CMO#089の巻頭は、JBAA(Journal of the British Astronomical Association)のRichard McKim 氏の記事"Mars 1990-91" JBBA 100(1990)114 の紹介である。活動的な観測者に対する記事で、当接近の概況・観測留意事項の指摘・観測報告形式が記述されている。
次ページからは、浅田正氏による「1990年の火星観測暦表(その3)」(9月〜11月)が掲載されている。
次いで、1988CMO観測ノートの14回として、南氏筆の「11月上旬のM Acidalium上の白雲について」がある。8月下旬(260゚〜265゚Ls) CMO#078・10月上旬(280゚〜285゚Ls)CMO#084 に次いでの三回目で、北半球の真冬の季節にあたる(300゚〜305゚Ls)頃の観測結果が述べられている。
この接近で北縁に観測された白雲は、M Acidaliumの暗色模様の上ではバックが暗いために肉眼でも或る程度観測出来た。北半球の冬至を挟んで三回にわたって、白雲の様子を写真観測を含め概観してみたが、うまく雲の消長の様子は捉えられなかった。B光写真での成果を期待したが、イメージ毎のばらつきが大きく追跡は適わなかった。
写真撮影でも、ωをそろえての追跡が是非とも必要であることを、あらためて説かれている。
「OAA MARS SECTION」は6月中旬から7月中旬の一ヶ月の観測報告が纏められている。報告者には、比嘉保信(VTR:Ci-20R/25cm反射)・岩崎徹(drawings/21cm反射)の両氏が加わり手厚くなった。フランスのTeichert氏からも引き続き報告が届いている。
この期間には、視直径は8秒角台とまだ小さいが、1956年のNoachis黄雲の季節(245゚Ls)が含まれ注目された。6月下旬から7月上旬にかけてArgyre辺りとHellasに明るさを捉えたが、大きな擾乱は発生しなかった。南極冠も縮小を続けていて、経度によって歪に観測されている。暗色模様も、やや詳細が捉えられるようになり、濃淡や色合いも判るようになってきた。
来信は、Don Parker(29 May, 1 July)・白尾元理(5 June)・岩崎徹(11 June, 7 July)・日岐敏明(12 June)・比嘉保信(20 June)の諸氏から寄せられている。