2013/2014 CMO/ISMO 観測レポート#01

2013年九月までの火星観測 (λ=~029°Ls)

CMO #415 (25 October 2013)


・・・・・今期の観測報告の嚆矢はギリシャのマノス・カルダシス(MKd)氏からで、七月27(λ=358°Ls)の日の出後に赤外光で写したもので、視直径はδ=3.9"であった。暗色模様の少ない経度でほとんど何も写ってはいなかった。八月にも赤外光で写したものでいくつか報告があり、小さい像ながら暗色模様は正常に写っていて、火星面に異常はないものと思われた。九月中旬からは継続的に下記の各氏から報告が入っている。森田(Mo)氏は今期望遠鏡の口径を上げての挑戦で、晴れ間には連日の観測であった。ドン・パーカー(DPk)氏とピーター・ゴルチンスキー(PGc)氏は新しいカメラに変更している。

 今回のレポートでは九月末日(λ=029°Ls)までの期間の報告を採りあげる。期間末には、視直径はδ=4.4"になった。中央緯度はφ=21°N、春分過ぎの北極域が見えている。位相角はι=26°。視赤緯 D は九月末には+15.6°ぐらいである。火星は九月には「かに座」を移動してプレセペ星団の中を通過した。夜半過ぎには東の空に顔を出すようになっている。九月末には「しし座」に進み、十月14日にはレグルスの北を通過する

 

・・・・・この期間に拝受した報告と報告者は次の通りである。

 

     阿久津 富夫 (Ak)  セブ・フィリッピン

       1 IR Image (6 Aug 2013)   36cm SCT @f/24 with a DMK21AU618AS

 

    ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国

       1 Set of RGB + 3 IR Images (11, 17 Aug; 27 Sept 2013)   36cm SCT with a ASI 120MM

 

    マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ

      1 Set of RGB + 1 Colour + 1 IR Images (27 July, 28 Sept 2013)

28cm SCT with a DMK21AU618

 

    エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ

       1 Set of RGB + 1 IR Images  (24 Sept 2013)  31cm SCT with a Flea3

 

    森田 行雄 (Mo)  廿日市、広島県

       8 Sets of RGB + 8 LRGB Colour + 1 R + 8 L Images  (19,~ 24, 26, 30 Sept 2013) 

                           36cm SCT with a Flea3

 

    ドナルド・パーカー (DPk) フロリダ、アメリカ合衆国

        1 Set of RGB+ 1 IR Images  (26 Sept 2013)   41cm Spec @f/26 with an ASI 120MM

                                                                 

    デミアン・ピーチ (DPc)  ウエストサセックス、英国    

    2 Colour + 2 R + 1 B Images  (20 Sept 2013)            (36cm SCT with a SKYnyx 2-0M)

 

 

・・・・・ Mo氏の最初の観測はδ=4.3"19Sept(λ=024°Ls)ω=119°Wであったから、やはり顕著な模様はないが、仄かな明暗が中央部にも出ている。春分後の北極冠がダークフリンジと対照的に白く大きく写っている。この時は広島は晴れが続いたようで、朝方の観測を殆ど連日こなしている。20Sept26Septは廿分置きに二度ずつ撮像している。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130919/Mo19Sept13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130920/Mo20Sept13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130921/Mo21Sept13.jpg

 

22Sept(λ=026°Ls)ω=088°Wでは南半球ではソリス・ラクスが見えている様で、北半球にもニロケラスの西側には明るい領域が南北に走っている。23Sept (λ=026°Ls)ω=079°Wでは更に内部が好く見えていて、ニロケラスの西部からカンドールの方に黄塵系とおもわれる明部が可成り顕著である。ソリス・ラクスは割と明確である。24Sept ω=069°Wはややシーイングが落ちたが、マレ・アキダリウムの存在が夕方に窺える。26Sept にはω=049°Wω=054°Wでマレ・アキダリウムの動きが少し出ているが、シーイングが悪いらしく北極冠の写りが好くない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130922/Mo22Sept13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130923/Mo23Sept13.jpg

 

30Sept (λ=029°Ls)にはω=008°Wまで行った。マレ・アキダリウムは朝方で明確で、西北角はRで三角形で濃く出ている。マレ・アキダリウムとオクススの間は、いつものように明るく撮像されている。赤道あたりでは、シヌス・サバエウスとマルガリティフェル・シヌスが好く分離して出ている。1Oct(λ=030°Ls)では更に詳細がでているが、報告は次号である。

 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130924/Mo24Sept13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130926/Mo26Sept13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130930/Mo30Sept13.jpg

 

 なお、20Sept(λ=024°Ls)では日本ではMo氏がω=109°Wを見ているのに対し、ほぼ九時間遅い英國のピーチ(DPc)氏がω=251°Wで撮っている。これは良像である。シュルティス・マイヨルが東岸の詳細も含めて好く出ていて、ヘスペリアも好く切れ上がっており、ヘッラスも靄っぽい。ウトピアの西、シュルティス・マイヨルの北には黄塵らしいものが出ている。δ4.3"である。

 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130920/DPc20Sept13.jpg

 

 

  23Sept(λ=025°Ls)ではプエルト・リコ のモラレス(EMr)氏がω=277°Wで撮像、シュルティス・マイヨルが南中前だが、少し淡く、北極冠も冴えない。L像が好い方。24Septにはシーイングが向上して、ω=270°Wでシュルティス・マイヨル等がより明確である。シュルティス・マイヨルの北にはやはり黄塵があるかも知れない。RよりIR像に顕著。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130923/EMr23Sept13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130924/EMr24Sept13.jpg

 

    26Sept(λ=027°Ls)ω=267°Wのパーカー氏の像は優れていて、シュルティス・マイヨルの東岸の詳細も綺麗である。ヘスペリアやヘッラスのボケ具合も出ている。シュルティス・マイヨルの北の明暗の描写は興味深い。20SeptDPc氏のこの辺りと比較すると、DPc氏像や23SeptEMr氏像の黄塵は拡散されている様にみえる。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130926/DPk26Sept13.jpg

 

    27Sept(λ=028°Ls)のゴルチンスキ(PGc)氏の像はω=243°Wで、シュルティス・マイヨルは未だ朝方である。エリュシウムが少し明るく夕端にある。北極冠は一様な明るさではないかも知れない。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130927/PGc27Sept13.jpg

 

    28Sept(λ=028°Ls)MKd氏の像はω=147°Wで、模様の少ないところであるが、中央辺りに明暗が辿れるかも知れない。南のマレ・シレヌム辺りは眉型に見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130928/MKd28Sept13.jpg

 

 

     扨て、今度は遡って八月の結果を見る。PGc氏の11Aug(λ=005°Ls)IR像はδ=4.0"の時であるが、ω=354°Wで撮られ、マレ・アキダリウムが朝方、シヌス・メリディアニが中央で濃く、秀逸である。マルガリティフェル・シヌスも綺麗に分離し、アラムが明るい。φ=11°NPGc氏の 17Aug(λ=008°Ls)ω=290°WIRだけだがシュルティス・マイヨルが午後側で明確、シヌス・サバエウスの東側は出ているようである。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130811/PGc11Aug13.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130817/PGc17Aug13.jpg

 EMr氏の最初の像は11Aug (λ=005°Ls, δ=4.0")ω=338°Wであった。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130811/EMr11Aug13.jpg

Ak氏の最初の像(IR)06 Aug (λ=003°Ls, δ=3.9") ω=193°Wだが、マレ・キムメリウムあたりが出ており、エリュシウムも見分けが出來るかも知れないが、まだぼやけている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2013/130806/Ak06Aug13.jpg

Ak氏は火星を視野に入れて居るようだが、シーイングに恵まれない由である。

 

(村上 昌己/  )  


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