2011/2012 CMO/ISMO 観測レポート#02

2011年九月の観測 (λ=354°~009°Ls)

CMO #390 (25 October 2011)


・・・・・今回のレポートは今期二回目となり2011年九月中の観測を取り扱う。この期間、季節(λ)λ=354°からλ=009°Ls まですすみ、九月13日には北半球の春分 (λ=000°Ls)がおとずれた。視直径(δ)はまだ小さいもののδ=4.7"からδ=5.2"まで上昇した。中央緯度(φ)11°Nから17°Nに動き、北半球がこちら側を向いてきている。また視赤緯(D )22°49'N から19°33'Nに減少して、位相角(ι)30°から33°に増加している。

 観測者の諸氏には、位相を使わず位相角を使用するようお勧めする。位相角であれば正午の経度線が火星面のどこにあるかを概略見当がつけられるからである。観測している地域の地方時を知って観測することは火星観測では重要である。

 

・・・・・  拝受した九月中の報告と観測者は以下の通りである。

 

    ポール・エーベル (PAb)  英国

       スケッチ 1 (2011 927)   20cm 反射、310倍使用 

    阿久津 富夫 (Ak)  セブ・フィリッピン

       CCD画像 RGBセット 2、他4 画像 (2011 99, 11)

                               36cm SCT @f/24, 55DMK21AU04, DFK21AU04カメラ使用 

    マルク・デルクロア (MDc)  フランス

       CCD画像 RGBセット 1、他1 画像

                              (2011 926)  25cm SCTBasler acA640-100gmカメラ使用

    サデグ・ゴミザデ (SGh)  イラン

       CCD画像 RsGBセット 1、他6 画像   (2011 910, 19, 23, 30)

                                                28cm SCTDMK21AU04.ASカメラ使用

    サイモン・キッド (SKd)  英国

        CCD画像 1 画像  (2011 92)   36cm SCTDBK21AF04.ASカメラ使用

    ジム・メルカ (JMl) アメリカ

        CCD画像 RGBセット 1 画像 (2011 96)  30cm 反射、DBK21AU04.ASカメラ使用

    南 政 (Mn)  福井

        スケッチ 27 (2011 910, 12, 14, 15, 24, 27)  

*福井市自然史博物館屋上天文台 20cm ED屈折*340, 400倍使用

   エフライン・モラレス=リベラ (EMr) プエルトリコ

    CCD画像 LRGBセット 1 画像 (2011 95)  31cm SCT Flea3カメラ使用

    森田 行雄 (Mo)  廿日市

      CCD画像 RGBセット 1 画像、他 2 画像 (2011 96) 25cm 反射 @f/80Flea3カメラ使用

     (Nj)  福井

        スケッチ 27 (2011 910, 12, 14, 15, 24, 27)

 *福井市自然史博物館屋上天文台20cm ED屈折*340, 400倍使用

    デミアン・ピーチ (DPc)  英国

        CCD画像 RGBセット 6 画像 (2011 915, 22, 23, 28) 36cm SCT使用

    ジャン=ジャック・プーポー (JPp) フランス

        CCD画像 RGBセット 2 、他 2 画像  (2011 926, 29)

                                         35cm カセグレイン、SKYnyx 2-0カメラ使用

    クリス・スメト (KSm)  ベルギー

    カラースケッチ 2 (2011 924, 28)  30cm ドブソニアン、310, 420倍使用 

    デーヴ・タイラー (DTy)  英国

       CCD画像 RsGBセット 1 画像  (2011 924)  36cm SCTSKYnyx 2-0カメラ使用

    ショーン・ウォーカー (SWk)  アメリカ

      CCD画像 RGBセット 1 画像、他 4 画像  (2011 913)

                                           32cm 反射、DMK21AU618.AS カメラ使用

                                                           

 ・・・・・9月に入ると、報告に俄然良像が増えてきている。しかし2日のSKd氏のCCDは妙な色づけで頂けない。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110902/SKd02Sept11.jpg

 5(λ=356°Ls)EMr氏のω=282°WLRGBはシュルティス・マイヨルを中央で捉えている。北極雲もきれいでウトピアが浮いている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110905/EMr05Sept11.jpg

 6(λ=356°Ls)JMl氏のω=297°Wはシュルティス・マイヨルを夕方に捉える。同日、日本ではMo氏のω=063°Wでマレ・アキダリウムが夕方に見えている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110906/JMl06Sept11.jpg

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110906/Mo06Sept11.jpg

 9(λ=358°Ls)ではAk氏がω=056°WMo氏と似た場面だが、オピールがガンゲスと共にきれいに出ている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110909/Ak09Sept11.jpg

 10(λ=359°Ls)には福井でMn氏とNj氏が観測開始、火星は早く天頂に向かうため、朝方までに各自40分毎観測で4葉近くのスケッチを得ている。10日にはマルガリティフェル・シヌスが前接近同様快復していることを確認した。

 11(λ=359°Ls)にはAk氏がω=026°Wで撮り、マレ・アキダリウムが中心、マルガリティフェル・シヌスも見えている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110911/Ak11Sept11.jpg

 13(λ=360°Ls)はいよいよ春分で、スカイ・アンド・テレスコープ誌のSWk氏がω=212°Wの良像を得た:マレ・キムメリウムが明確で、エリュシウム中心に付近が好く描写されている。北極雲の内部に黄塵による亀裂があるかも知れない。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110913/SWk13Sept11.jpg

 15(λ=001°Ls)DPc氏がこれまた良像を撮り、春分早々タルシス三山が夕方で薄い雲を被っているのが見て取れる。北極冠もコアとして出ているかも知れないが、北極雲はまだ存在している。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110915/DPc15Sept11.jpg

 19(λ=003°Ls)にはSGh氏がω=017°Wでマレ・アキダリウム中心の像を撮ったが、近内令一氏によれば、MARCIがアオニアに発する氷晶黄雲を報告していて、この像に現れているかもしれないとしているが、Themisには感知されていない。23(λ=005°Ls)にはSGh氏はω=339°Wで撮り、シヌス・サバエウスが明確、北極雲は明け方で顕著である。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110919/SGh19Sept11.jpg

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110923/SGh23Sept11.jpg

 24(λ=005°Ls)には今季初観測のDTy氏がω=008°Wで撮り、マレ・アキダリウムが朝方、マルガリティフェル・シヌスは明確である。北極雲はぼやけている。同日KSm氏がω=019°Wでスケッチしている。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110924/DTy24Sept11.jpg

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110924/KSm24Sept11.jpg

 26(λ=006°Ls)にはフランスでMDc氏がω=006°WJPp氏がω=019°Wで撮像し、先行する観測を補完している。特に前者では北極雲内に黄塵が出ているかも知れない。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110926/MDc26Sept11.jpg

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110926/JPp26Sept11.jpg

 福井の24(λ=006°Ls)27(λ=007°Ls)の観測ではω=210°W~220°Wあたりでは北極冠が見え始め暗帯が取り囲んでいると判断した。多分、マレ・アキダリウム方面とは様子が異なるであろうが、北極雲が偏極しているのであろうという観測である。

 28(λ=007°Ls)ω=358°WにはDPc氏が良像を得て、δ=5.1"にもかかわらず、アリュンの爪を見事に描写している。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110928/DPc28Sept11.jpg

 29(λ=008°Ls)JPp氏の観測ではω=019°Wで未だマレ・アキダリウムの北は北極雲のようであるが、擾乱が起きている風でもある。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110929/JPp29Sept11.jpg

 30(λ=008°Ls)SGh氏の観測ではシュルティス・マイヨルが中央、ウトピアは出ているがまだ白雲を被る状況である。ヘッラスはまだ白くないが、これはGフィルターの欠如の所為かもしれない。

 http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~cmo/cmons/2011/110930/SGh30Sept11.jpg

 しかし、いよいよ北半球の早春の装いで、山岳雲やヘッラスの活動が始まるであろうし、北極冠もハッキリして来るであろう。

 

(村上 昌己/南 政 )


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