五月になって火星は夕方の観測となり、日没時間の遅くなるのと共に観測可能時間も少なくなっていった。今年の五月は寒気の南下することが多く雲の多い天気が続き、爽やかな晴れ間の出ることがなく、筆者も全く観測する機会に恵まれなかった。観測レポートにも記したが、福井のベテランお二人は相次いで発病されて、車の運転・天文台までの博物館の階段の上り下りが不自由となり、今回から観測報告が途絶えることとなった。南氏はリハビリに励んでいて、以前のように集中できないのだが、編集作業も少しずつ続けておられる。今号からはフランスのクリストフ・ペリエ氏による今回接近の観測ノートの掲載が始まっている。

 

待望の金星の日面通過は、関東では南海上を通過していった台風三号の影響で小雨と強い風が吹いて観測は敵わなかった。当日は東京に出て母校の天文ドームで待機した。昼頃になって雨が止み千葉方面に青空が見え始め期待したが、結局雲は取れず、第四接食の数分前に雲を通してちらりと見えただけであった。

阿久津氏のいるセブ島でも雲は出ていたものの晴れ間に観測ができたとのことで、遠征した石橋力氏と共に写した画像がLtEに収められている。

 

六月24日 記

 

OAA火星課長 村上 昌己


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