2011/2012 CMO/ISMO 観測レポート#03

2011年十月の火星観測 (λ=009°Ls~023°Ls)

CMO #391 (25 November 2011)


・・・・・今回は今期三回目のレポートとなり2011年十月中の観測を取り扱う。この期間、火星は「かに座」から「しし座」へ順行して進んだ。視赤緯(D )19°33'N から14°48'Nに下がってきているが、夜半過ぎには東の空に出て夜明け時には高度が出るようになり、いよいよ観測期の始まりと言える。季節(λ)は北半球春分過ぎのλ=009°からλ=023°Ls まですすみ、視直径(δ)δ=5.2"からδ=5.9"まで少し大きくなった。中央緯度(φ)17°Nから22°Nに北半球側に大きく傾いて、北半球の高緯度深くまで見えている。位相角(ι)33°から36°に少し増加して、欠けは大きい。

 

・・・・・ 十月中の観測報告は以下の観測者から拝受した。国内から5名、外国から6名になっている。ただし、アメリカ,英国からは何の所為か報告がなかった。名簿順は苗字のアルファベット順である。

 

   阿久津 富夫 (Ak)  セブ・フィリッピン

        CCD画像 RGBセット 2、他4 画像  (20111015, 25) 

                                   36cm SCT @f/24, 55DMK21AU04, DFK21AU04カメラ使用 

   

サデグ・ゴミザデ (SGh)  テヘラン・イラン

        CCD画像 6 画像  (2011102, 8, 13, 22) 28cm SCTDMK21AU04.ASカメラ使用

   

熊森 照明 (Km)  堺、大阪 

        CCD画像 2    (20111018, 28) 

            28cm SCT @f/45, 55DMK21AF04/DFK21AFカメラ使用

   

スタニスラス・マクシモヴィッチ (SMk) エクヴィリィ・フランス

        スケッチ 3    (2011103, 15#, 20##) 20cm リッチー・クレチアン 290, 350倍、

                   31cm カセグレン# 340倍、15cm マクストフ## 300倍使用。

   

南 政 (Mn)  福井 (福井市自然史博物館天文台)

        スケッチ 56 (2011101, 3, 7, 9, 11, 13, 16, 18, 19, 26, 28, 31)

                                      20cm ED屈折、400倍使用

   

森田 行雄 (Mo)  廿日市、広島

       CCD画像 RGBセット 11 画像、他 11 画像 (2011108, 9, 10, 17, 18, 25, 27)

25cm 反射 @f/80Flea3カメラ使用

    

  (Nj)  福井 (福井市自然史博物館天文台)

        スケッチ 43 (2011101, 7, 9, 11, 16, 18, 19, 26, 28, 31) 

                                                20cm ED屈折、400倍使用

 

ジャン=ジャック・プーポー (JPp) エソンヌ・フランス

        CCD画像 RGBセット 6 画像、他 2 画像  (2011101, 2, 14, 16, 17, 21)

                                                   35cm カセグレン、SKYnyx 2-0カメラ使用

  

クリス・スメト (KSm)  ボルネム・ベルギー

    カラースケッチ 1 (2011102)     30cm ドブソニアン、540倍使用 

   

ジョン・S・スーセンバッハ (JSb) ホウテン・オランダ

    CCD画像 2 画像  (2011101)      28cm SCTFlea3カメラ使用

 

・・・・・ 十月の観測状況:十月末日で、視直径がδ=5.9"になっているにもかかわらず、意外と観測者数が延びなかった。火星の季節も北半球の春分後で大事な時期にもかかわらずである。これは火星の季節への関心の低さのあらわれと思われる。画像の詳細にこだわるからであろう。実際には火星は東に顔を出すと直ぐ昇ってくる。したがって40分置きの観測でも一夜に数枚の観測ができる勘定である。木星観測の疲れがあるかとも思うが、早く切り替えて欲しいものである。

観測数が少ないので、まだ領域に分けて詳細な状況を伝えることは出来ない。しかし、タルシス三山やオリュムプス・モンス、アルバの山岳雲については、その初期の状態をフランスのJPp氏が21(λ=018°Ls)で美事に捉えている。G色で著しい(これはよく知られたことで、G色を端折るのは良くない)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111021/JPp21Oct11.jpg

一方ヘッラスに関しては、少し観測が鈍い。JSb氏は1(λ=009°Ls)にシュルティス・マイヨルをω=288°Wで捉えているが、北極冠も含めてヘッラスの白さはない。描写法に問題があろう。一方JPp氏は同日、夕方のヘッラスが白いことを描出している。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111001/JSb01Oct11.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111001/JPp01Oct11.jpg

2(λ=009°Ls)ω=309°WKSm氏がやはり白く描いている。この日にはSGh氏がω=262°Wで朝方のヘッラスを捉えていて重要だが、色処理が誤っていると思われる(北極冠も白くない)。他にSMk氏の3(λ=010°Ls)Wr#80Aでより明るいとしている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111002/KSm02Oct11.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111002/SGh02Oct11.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111003/SMk03Oct11.jpg

日本からは月末にヘッラスが見え始めたが、福井のNj氏とMn26(λ=021°Ls)28(λ=022°Ls)31(λ= 023°Ls)に南辺に耀くヘッラスの一部を見ているほか、すでに18(λ=017°Ls)19(λ=018°Ls)には夕方に明るいことを見ている。ヘッラスに沿う暗帯はかなり濃い。CCDではMo氏が27(λ=021°Ls)でヘッラスを中央に捉えている。G, Bでよく出ているようだ。アルギュレも福井では16(λ=016°Ls)などには明るく見ている。Mo氏やKm氏の18(λ=017°Ls) の像は秀逸で、前者はω= 014°Wでアルギュレを朝方に捉え、後者のω=034°Wの像ではアルギュレが南端に白く見えている。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111018/Mo18Oct11.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111018/Km18Oct11.jpg

なお、福井でのNj氏やMnの観測では、18(λ=017°Ls)19(λ=018°Ls)に見えたマレ・アキダリウムに比較して月末のシュルティス・マイヨルは弱く感じた。マレ・テュッレヌムの方は濃いが、マレ・セルペンティスの方は弱い。

 

北極冠はすでに全周輪郭を顕していて、マレ・アキダリウムの方向から見ても、境界はシッカリしているようである。Ak氏の15(λ=016°Ls) の像は重要で、北極冠はあまり乱れがないように見える。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111015/Ak15Oct11.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111022/Ak22Oct11.jpg

ただし、22(λ=019°Ls)ω=356°Wには北極冠の南に東西に延びる白雲混じりのダストが見られるようである。MROの「破れ提灯」(近内令一氏命名)の回り灯籠で調べても東西幅は判然とはしないが、北極冠の外にダストが現れていることは確かである。また北極冠内もAk氏の像では一様ではないように見えるし、前述の18日のKm氏の像の北極冠にも乱れがあるかも知れない(L像による)

一方、反対側の北極冠は明白である。16(λ=016°Ls)JPp氏のω=184°W17(λ=016°Ls)ω=175°Wなどでの北極冠は燦然としており、ダークフリンジも明確である。

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111016/JPp16Oct11.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111017/JPp17Oct11.jpg

なお、前者では(あるいは後者でも) プレグラからトリウィウム・カロンティスあたりが太く大きくなり古典的なエリュシウムが幅狭く見える。ただし、まだ中央で捉えているわけではないから即断は出来ないが、14(λ=015°Ls)ではJPp氏はω=204°Wで捉えており、ここでも幅狭く見えるから今後の注目点である(他にSGh氏の8(λ=012°Ls)ω=193°Wの観測がある)

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111014/JPp14Oct11.jpg

http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/111008/SGh08Oct11.jpg

 

観測報告はemailの場合、村上およびMnのアドレス

cmo@mars.dti.ne.jp

vzv03210@nifty.com

に同時に送付されたい。スケッチの郵送もコピーをそれぞれ

251-0053    神奈川県藤沢市本町1-3-5 横浜銀行藤沢寮管理人室 村上 昌己

913-0048    福井県坂井市三国町緑ヶ丘3-6-74 南 政

宛に送付願いたい。前者はOAA用、後者はISMO用である。

(村上 昌己/南 政 )


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