ISMO 2011/2012 Mars Note #04

光輪を伴うオリュムプス・モンスの現れ方

 

南 政


1) タルシス三山とオリュムプス・モンスが朝霧の中でpoke outしたK點に見えることはよく知られたことであり、2011/12年接近でもそうした光景が見られているが、今回はそういう觀測を推奨するわけではない。そうではなくて朝霧の領域を抜けて、オリュムプス・モンスが明確になってくる様子や時期を見ようというわけである。

 

例えばエフライン・モラレス(EMr)氏の22Feb2012(λ=074°Ls)ω=063°Wの像 

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120222/EMr22Feb12.jpg

では タルシス山とオリュムプス・モンスが朝霧の中の暗點として見えている普通の像であるし、角度の大きく違うスティーファン・ブダ(SBd)氏の23Feb2012(λ=074°Ls)ω=183°W

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120223/SBd23Feb12.jpg

では暗點が今度は寧ろ山岳雲からカルデラが見える具合で、然程興味を引かないが、兩者の間にオリュムプス・モンス(のカルデラ)の見え具合に大きな違いが起こっているはずで、その移り變わりを見たいわけである。

 

 2) その意味でドン・パーカー(DPk)氏の20Feb2012(λ=073°Ls) ω=094°Wの像

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120220/DPk20Feb12.jpg

EMr氏の21Feb2012(λ=073°Ls)ω=088°Wの像

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120221/EMr21Feb12.jpg

などは暗示的である。特にオリュムプス・モンスのカルデラが光輪(aureole)の中に見えているのに注意する。ここで見えてきた光輪と暗點との關係は、後で列擧を試みる様に澤山の例があるのだが、その前に位相角によって大きく違って見えることを指摘しておく。

 

 3) ここに擧げる作例は同じ季節λ=073°Lsで同じωに依るが(ω=090°W)、オリュムプス・モンスの邊りは酷く違って見える。一方は2010年、もう一方は2012年の例であるが、季節は同じであるから、同じ時刻であるなら同じように見えるはずである。違いは位相角ιにあって地球と火星、太陽の相關關係で見かけ上違うに過ぎない。


デミアン・ピーチ(DPc)氏の2010年の場合はι=35°(a)であって(aは衝後ということを示す)EMr氏の2012年の場合はι=11°(b)である(bは衝前ということ)。その差はほぼ45°(3時間)もある。同じω=090°Wであっても前者ではオリュムプス・モンスは夜明けからほぼ15°(時間にしてほぼ1時間)しか離れていないのに對し、後者ではdawn lineは向こう側へ11°離間しているので、ほぼオリュムプス・モンスは夜明けから55°(時間にして約4時間)も離れているのである。前者でオリュムプス・モンスが縁近くになるのに對し、後者では充分離れていて、その間にオリュムプス・モンスの光輪を殘して朝霧はオリュムプス・モンスの近くから離れて仕舞ったというわけである。これは影像からも讀み取れる。要は火星の時間毎に霧の具合によって同じものが變化(へんげ)して見えるということである。

 

 4) 扨て、このころの主な當該影像を取り出すと、

DPk氏の15 Feb (λ=071°Ls) ω=130°Wω=140°W

EMr氏の16 Feb (λ=071°Ls) ω=131°W

ゴルチンスキ(PGc)氏の16 Feb (λ=071°Ls) ω=128°W、等があり、EMr氏の

19 Feb (λ=073°Ls) ω=090°W(既出)が來る。續いて日本へ移って、熊森照明(Km)氏の

27 Feb (λ=076°Ls) ω=137°W

29 Feb (λ=077°Ls) ω=126°W

同日ω=129°W森田行雄(Mo)氏の像が續く。

 

 3 Marには衝を迎えた。

 

 更に暗斑の見える像を列擧すると

DTy: 12 Mar (λ=082°Ls) ω=127°W

PEd: 12 Mar (λ=082°Ls) ω=128°W

MDc: 12 Mar (λ=082°Ls) ω=154°W; 特にIR

JCt: 13 Mar (λ=083°Ls) ω=139°W

JPp: 13 Mar (λ=083°Ls) ω=145°W

DPc: 14/15 Mar (λ=083°Ls) ω=116°W~152°W

PEd: 14 Mar (λ=083°Ls) ω=124°W, 127°W

MLw: 14 Mar (λ=083°Ls) ω=126°W

DTy: 14 Mar (λ=083°Ls) ω=130°W

JPp: 14 Mar (λ=083°Ls) ω=142°WR

CPl: 15 Mar (λ=084°Ls) ω=117°W

DPk: 17 Mar (λ=084°Ls) ω=175°W

EMr: 18 Mar (λ=085°Ls) ω=156°W

 ここでそれぞれDTyはタイラー氏、PEdはエドワーズ氏、MDcはデルクロア氏、JCtはカスティーヤ氏、JPpはプーポー氏、MLwはルウィス氏、CPlはペリエ氏である(他は既出)。 

 

 尚この邊りで、朝方の様子が見え始める:

DTy: 18 Mar (λ=085°Ls) ω=080°W

DPc: 18 Mar (λ=085°Ls) ω=086°W

ISp: 18 Mar (λ=085°Ls) ω=092°W

MLw: 18 Mar (λ=085°Ls) ω=097°W

JPp: 19 Mar (λ=085°Ls) ω=063°W

DPc: 19 Mar (λ=085°Ls) ω=069°W

MLw: 19 Mar (λ=085°Ls) ω=074°W

JWr: 19 Mar (λ=085°Ls) ω=077°W

CPl: 19/20 Mar (λ=086°Ls) ω=081°W~111°W

MLw: 20 Mar (λ=086°Ls) ω=070°W

SKd: 20 Mar (λ=086°Ls) ω=083°W

  (ISpはシャープ氏、JWr氏はヴァレッル氏、SKdはキッド氏を指す)

と同時に夕方の風景も捉えられている:

EMr: 19 Mar (λ=085°Ls) ω=151°W

DPk: 21 Mar (λ=086°Ls) ω=146°W

EMr: 22 Mar (λ=086°Ls) ω=148°W

DPk: 24 Mar (λ=087°Ls) ω=112°W, 122°W

EMr: 24 Mar (λ=087°Ls) ω=115°W

 

 一方、オリュムプス・モンスを中央で捉えているcriticalな瞬間の像もある:

WFl: 25 Mar (λ=088°Ls) ω=133°W ι=17°

EGf: 25 Mar (λ=088°Ls) ω=138°W ι=17°

(WFlはフラナガン氏、EGfはグラフトン氏)


これらはオリュムプス・モンスが霧から離れたことを示しているようだ。但し、ここでは霧の晴れ具合が微妙に廿分差で違っているかも知れない。

 

FWl: 2 Apr (λ=091°Ls) ω=135°W143°W

では充分獨立し、山岳雲に近い。

FWl: 4Apr (λ=092°Ls) ω=100°Wι= 23°

では朝方の霧の中である(Bが必要)(FWlはウィッレム氏)

Mo: 7Apr (λ=094°Ls) ω=109°W

は普通の影像、もっと待って、オリュムプス・モンスの霧から出るところを狙うべき。

DPc: 21 Apr (λ=100°Ls) ω=121°W

も普通の影像であるが、オリュムプス・モンスのAureoleが見えるところが好い。

Mo: 12 May (λ=109°Ls) ω=139°Wδ=9.1"

にもボンヤリと見えている。

DPc: 24 May (λ=115°Ls) ω=162°W ι=38°

ではオリュムプス・モンスがaureoleか山岳雲か一見して位置が分からないが、まだ正午になっていないのでaureoleであろう。當然朝方ではもっと顕著であるはずで、

DPc: 27 May (λ=116°Ls) ω=131°W

ではオリュムプス・モンスが獨立して綺麗であるし、

DPc: 28 May (λ=117°Ls) ω=121°W129°W

ではより朝方で古典的な並びになっている。ι=39°

 

  結論はこうである:poking outはこの時期常に見られるということである。但し、ιに依存していて、よりdawn lineから離れているところでのオリュムプス・モンスの姿を捉えること(四山のpoking outが目標ではなくて)が、この時期の醍醐味であるということである。その意味でDPc氏の場合でも27Mayの像が28Mayの像よりもより興味深いということになる。


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