2011/2012 CMO/ISMO 観測レポート#15

2011/12年火星観測の纏めと追加報告

CMO #404 (25 November 2012)


・・・・・KARDASIS氏の追加報告をレヴユーする前に、先ず、これまでの報告について簡単な纏めをしておく。

 

・・・・・2011/2012年の接近では、小接近ながら2011年五月から2012年八月までの期間、各地から多くの観測結果がCMO/ISMOに寄せられた。集計の結果、国内からは10名・約752の観測で、外国からは45名・807観測(アメリカ大陸258、ヨーロッパ389、ハワイ・オセアニア107、イラン53)であった。多くの画像が送られてきているが、従来通りにCCD画像は20分ごとω5°W違いの観測を一観測。スケッチでは40分ごと10°W違いの観測を一観測として数えている。画像の多くはウエブページのギャラリーに収められている。

 

 国内ではレギュラーの観測者から観測データが送られてきているが、眼視観測の場合、福井のお二人が四月に相次いで体調を崩されて観測が中断したのは残念なことであった。南政次(Mn)氏は27Mar (λ=089°Ls, δ=12.9")を境に劇症型の病におそわれて中断、しかし、劇症が治まり、一ヶ月後の23Aprに再び天文台に杖をついてのぼったが、以後は大事をとって休まれた。今年は雪が深く寒かった所為もあり、車の運転などに自信がない、その他からの由。この時点でMn氏は今季192枚のスケッチを残された。今季の衝は3Marに起こっているから、衝までは完璧に押さえているようである。27Marでは既に欠けは右側朝方に移っている。なお、中島孝(Nj)氏からは直接ご連絡はないが、Mn氏と同時期に糖尿病などが悪化して、観測を中止されたようである。Mn氏のお話では、ペアで観測していたからMn氏とほぼ同数の観測だったと思うということであった。Nj氏も杖を使用されている由。なお、CMOの紙印刷が中止され、PDF印刷だけになったのもこの時期に当たる。努力してPDFだけは残されたようである。

 他方、今期はベテランの近内令一(Kn)氏の参加があり、神崎一郎(Kz)氏の活躍もあって、こうして眼視観測ではそこそこの結果が残せたのは幸いであった。筆者(Mk)も眼視観測で、27May(λ=116°Ls, δ=8.1")までに64枚のスケッチを得た。Kn氏は双眼で、5Aug(λ=150°Ls, δ=5.7")まで続けられ、73枚のスケッチを得られた。Kz氏は12Apr(λ=096°Ls, δ=11.5")までの観測で、59枚であった。

 外国勢は、北米から15名、ヨーロッパから27名、オセアニア2名、中近東1名の内訳であった。プエルト・リコのモラレス氏(EMr)の健闘が光った。シーズン終了後には下記の東ヨーロッパからの報告が入っている。イランのゴミサデ氏(SGh)と並んで、アジアとヨーロッパの観測を繋げる地域からの報告で今後に期待したい。アメリカとアジアを繋げるハワイ・オセアニアからの報告も同様である。

 

 今接近では、北半球の春からの北極冠の融解に伴う水蒸気の移動による様々な現象が観測された。高地に掛かる午後の山岳雲、朝方の霧から飛び出した高山の頂の暗点、ヘッラスの季節変化、融解のすすんだ北極冠周辺の黄塵活動等である。また、2012年三月・四月には2003年に観測されたものと同様の朝方ターミネーターからの飛び出し現象が複数回観測されて、火星の部分残留磁場とCMEの通過との相互作用ではないかとの推論が示されている。

 

 寄せられた画像を拝見して、CCD画像はカメラや処理方法の進歩があり画質の向上が見られるが、報告の形式として最終処理した画像を優先している報告者がますます増加していて、元となったRGB単色画像が同時に披瀝されないものが多く失望させられた。少なくともB光画像の添付は、火星の気象を追跡している現在の観測目的のためには是が非でも必要で、IR画像は別な目的があればだが、大気を透かして地表の濃淡をのみ捉えるもので不必要に思える。火星の地表の濃淡は大気中の現象の位置を示す指標に過ぎないというのがCMOの姿勢である。まして、疑似カラー合成やCCDカラーカメラによる画像は参考画像として扱えるだけである。次期接近ではRGBセットとなった画像での報告を大いに期待している。もちろん赤外線漏れのないように適切なフィルターの選択が必要である。(以上はMkの記述による。以降、MkMnの合作。)

 

・・・・・追加報告 十月になって以下の追加報告があった。

 

マノス・カルダシス (MKd) グリファダ、ギリシャ

     21 Sets of RGB + 3 Colour + 8 IR Images

        (15, 16 August 2011; 2, 3, 8, 14~21, 24, 27, 31 March; 1, 12, 19, 22, 25, 26 April; 5, 6 May 2012 ) 

                                                         28cm SCT with a DMK21-618

 最接近後半の画像が多く報告されている。標準的な画像だが、画像の大きさが統一されておらず、データも不足気味である。注意するのは、12Aprの画像は朝方のターミネーターからの飛び出しをω=162°Wで捉えている点、ベラルーシでの観測と同じ時に当たる。

 MKd氏の観測全体であるが、以下主なものを抽出すると、2Mar2012(λ=078°Ls)ω=193°Wではオリュムプス・モンスの山岳雲が夕端で出ている。この雲はIRでは出ない。8Mar(λ=081°Ls)ω=144°Wではオリュムプス・モンスが中央に近くなって、しかし暗點は出ているようである。14Mar(λ=083°Ls)ω=092°W100°Wではオリュムプス・モンスが朝霧に透かして見える。15Mar(λ=084°Lsδ=13.7")ω=097°Wは良像で、オリュムプス・モンスの描写もよい。16Mar(λ=084°Ls)ω=090°Wは夕縁の描写がおかしいが、オリュムプス・モンスやタルシスの描写はこの程度であろう。17Marの画像も同じようなものだが、10分違いの撮影には意味がない。18Mar(λ=085°Ls)ω=031°Wでは濃いヒュッペルボレウス・ラクスが描写されているが、RGB分解も面白い。24Mar(λ=088°Ls)ω=342°W026°Wは飛びすぎ。27Mar(λ=089°Ls)の像はω=321°Wで、ヘッラスがBで濃いが、Rでも出ている。31Mar(λ=091°Ls)ω=285°Wではヘッラスの形が面白い。多分地形が関係していると思う。12Apr(λ=096°Ls)ω=158°W162°W:後者ではミンスクで撮られた夕縁からの飛び出しが撮られている。18hGMTころで両者は同じである。ω=158°Wではどうか、調べる必要があろう。また、翌日の同じ角度で撮ることが必要である。なお、この日の像でもう一つ注目されるのは、オリュムプス・モンスとタルシス山系の間に、ワインカラーの帯が見えることである。Bで顕著である。この帯は以前1980年代から福井では知られているが、ワインカラーであるということは、眼視で見られたことはないかと思う。19Apr(λ=099°Ls)ω=108°W22Apr(λ=101°Ls) ω=097°Wではオリュムプス・モンスの暗點が早い時間からpoke outしていて、光輪を暗示している。26Apr(λ=102°Ls)ω=045°Wではイアクサルテス邊りの描冩が面白い。この像は三色分解像を伴う必要がある。以降、視直徑が小さくなった爲か5May6May(λ=107°Ls)ω=328°Wの像のみ。しかし6May(λ=107°Ls)にはω=334°W341°WPEACH(DPc)氏の良像がある。

 (村上 昌己/  )  


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