10 Years Ago (64)
10 Years Ago (64) (Japanese)
- CMO #098 (10 December 1990) & #099 (25 December 1990) -

 火星は、前月に最接近・衝となったあと、1990年十二月には「おうし座」にあって逆行を続けプレアデス星団へ近付いていった。
 火星の暦は、年末でもδ=13.9"、Ls=358゚、φ=13゚S であり、最接近は過ぎたものの、秋分直前の南半球の様子が、十分観測可能な時期であった。

   #098には十一月後半の最接近時の観測報告が纏められている。この年には十一月末になっても季節はずれの台風の発生があって、沖縄の観測者には影響があった。
 日本からはSolis LからSyrtis Mjが夕方に見えるまでという火星面経度の観測だった。視直径が大きくなって、Aonius S、Coracis Pr、Phasis辺りが明確に見えてきたのが特徴的で、小口径でも捉えられた。その他にも火星面の細部が見えるようになっていた。南極域の様子と北極雲の動向も注目されたが、まだ北極冠は観測されなかった。
 この期間には、国内から十一名261観測、国外からはMarc A GÈLINAS(Canada,15cm屈折),Frank J MELILLO(USA,20cmSC),Robert L ROBINSON(USA,25cm反射)の三名の観測報告があった。
 また、外国からの期間外の報告が、Thomas R CAVE(USA、31cm反射)、Marc A GÈLINAS, Mike MATTEI (15cm屈折)、Frank J MELILLO、Georges VISCARDY (France,52cmカセグレン)の各氏から寄せられている。なかでも、F MELILLO氏の報告は十一月黄雲の紀録的写真だった。

 #099には十二月前半の観測報告がある。この期間の報告者は国内のみだったが、九名208観測にのぼった。期間外の観測報告としては、宮崎勲、Daniel M TROIANI(USA)の両氏の観測がある。またkermit RHEA(USA)氏から最接近前後の観測の文章による報告が届いて、来信の中に全文掲載されている。
 この期間日本からは、Syrtis MjからM.Sirenumが夕方に見えてくる景色までが観測された。視直径の大きい分だけ細部が捉えられていて、詳しい描写の記述がある。Hellasにかかっている朝靄がArgyreの見えるまで残って活動している様子も追跡されている。
 岩崎徹氏は、この期間に1984年の観測開始からのスケッチが1000枚の大台に達している。

 その他の記事は、#098に「夜毎餘言 (XVII)・Almanacの使い方」が掲載された。暦表の数値の意味と利用の方法が説明されている。 また#098には「夜毎餘言 (XVIII)・南中老人瘋癲日誌」と、#099には「夜毎餘言 (XIX)・戒厳令下観測」が、Mn,Nj両氏の足羽山での観測外挿話が述べられている。
 #099には「COMING 1990/1991 MARS(9) 見掛けの大きさや位相の変化(その3)」西田昭徳氏がある。#098の「Almanacの使い方」の記事から作ったBasicプログラムでパソコンに描かせた1991年始めの火星面経緯度図が掲載された。西田氏の短い紹介もある。

 来信は、#098には、岩崎徹、Frank J MELILLO、宮崎勲、Clyde E KIRKPATRICK(USA)、大場与志男、Robert L ROBINSON、Gérard TEICHERT(France)の各氏からのものが、#099には、Daniel M TROIANI、kermit RHEA、Rechard McKIM(UK)、John ROGERS(UK)、岩崎徹、日岐敏明、尾代孝哉、伊舎堂弘の各氏からのお便りが載せられている。

村上昌己 (Mk)