ISMO 2011/2012 Mars Note #05
λ=042°Ls邊りからλ=093°Ls頃までの北極冠附近の様子
南 政 次
ここでは2011/12年のλ=042°Ls邊りからλ=093°Ls邊り迄の北極冠およびその周邊の状態を調べておく。
實は既にCMO/ISMO#395(25March2012)において村上、中島、西田氏がForthcoming
Mars in 2011/2012. IIに於いて北極冠周りの様子について過去の經験から觸れていて、λ=065°Ls邊りからリマ・ボレアリスなどが明確になること、λ=100°Ls邊りからは殘留北極冠が安定していることなど概観しているが、今回は2011/12年の實際の觀測からλ=042°Ls邊りからλ=093°Ls邊り迄の様子を更に詳しく見てみようというわけである。
北極冠は既にλ=005°Ls邊りから北端に翳りが見え始め、例えばピーター・ゴルチンスキ(PGc)氏の31Oct2011(λ=023°Ls)
ω=091°Wなどには北極冠/北極雲を斜めに切るような暗線が見え始めているが、29Nov(λ=036°Ls)のビル・フラナガン(WFl)氏のω=215°W、219°Wにははっきり北極冠内を東西に横切る暗線が見えている。この暗線は殘留極冠の縁を象るものでわれわれはP-ringと呼んでいたが、これは長く存在した。後にここからリマ・ボレアリスが生まれて來る譯である。その頃の初期の北極冠の状況を阿久津富夫Ak氏の像によって示す(Fig1)。實は、今回の稿では暗線など内部の詳細を示すためではなく、ω=240°Wからω=250°Wから見た北極部の様子をLsの推移に從ってどうなるか概観するためで(やむを得ず例外も出る)、Ak氏のはω=241°Wからであったから引用するわけである。以下、引用する像の質は最上のものではなく、Lsに縛られていることを承知願いたい。從って、良像という觀點からは經度違いのため省かれたものも多い。
これがλ=050°Lsに進むと、次のFig2のPGc氏の圖の様になる:P-ringが可成りハッキリしている。但し、像としてはWFl氏の7Jan(λ=054°Ls)
ω=190°Wの北極冠が興味深い。Fig3にはフレッディ・ウィッレム(FWl)氏の8Jan(λ=054°Ls)を掲げるが、既に殘留極冠は赤味を帶びて見えている。
次に擧げるFig4はデミアン・ピーチ(DPc)氏の27Jan2012(λ=062°Ls) ω=253°Wの像である。10°Lsではなかなか縮小しないようになっている。
次はドン・パーカー(DPk)氏の3Feb(λ=066°Ls)が適當であろう(Fig5)。Fig6には熊森照明(Km)氏のλ=070°Lsを擧げるが、北極冠の外輪が少し小さくなったように見える。期日的にはAk氏の18Feb(λ=072°Ls)と近い(Fig7)。但し、DPk氏の圖に顕れていた綺麗な外輪がKm氏でも、Ak氏でも少しぼやけて見える。特にAk氏のFig7では殘留北極冠がやや小さく見える。北極冠の偏極に據るかも知れない。同じ頃(19Feb(λ=073°Ls))の近内令一(Kn)氏のスケッチをFig8として掲げる。スケッチでもリマ・ボレアリス (P-ringの殘滓)が見えているようである。
29Feb(λ=077°Ls)には二つ採り上げる。クリストフ・ペリエ(CPl)氏(Fig9)とDPc氏(Fig10)のものだが、殆ど口徑差の違いであろうが、少しオリュムピアの邊りの見え方が違う。
ここで(λ=077°Ls)残留北極冠の形がハッキリしてきている事に注意する。DPc氏の圖ではリマ・ボレアリスが複雜である。なお、29FebにはDPc氏はω=259°Wから297°Lsまで追っ掛けているのでギャレリーで確認されたい。
三月に入ってLsは代わらないが、デーヴ・タイラー(DTy)、DPc、マルク・デルクロア(MDc)、マーチン・ルヰス(MLw)氏の類似した像が提出されているので、これもギャレリーでご覧頂きたい。ここではDTy氏とMDc氏の像を並べておく(Fig11、Fig12)。最早オリュムピアを残して周りはスッキリしてきている。オリュムピアはMDc氏と翌日のCPl氏の像では似ている(Fig13)。DTy氏の像はFig14のDPk氏のω=245°Wと比較できる(同じ角度)。DPk氏の像の北極冠は可成り詳細に富んでいる。
尚、P-ring(一部リマ・ボレアリス)はDPc氏の29Feb(λ=077°Ls)、Fig10と同じくDPc氏の5Apr
(λ=093°Ls)、Fig16では割れ目の大きさが違って見える事に注意する。前者の方が暗部が短いので、この頃は未だ北極冠からの靄の張り出しがあったものか。λ=093°Lsでは殘留北極冠をP-ringが綺麗に取り巻いている。λ=100°Ls邊り以降の様子は次回接近に期待したい。
尚、筆者の感想としては、北極冠部上空に高氣壓が支配するのはかなり早いと思う。2009/2010年でもP-ringはλ=050°Ls邊り以降淡く見られたが、今回はtiltが深く好く見えた。北極域の靄が霽れるのは、極地を覆うハドレー型の高氣壓に因るが、先に觸れたようにFWl氏のλ=054°LsやDPk氏Fig5のλ=066°Lsでは既に殘留北極冠が赤味を帯びてきている。同様の様子はエフライン・モラレス(EMr)氏の2Feb(λ=065°Ls)
ω=247°Wでも見ることが出來る。
從って極地高氣壓の支配は既に始まっているのであるが、細部では未だ霧の動きが見られるので局所的な動向は平均的な大局的な描像では追い切れないであろうと思う。
>附 録:
以上の他に、經度の違う像で重要な像もあるので、チェックした範囲でそれらを以下に引用しておく:
>WFl氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120107/WFl07Jan12.jpg
のω=190°Wでは北極冠内部が複雜に割れている。
>FWl氏:
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120119/FWl19Jan12.jpg
ω=149°W、159°W:東端で不思議な割れ方 λ=059°Ls。
>EMr氏:
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120202/EMr02Feb12.jpg
ω=247°W、npc中央が赤い。翌日のDPkの像はFig.5に引用している。
>SWk氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120210/SWk10Feb12.jpg
ではω=161°Wで中央に縦に黄塵があるか割れて見える。
この割れ目は同日のF
MELILLO氏のω=178°W
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120210/FMl10Feb12.jpg
でも割れて見える。
>DPk氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120215/DPk15Feb12.jpg
ω=130°Wでは中央にボケ、極dustによるだろう。
>PGc氏:
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120216/PGc16Feb12.jpg
の像は翌日の像で、割れ目が出ている:
ω=128°W。
>同じくPGc氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120218/PGc18Feb12.jpg
はω=136°Wだが未だ出ている。
>DPc氏:
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120219/DPc19Feb12.jpg
ω=017°Wで外輪の名殘。内部が複雜なようだが解像が不足。
>Km氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120219/Km19Feb12.jpg
ω=223°Wでも外輪が複雜。
>DPk氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120222/DPk22Feb12.jpg
ω=036°Wは内部が複雑、黄塵が西側に出ている。同日のDPc ω=024°Wにも見られる
>S
BUDA氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120223/SBd23Feb12.jpg
は良像で、ω=183°Wには黄塵が斜めに見える。
>FWlの
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120224/FWl24Feb12.jpg
ω=112°Wには西側に黄塵。
>SWk氏とDPk氏の合作
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120225/SWk25Feb12.jpg
ω=353°Wでは北極冠内に東西にスジ、朝方には黄塵
>EMr氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120226/EMr26Feb12.jpg
ω=014°Wでは黄塵が噴き出している。
>WFl氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120226/WFl26Feb12.jpg
のω=041°Wから見た北極冠は内部が複雜、黄塵は明らか。
>PGc氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120227/PGc27Feb12.jpg
にはP-リングを切る黄塵。
>WFl氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120306/WFl06Mar12.jpg
ω=308°W~318°Wは内部が面白い。
>DPc氏の
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120306/DPc06Mar12.jpg
は外輪が北側に寄っていて本體と連絡がありそう。