2011/2012 CMO/ISMO 観測レポート#11
2012年五月の火星観測 (λ=104°Ls~118°Ls)
CMO #399 (
♂・・・・・今期11回目のレポートは、五月の観測報告を纏める。火星は順行を続けて、月末には「ししの後ろ脚」にまで移動した。日没後の南の空高く赤く輝いていたが、南中時刻は早くなり日没時には南中を過ぎているようになった。火星の季節はλ=104°Lsから118°Lsへと進み、視直径はδ=10.0"から7.9"と急速に小さくなり、観望の好期はそろそろ終わりに近づいた。位相角ιは34°から39°に増加してさらに欠けが大きくなった。傾きφは依然北向きに大きく月末にはφ=25.5°Nに達した。
♂・・・・・五月中には、以下の各氏から、報告を拝受している。報告者は国内から6名、国外から15名であった。福井の中島氏・南氏の両ベテランが相次いで体調を崩して観測報告をいただけなかった。スウェーデンのハッジベリ(MHg)氏はヴァレッル氏の紹介で今期初めての報告である。
阿久津 富夫 (Ak) セブ、フィリッピン
2 Sets of RGB + 2 IR +
2 LRGB Colour Images (19,
36cm SCT @f/55 with a DMK21AU04
マルク・デルクロア (MDc) トゥールヌフィーユ、フランス
4 Sets of RGB +
3 IR + 1 Colour + 1 L Images (2, 6, 24,
32cm speculum with a Basler acA640-100gm
ビル・フラナガン (WFl) テキサス、米国
1 Set of LRGB
Images (
サデグ・ゴミザデ (SGh) テヘラン、イラン
3 Colour Images (7, 9,
エド・グラフトン (EGf) テキサス、米国
1 Colour
Image (
マルティン・ハッジベリ (MHg) エーレブルー、スウェーデン
3 Sets of RGB
Images (6, 16,
石橋 力 (Is) 相模原、神奈川
2 Colour Images (5,
近内 令一 (Kn) 石川町、福島
9 Drawings (14,
19,
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、米国
4 Colour Images (7, 12,
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
4 Sets of LRGB
Images (2, 4, 12,
森田 行雄 (Mo) 廿日市、広島
15 Sets of RGB + 15
LRGB Colour + 15 L Images (3, 5, 12, 13, 16, 18, 22, 23, 26, 28,
25cm speculum with a Flea3
村上 昌己 (Mk) 藤澤、神奈川
2 Drawings (
西田 昭徳 (Ns) あわら、福井
1 Colour Image (
* HIDA Obsavartory,
ドン・パーカー (DPk) フロリダ、米国
1 Set of RGB
Images (
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、英国
1 Set of RGB +
14 RGB Colour + 4 B Images (1, 6, 12, 13, 22, 24, 27,
28,
(36cm SCT with a SKYnyx 2-0M)
クリストフ・ペリエ (CPl) ナント、フランス
1 Set of LRGB
Images (
ジャン=ジャック・プーポー (JPp) エソンヌ、フランス
1 Set of RGB
Images (
デーヴ・タイラー (DTy) バッキンガムシャー、英国
4 LRGB Colour + 4 R Images
(1, 6, 11,
ヨハン・ヴァレッル (JWr) シュヴァルプ、スエーデン
11 Sets of RGB Images
(2, 3, 5, 6, 13, 17, 23,~25, 28,
22cm speculum @f/27 with a DBK21AU618
フレッディ・ウイッレムズ (FWl) ハワイ、米国
14 Sets of RGB + 23 Colour + 1 R + 14 IR Images (2, 4, 6, 8, 11,~13, 16,
36cm SCT with a DMK21AU04.AS
♂・・・・・追加報告:
アラン・ヒース (AHt) ノッチンガム、英国
3 Colour
Drawings and Reports (March, April
2012) 200×20cm SCT
♂・・・・・視直徑は小さくなる一方なので、當然月始めのほうが詳細が出ている。1Mayでλ=105°Ls。DTy氏のω=018°WはDPc氏のω=019°W、031°Wと比較できるが、両方ともPリング(ダークフリンジ)の奇形が面白い。DPc氏のω=031°Wにはイアクサルテスの端っこに黄塵がでているようだ。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120501/DTy01May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120501/DPc01May12.jpg
2May (λ=105°Ls)のEMr氏の像には未だPoking-outが出ている。δ=9.8"。三山とオリュムプス・モンスの間に雲がある。MDc氏の像も好い。3May(λ=105°Ls)のMo氏のω=224°Wではエリュシウムから大きな雲が朝方へはみ出ている。JPp氏のω=360°Wでは夕方に仄かに青いシュルティス・マイヨルが見えている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120503/Mo03May12.jpg
4May(λ=106°Ls)のEGf氏の像にはPoke-outが出ている。ω=086°W。5May(λ=106°Ls)のエリュシウムはMo氏の像では雲っぽい。Ns氏は飛騨へ出張でω=225°Wで撮像。辛うじてオリュムピアが北極冠から分離して見えるか。
スウェーデンではJWr氏がω=342°Wでヘッラスを夕端で捉える。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120505/Ns05May12.jpg
6May(λ=107°Ls)のハッジベリ(MHg)氏のω=329°Wでもヘッラスは明るい。DPc氏の ω=334°W、ω=341°Wではヘッラスが夕端でもっと鮮明で、北極冠内にも詳細。リマ・ボレアレスとオリュムピアが見えている。7May(λ=107°Ls)ではDPk氏のω=042°Wではイアクサルテスを含むバルティアの描写。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120506/DPc06May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120507/DPk07May12.jpg
11May(λ=109°Ls)ではFWl氏のω=086°Wの像にpoking-out。12May(λ=109°Ls)ではFWl氏がω=079°WでPoke-outの一部を検出、ヒュペルボレウス・ラクスも非常に濃い。Mo氏のω=139°Wはオリュムプス・モンスあたりが複雑、R光では北極冠のところでヒュペルボレウス・ラクスとオリュムピアがよく描写されている。DPc氏も同日ω=280°W、289°Wで良像、北極冠の邊りが面白い。オリュムピアは分解され、カスマ・ボレアレも出ている。δ=9.1"の秀像。ヘッラスも二段構えで、構造と関係しよう。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120511/FWl11May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120512/DPc12May12.jpg
13May(λ=110°Ls)にはまだFWl氏がpoke-outを出している。Mo氏のω=124°Wでは オリュムプス・モンスあたりが複雑(ソリス・ラクスあたりも出ている)。DTy氏のω=255°Wは詳細に富んでいる。DPc氏のω=262°W、271°Wは更に鮮明でオリュムピアのあたりは秀逸。ヘッラスの朝に注意。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120513/Mo13May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120513/DPc13May12.jpg
14May (λ=110°Ls)ω=110°WのKn氏のスケッチはマレ・アキダリウムの残滓から、朝方の山岳地帯までの描写である。16May(λ=111°Ls)のMDc氏のω=249°Wの画像は明るいエリュシウムが夕方にシュルティス・マイヨルが朝に出てくるところ。MHg氏もω=254°Wで似た構図。シュルティス・マイヨルが青く更に出ている。17May(λ=112°Ls)のJWr氏のω=237°Wも似た構図だが、B光ではエリュシウムの雲が朝端まできている。像が揃っている。18May(λ=112°Ls)のMHg氏のω=237°Wではプレグラが濃く茶系統でプロポンティスIが出ているようだ、
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120514/Kn14May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120517/JWr17May12.jpg
19May(λ=113°Ls)ではAk氏のω=073°Wで、未だ朝霧が強くpoke-outが出ている。同日Kn氏の観測はω=060°W、ω=070°Wで、マレ・アキダリウムが夕方、ヒュペルボレウス・ラクスを含む北極域がソフトタッチに描写されている。 20May (λ=113°Ls)のWFl氏のω=324°Wの像はスッキリした良像で、北極冠部(オリュムピアなど)がよく分離して出ている。ヘッラスも夕端で明るい。此の図でもシヌス・サバエウスの南東端北の斑点は出ている。δ=8.6"である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120519/Ak19May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120519/Kn19May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120520/WFl20May12.jpg
23May(λ=115°Ls) のEMr氏のω=221°Wの像ではオリュムピアが北極冠の南に来て、プレグラが茶色、オリュムプス・モンスが東端で白い。24May(λ=115°Ls)ではJWr氏とMDc氏がほぼ同じ角度で撮っている。オリュムピアが北極冠に被さっている。エリュシウムが西端で少し明るいか。25May(λ=116°Ls)でJWr氏が敢行し、オリュムピアをω=168°Wで幽かに出している。δ=8.2"である。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120523/EMr23May12.jpg
26May(λ=116°Ls)にはKn氏がω=000°W, ω=020°Wでスケッチ。 Ak氏はω=033°Wでマレ・アキダリウム中心に撮っていて、バルティア東部に北極冠に後続する朝の白雲を捉えている。G光とB光でかなり明るく、LRGBよりRGBでハッキリしている。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120526/Kn26May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120526/Ak26May12.jpg
28May(λ=117°Ls)ではDPc氏のω=121°W、ω=129°Wの画像が秀逸で、高山のハッキリしたpoked-out とオリュムプス・モンスの興味ある描写が得られている。また、MDc氏も鮮明な像をω=137°Wで捉え、中央部オリュムプス・モンスの奇妙な筋状のものを描写している。オリュムピアも西で明白で、これはJWr氏のω=139°Wにも出ているかも知れない。29May(λ=117°Ls)でJWr氏が ω=126°Wの像を敢行して撮っている。未だオリュムピアが見えるかも知れない。δ=8.0"。B光像も面白い。
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120528/DPc28May12.jpg
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/120528/MDc28May12.jpg
(村上 昌己/南 政 次)
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