CMO#088は、南氏の「観測野次馬帖」から始まる。1988年大接近観測期を終えての時期から南氏が書き綴った火星観測に対する所見が、一挙10ページにわたって掲載された。
頭書に「この記事では、火星面の現象から離れて、観測自体の方向付けや方法、整理の問題といったことを、私が報告を受け、それらを拝読し、スケッチや写真を整理していたときに感じていたたことを思い出しながら、些細なことも含めて、記憶の確かな内に若干でも書いて置いてはどうかと思った・・・」とあり、毎日40分毎の連続観測の意義・観測用紙の形式・観測データーの取り扱い・観測計画のたてかた・情報交換の必要性・観測の解析時の姿勢などが述べられている。
次いで、「1988CMO観測ノート(13)」として、「マッキム氏の Syrtis Major の観測」がある。マッキム氏(Richard McKIM/ BAA Mars Coodinator, 当時)がムードン天文台(Meudon, Paris)の83cm屈折で、1988年10月に観測したSyrtis Major付近のスケッチ(SPA・BAAの観測用紙)をコピーで3頁にわたり引用して紹介している。
「OAA MARS SECTION」は5月中旬から6月中旬の一ヶ月の観測報告が纏められている。報告者は日岐敏明・南政次・中島孝の三氏になった。この期間には融解が進んだ南極冠が偏心する時期(235゚Ls頃)が含まれ、南極冠が注目された。視直径が未だ7秒ほどだから詳細は捉えられないが、こじんまりと丸く純白に観測されている。暗色模様は通常に捉えられていて、Hellasもやや明るく観測されている。
この号は筆者が『火星通信』に参加したときに一番始めに送っていただいたバックナンバーで、思い出深い。「観測野次馬帖」を拝読して、観測に対する姿勢が良く判り、参加し甲斐いのある観測集団であるなと感激したのを覚えている。現在までに幾度も再読していて、いつも考えさせられる。懐かしいし、大切な一冊である。皆様にも再読をお勧めしたい。
また、10年すぎた今日迄にCCD観測の普及・インターネットの利用など、取りまく環境に変化のあったことを考えると、南氏には続編を是非お願い致したい思いがある。