2011/2012 CMO/ISMO 観測レポート#08
2012年三月前半の火星観測 (λ=077°Ls~084°Ls)
CMO #396 (10 April 2012)
♂・・・・・今回は、2012年三月前半の観測報告をとりまとめる。今期八回目のレポートとなる。火星はこの期間の
03March 20h GMT に黄経衝、05March
17h GMT には今期の最接近となり、視直径はδ=13.9"に達した。季節はλ=077°Lsから084°Lsにすすみ北半球の夏至直前になった。視直径はδ=13.9"からδ=13.7"と今期最大値で見応えのある大きさをまだ保っている。 位相角は最小からι=10°まで増加して衝効果の期待できる期間は過ぎていった。以後は欠けは朝方に移り、夜明けのターミネーターが見えるようになり午前の半球が広くなっていく。中央緯度はφ=22°Nをゆっくり減少しているが北半球高緯度深く観測出来た。
♂・・・・・今期間には下記の39名の方々から報告を拝受している。日本・フィリッピン・オーストラリア11名、イラン1名、ヨーロッパ15名、アメリカ11名、ハワイ1名の内訳となる。寄せられた観測は日本国内の三月上旬の悪天候もあり最接近の頃の観測報告は少なく、後半になってやっと増加がみられた。
ジェイ・アルバート (JAl) フロリダ、アメリカ合衆国
2 Drawings (1, 14 March 2012) 310×,
400×28cm SCT
阿久津 富夫 (Ak) セブ、フィリッピン
7 Sets of RGB + 6 IR+ 6 LRGB Colour + 3 L Images (2, 5, 6, 8, 12, 13 March
2012)
36cm SCT
@f/35, 55 with a DMK21AU04
ドン・ベーツ (DBt) テキサス、アメリカ合衆国
4 Colour
Images (4,~6, 13 March 2012) 25cm speculum @f/25, 27, 30 with a ToUcam Pro II
スィモーネ・ボルツォーニ (SBl)
イタリア
4 Colour
Images (2 March 2010) 20cm SCT with a ToUcam Pro II
イアン・ブルース (IBr) 英国
1 Colour
Image (3 March 2010) 36cm
SCT @f/33 with a SKYnyx2-0
スティーファン・ブダ (SBd) メルボルン、オーストラリア
1 Colour
+ 1 R images (10, 12 March 2012) 40cm Dall-Kirkham with
a DMK21AU04
ファウメ・カステイヤ (JCt) バダローナ、スペイン
1 Set of RGB images (13
March 2012) 36cm SCT @f/44 with a
SKYnyx 2-0M
マルク・デルクロア (MDc) トゥールヌフィーユ、フランス
3 Sets of RGB + 3 IR Images (1,
12, 14 March 2012)
32cm speculum SCT with a Basler acA640-100gm
ピーター・エドワーズ (PEd) ウエストサセックス、 英国
4 Colour Images (1, 12, 14 March 2012)
28cm SCT @f/30 with a DMK21/618
フランシスコ=ホセ・フェルナンデス=ゴメス (FFn) オウレンセ、スペイン
3 Colour
+ 1 B images (8, 12, 15 March 2012)
20cm SCT @f/25 with a
DSI III Pro
ビル・フラナガン(WFl) テキサス、アメリカ合衆国
4
Sets of LRGB Images (5, 6 March 2012)
36cm SCT @f/27 with a Flea3
カミロ・フメガ=ウチャ (CFm) ガリシア、スペイン
3 Colour
Images (9, 12, 15 March 2012) 31cm
speculum @f/25 with a DMK21
サデグ・ゴミザデ (SGh) テヘラン、イラン
1 Colour
Image (9 March 2012) (28cm SCT
with a DMK21AU04.AS)
ピーター・ゴルチンスキー (PGc) コネチカット、アメリカ合衆国
2 Sets of RGB + 2 IR
Images (4, 6 March 2012) 36cm SCT @f/28
with a DMKAU618.AS
リチャード・ヒル (RHl) アリゾナ、アメリカ合衆国
2 Colour
Images (12 March 2012) 36cm SCT @f/22 with a DBK21AU04
石 橋 力
(Is) 相模原、神奈川
3 Colour Images
(11, 15 March 2012) 31cm
speculum, with a SONY HC9 Video cam
神崎 一郎 (Kz) 東久留米、東京
8 Drawings (12,~15 March 2012) 340, 400×20cm
speculum
近内 令一 (Kn) 石川町、福島
1 Colour
+ 5 Drawings (12, 13, 15 March 2012)
500, 600×30cm SCT
熊森 照明 (Km) 堺、大阪
5 LRGB Colour
+ 4 B Images (12,~15 March 2012) 28cm
SCT @f/70 with a DMK21AF04/DFK21AF04
シルヴィア・コヴォッリク (SKw) ルードヴィクスブルグ、ドイツ
1 Set of RGB + 1 IR Images
(9/10 March 2012) 20cm speculum
with a DMK31AF03.AS
マーチン・ルウィス (MLw)
ハートフォードシャー、英国
4 Colour Images (1, 10, 11, 14 March 2012) 22cm
speculum @f/48, 29 with a DMK21AU618.AS
スタニスラス・マクシモヴィッチ (SMk) エクヴィリィ、フランス
7 Sets of Drawings (6, 8, 11*,~15* March
2012)
190×, 140×13cm Cassegrain, 190~320×20cm
Cassegrain*
フランク・メリッロ (FMl) ニューヨーク、アメリカ合衆国
5 Colour
Images (6, 7, 12, 15
March 2012) 25cm SCT with a ToUcam pro II
南 政 次 (Mn) 福井 (福井市自然史博物館天文台)
17 Drawings (3,7,15
March 2012) 400, 550×20cm Goto ED refractor*
エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルト・リコ
12
Sets of LRGB Images (1,~ 6, 9, 10, 12,~ 14 March 2010) 31cm SCT with a DMK21AF04
森田 行雄 (Mo) 廿日市・広島
2 Sets of RGB + 2 LRGB Colour + 2 L Images (15 March 2012) 25cm speculum with a Flea3
村上 昌己
(Mk) 藤澤、神奈川
11 Drawings (6, 11, 12, 14 March
2012) 320×20cm
F/8 speculum
中 島 孝 (Nj) 福井 (福井市自然史博物館天文台)
17 Drawings (3, 7, 15 March 2012) 400, 550×20cm Goto ED refractor*
ドン・パーカー (DPk) フロリダ、アメリカ合衆国
5 Set of RGB +1 IR +2 UV
Images (1, 10, 14 March 2012)
36cm
SCT @f/42 with a DMK21AU618.AS
デミアン・ピーチ (DPc) ウエストサセックス、英国
3
Sets of RGB Images (1, 6,
8 March 2012) (36cm SCT with
a SKYnyx 2-0M)
クリストフ・ペリエ (CPl) ナント、フランス
4 Sets of RGB + 1 B + 5 IR
+ 4 Violet + 3 UV Images (2,
4, 5, 11, 15 March 2012)
25cm speculum @f/32 with a PLA-Mx
ジム・フィッリプス (JPh) サウスカロライナ、アメリカ合衆国
1 Colour
Image (12 March 2010) 20cm Refractor
(with a SKYnyx cam)
ジャン=ジャック・プーポー (JPp) エソンヌ、フランス
4 Sets of RGB +1 IR + 1 Colour Images (11, 13, 14 March 2012)
35cm Cassegrain @f/29 with a SKYnyx 2-0
マイケル・ロゾリーナ (MRs) ウエストヴァージニア、アメリカ合衆国
2 Colour
Drawings (11, 15 March 2012) 490, 340×35cm
SCT
クリス・スメト (KSm) ベルギー
1 Colour
Drawing (14 March 2012) 210×30cm Dobsonian
デーヴ・タイラー (DTy) バキンガムシャー、英国
3
Sets of RGB & LRGB +
5 Colour + 1 L + 1 IR Images
(1, 5, 11, 12, 14 March 2012)
36cm SCT with a Flea3
ショーン・ウォーカー (SWk) ニューハンプシャー、アメリカ合衆国
1 Colour
Image (6 March 2012) 32cm speculum
with a DMK21AU618
ヨハン・ヴァレッル (JWr) シュヴァルプ、スエーデン
6 Sets of RGB Images (1, 3, 4, 8,
13, 14 March 2012) 22cm speculum @f/17
with a ToUcam pro III
アンソニー・ウエズレイ (AWs) ニューサウスウエールズ、オーストラリア
2 Colour Images
(13, 14 March2012) 41cm speculum
with a Grasshopper Express
フレッディ・ウイッレムズ (FWl) ハワイ、アメリカ合衆国
9 Sets of RGB + 2 Colour + 11 IR Images (2, 3, 7 March 2012)
36cm
SCT with a DMK21AU04.AS
♂・・・・・追加報告:
アラン・ヒース (AHt) ノッティンガム、英国
2 Colour
Drawings and 6 Reports (3, 5, 18, 24,
25, 29 February 2012) 200×20cm
SCT
ヨハン・ヴァレッル (JWr) シュヴァルプ、スエーデン
3 Sets of RGB
Images (25/26, 27 February 2012) 22cm
speculum @f/17 with a ToUcam pro III
♂・・・・・ 三月前半の観測状況:火星は三月5日23hGMT頃に地球に最接近するから多くの観測が集まると考え、予め三月号は前半と後半に分けることを考えた。これはその前半にあたる。したがって、1 March (λ=077°Ls) から15 March (λ=084°Ls) 2012までをあつかう。
1日には衝に近いこともあって、近内令一氏がオリュムプス・モンスのCMTを計測した。結果はΩ=135°Wであったが、多分風下に当たるところに白雲が強く集まったのであろうと思われる。必ずしも衝日にオリュムプス・モンスが見えるわけではないので、日本の観測者には貴重な日であった。同日パーカー氏はω=344°Wで沈むシュルティス・マイヨルが寧ろ蒼くなく、雲で切れ切れになっているのを撮像した。シュルティス・マイヨルは寧ろ朝方で蒼い。早合点しない方が好い。同じ日ピーチ氏はイギリスで北極冠の外側の姿を上手く捉えている(ω=254°W)。エドワーズ氏も同様である。
2日にはペリエ氏が小さい像ながらかっちりと詳細を出している。同日、阿久津氏がアルバのあたりを撮っている。3日(λ=079°Ls)のモラレス氏の像は未だヘッラスが明るくないことを示している。次の日も同じである。4Marのペリエ氏の像はカラーバランスがいい。一方、フラナガン氏は靑色に拘るあまり、カラーバランスを毀している。シュルティス・マイヨルの蒼色に拘るのは好くない。
次の重要な観測はヘッラスの内部の複雑さで、ウォーカー氏やフラナガン氏の6Mar(λ=079°Ls)に見られる。特に後者はω=308°W,
313°W, 318°Wと追っている。ピーチ氏の同日の撮影ではオリュムピアが北極冠と併行になり美観である。計算づくかもしれないが、こういう角度の機会を逃す手はない。
阿久津氏の6Marω=082°Wも夕方のほうで面白い角度で撮っている。朝方ではタルシスの霧を狙っているが、いささか不充分である。7Mar(λ=080°Ls)のウィッレム氏の像は少しばかり蒼すぎる。9Mar(λ=081°Ls)でもモラレス氏のω=262°Wの像では ヘッラスは未ださほど明るくはない。
10日(λ=081°Ls)にはパーカー氏がω=245°W
と
ω=262°Wで充分明るいヘッラスを描き出した。オリュムピアも上手く出ている。ほかにモラレス氏のω=250°Wを見られたい。ブダ氏のω=022°WのR像は火星は低いと想うがよく出ている。
11Mar (λ=082°Ls)のヨーロッパの像はどれも北極冠とタルシス領域に関して描写が興味深い。ルヰスのは平均的な像で、タイラー氏の像では夕方のトリオが出ておりオリュムプス・モンスは点である。プーポー氏はトリオを白く出しているが北極冠域は惚けている。ペリエの像は平均的に好く各色で確かである。
12日(λ=082°Ls)にはフィリップ氏がシュルティス・マイヨルをω=226°Wで弱く出している。ヒル氏がω=284°W等でヘッラスを出している。東ではブダ氏が良像を得ている。日本では熊森氏、神崎氏、近内氏、阿久津氏が活躍している。
エドワーズ氏はω=128°Wで良像を得、オリュムプス・モンスは霧に囲まれた黒点のようになっている。フェルナンデス氏や、フメガ氏、デルクロア氏の像も参考になる。13Marには熊森氏、近内氏がシヌス・サバエウスを含む領域を見ている。近内令一氏はω=340°W, 000°W, 029°Wと追っている。続いてウェズレイ氏と阿久津氏、神崎氏が続いている。特にソリス・ラクス周辺が霧を被ったようになっている。これは歐羅巴側からも見え、ヴァレッル氏、カスティーヤ氏、プーポー氏などが13Marに見いだしている。14Mar (λ=083°Ls)にはパーカー氏が北極冠の境界を興味深く描写している。
14/15Marにも多くの観測を拝受し、特にピーチ氏の14/15Marω=116°Wではオリュムプス・モンスが中に暗い点を持つ姿として捉えられている。アスクラエウス・モンスは特に白い。エドワーズ氏の像もω=124°Wでこれらの姿を捉えている。ルヰス氏その他の像も参照。
この稿を締めくくるのに、大きなCMEが当時通過していることを記しておく。動画としてはhttp://iswa.gsfc.nasa.gov/downloads/20120313_185500_anim.tim-den.gif
を見てほしいが、その最終段階のCMEが火星を通過
したあとの周りの様子もここに留めておく。CMEの動きは速いが影響は暫く残る。この影響については次号で述べる。
(村上 昌己/南
政 次)
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