃だが、視直径が不十分で捉えられていない。視直径δはこの期間に5.6"から6.9"に増加したがまだ小さい。位相角ι35°から36°、傾きφ25°N台から23°N台とそれぞれ変化している。

 

・・・・・この期間に拝受した報告と報告者は次の通りである。

 

    スティーファン・ブダ (SBd)  メルボルン、オーストラリア

       1 Colour Image (24 December 2013) 40cm Dall-Kirkham  with a DMK21AU04

 

    サデグ・ゴミザデ (SGh) ルーデヘン、イラン

       1 Colour Image (22 December 2013)  (28cm SCT with a DMK21AU04.AS)

 

    ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国

       4 Sets of RGB + 4 IR Images (3, 4, 8, 27 December 2013) 36cm SCT with an ASI 120MM

 

    マルティン・ハッジベリ (MHg) エーレブルー、スウェーデン

      1 Set of RGB Images (30 December 2013) 25cm speculum, with a DMK21AU618.AS 

 

    近内 令一 (Kn) 石川町、福島

       3 Drawings (31 December 2013) 30cm SCT, 500×

 

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

       1 Set of LRGB Images (12 December 2013)  31cm SCT with a Flea3

 

    森田 行雄 (Mo)  廿日市市、広島県

       4 Sets of RGB + 4 LRGB Colour + 4 L Images (2, 4, 8, 31 December 2013)

36cm SCT with a Flea3

 

    ジャン=ジャック・プーポー (JPp) エソンヌ、フランス

       1 Set of RGB + 1 IR Images (13 December 2013)

35cm Cassegrain @f/23 with a Baster acA640-100gm

 

 

  

・・・・・新しく、フランスのプーポー(JPp)氏とスウエーデンのホッジベリ(MHg)氏、澳大利亞のブダ(SBd)氏が戦列に加わった。プーポ氏は可成り前から、MHg氏は確か前回からかと思う。澳大利亞のブダ氏はベテランである。視直徑は後半6秒角台を示すようになったが、天候やシーイングの所爲で、觀測に苦勞があるようである。パーカーさんはこの月はお休みとなった。

 

     2Dec(λ=057°Ls)にはω=105°Wで森田(Mo)氏が像を揃えた。アルバの明るさをどの色でも出している。暗色模様はソリス・ラクスに繋がる部分が夕方に見え始めているが、欠けが大きい。クリュセに夕霧があるかもしれない。次の出現時にはもう少し模様が出そうである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131202/Mo02Dec13.jpg

 

     3Dec(λ=058°Ls)にはゴルチンスキー(PGc)氏がω=323°Wで、可成りの良像を得ている。シヌス・メリディアニが美事であるし、シュルティス・マイヨルも夕方に大きい。北極冠も中央極周邊に靄が立っているように見える。丸っぽい靄の縁には円く亀裂が出ているように見える。北極冠から南西方向にすこし靄が出ているかもしれない。マレ・アキダリウムは確かに朝方に濃く出ているが、ゴーストがあるようである。但し、中に入ってオクススは見事な描冩になっている。オクシア・パルスからマルガリティフェル・シヌスの方には手応えがある。

PGc氏は翌4Dec(λ=058°Ls)にもω=309°Wで撮った。シュルティス・マイヨルは大きく見え、ヘッラスの片鱗も冩っているかもしれないが、白くはない。シヌス・メリディアニから朝方の描冩は好い。マレ・アキダリウムはIRで出ている通りかもしれない。北極冠の二重構造は見られる。靄はやはり南へ流れているようだ。4DecにはMo氏もω=084°Wで良像を得ている。ソリス・ラクスが夕端近くにクッキリと出て、チトニウス・ラクスやポエニキス・ラクスが分離している(L像のお蔭)LRGBでアルバの邊りの明るさが複雑である。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131203/PGc03Dec13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131204/PGc04Dec13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131204/Mo04Dec13.jpg

 

     8Dec(λ=060°Ls)PGc氏の独壇場だが、ω=276°Wでシュルティス・マイヨルがど真ん中である。ウトピアでの擾亂が気になるところだが、未だ解像力が足りないか。ノドゥス・アルキオニウスの斑点やウトピア西方の斑点などは明確である。同じく8DecにはMo氏も9時間遅れのω=043°Wで観測している。 マレ・アキダリウムが大きく濃く、ソリス・ラクスの邊りも暗帯だが、詳細には分解しない。アルバが白く入ってくるところかもしれない。北極冠などはすっきりしない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131208/PGc08Dec13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131208/Mo08Dec13.jpg

 

     12Dec(λ=062°Ls)にはモラレス(EMr)氏がω=203°Wで撮像した。明らかに北極冠から南西方向に靄が流れ出している。エリュシウムもやや明るい。Rにはケルベルスとアエテリアの暗斑が小さく出ている。δ=6"となった。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131212/EMr12Dec13.jpg

 

     13Dec(λ=062°Ls)にはJPp氏がω=164°Wで観測した。餘り安定はしていないが、夕方にオリュムプス・モンスが見えるようだし、エリュシウムもR IRではやや姿を見せている。オリュムプス・モンスの方はGBでも明瞭だから、山岳雲の残滓であろう。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131213/JPp13Dec13.jpg

 

     22Dec(λ=066°Ls)にはゴミザデ(SGh)氏のω=347°Wの像がある。強調画像で、像が汚い。但し、オクシア・パルスの邊りやオクススの西のマレ・アキダリウムとの間の明部などは好く出ている。北極冠と外に飛び出す靄などは像が汚くてどうのこうの言えない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131222/SGh22Dec13.jpg

 

     24Dec(λ=067°Ls)にはブダ(SBd)氏がω=234°Wで良像を得た。綺麗な像で、シュルティス・マイヨルが朝方に蒼味がかって、どっしりとし、ヘスペリアも切れ上がり、マレ・キムメリウムの一部も見える。エリュシウムが明るく、アエテリアの暗斑が可成り濃い。ウトピアも北極冠近くに擾亂があるごとくである。北極冠にも濃淡が出ているか。分解像が欲しい。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131224/SBd24Dec13.jpg

 

     27Dec(λ=068°Ls)にはPGc氏がω=099°Wで撮った。アルバは複雑な明るさを見せている。北極冠は少し縮小した様である。未だ周邊はぼけている。ポエニキス・ラクスの邊りは夕縁近くに描冩されている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131227/PGc27Dec13.jpg

 

     30Dec(λ=069°Ls)ω=315°WMHg氏の畫像である。シュルティス・マイヨルが夕端にあると思う。北極冠の輪郭がぼやけているが、これが北極冠によるものかどうかは解らない。北半球の暗色模様は暖色系である、のに対し、シュルティス・マイヨルのあたりは緑が勝っている。シヌス・サバエウスはうまく描冩されていない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131230/MHg30Dec13.jpg

 

     31Dec(λ=070°Ls)Mo氏のω=188°Wccd像と近内令一(Kn)氏のω=190°~209°Wのスケッチが納めであった。Mo氏の北極冠など精彩が無く、エリュシウムもくすんでいる。尚このMo氏の像はウォーカー(SWk)氏の2012年の6Feb(λ=067°Ls)ω=190°Wと比較すると、エリュシウムの在處(ありか)などが判る。Kn氏の三像も北極冠は明らかだが、全体に模様が淡く見えている。但し、鉛筆遣いは美事で、一寸真似が出來ない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131231/Mo31Dec13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/131231/Kn31Dec13.jpg

 

(村上 昌己/  )  


日本語版ファサードに戻る / 『火星通信』シリーズ3 の頁に戻る