ISMO 2011/2012 Mars Note #16
ω=160°W〜ω=180°W から見た
λ=066°Ls〜λ=082°Ls での北極冠内の黄塵
村上 昌己 & 南 政 次
既に、昨年十月号のCMO#403のNote#05に於いて、かなり広範囲の季節にわたって、ポイントを定めて北極冠附近の様子を調べているが、今回は2012年の火星像の内、特に北極冠地区に限って黄塵との関係で最も印象深い像の一つを採り上げる。
その像とはエフライン・モラレス(EMr)氏の11Feb2012(λ=069°Ls)
ω=173°Wの像である。Figure
1にそれを掲げる。明らかに北極冠區に北極冠南側に擴がって居る黄塵が北極冠上に大きく入り込んでいるかのように見える(或いは北極雲内に発生した黄塵が南側に吹き出し張り出している)。北極冠内の分布はかなり広い。あたかも南極冠に見られる現象と対比できるかもしれない。北極冠域でこの時期にこうした現象を捉えたという意味で、この画像の評価を高くしなければならない。しかし、残念ながらEMr氏に追求のモチベーションがなく、同じ角度の比較像が見あたらない。
この北極冠内の黄塵はシルヴィア・コヴォリック(SKw)さんの5Feb2012(λ=066°Ls)の画像に既に現れていると思う。SKwさんの5Febの観測は、ω=171°W、186°W、192°Wと撮られているが、ω=171°WがEMr氏の像に対応するだろう。そこで、この二観測を並べてみたのがFigure
2である。口径の違いによる描写の違いは確かだが、北極冠内の様子はほぼ同じ状況と考えられる。
Figure 3 はSKwさんの
6Feb2012 (λ=067°Ls) ω=162°Wとショーン・ウォーカー(SWk)氏の10Feb2012
(λ=069°Ls) ω=161°Wの像、およびEMr氏の12Feb2012
(λ=069°Ls) ω=159°Wの三者を比較したものである。後者は32cm鏡使用で その差が出ているかもしれないが、EMr氏の11Febの観測に近いことから、10Feb頃に北極冠と内部の様子は鮮明になってきたかと思える。
Figure 4は
Fig.1で採り上げたEMrの
11Feb2012 (λ=069°Ls) ω=173°Wの像と、約一ヶ月後のデミアン・ピーチ(DPc)氏の12Mar2012
(λ=082°Ls) ω=178°Wを比較したものである。これを見るとEMr像の北極冠の西端にある輝部はオリュムピアとして残る部分であり、黄塵は如何にも氷を速く溶かし、リマ・ボレアリスを作るのに寄与している様に見える。するとリマ・ボレアリスを作る北極冠内の部分が黄塵をかぶるようになるのは、季節的なものであるとも考えられる。北極冠の内部の方は黄塵にも拘わらず、リマ・ボレアリスの様には速く溶解せず、未だ黄土色を薄く残している。
Figure 5もまた、FebとMarの比較、つまり
SKwさんの6Feb2012
(λ=067°Ls) ω=152°W の像とマノス・カルダシス(MKd)氏の8Mar2012
(λ=081°Ls) ω=154°Wの像の比較で、とくに西側に大きな変化があったのが分かる。 後者ではオリュムピアの方が本体より輝きがない。DPc像の場合とMKd像の場合をどう勘案したら好いか、多分
DPc像の場合はω=178°Wであったのに対し、後者ではω=154°Wで20°Wの差があり、一時間以上遅いのであるから光線の当たり具合によると考えるのが妥当であろう。