『火星通信』#084は1988CMO観測ノートが二本掲載された。まず、(10)として白尾元理氏の「火星写真における分光特性について」がある。分光写真の有意義なことを説明された後に、惑星撮影に使用されるフィルムの分光感度のグラフと各種フィルターの透過率のグラフを示して、分光写真撮影時の留意点、問題点などを挙げられている。
次いで、1988CMO観測ノート(11)は、南氏による「10月上旬のM Acidalium上の白雲について」(On the white veil observed over M Acidalium at 280゚Ls〜285゚Ls )である。観測ノート(7)(CMO#078)の一廻り後の観測の結果で、北半球の冬至(270゚Ls)を挟んでの対の観測の比較だった。青色光写真によるM Acidalium上の白雲の様子がメインに語られている。「冬至前に比べて、白雲はやや大型になり、全体拡散しているようである。」という見解を示された。
前回にも眼視観測ではM Acidaliumの暗部がveilに透けて見えているのが観測されたが、今回も同様であった。「Veilは薄いものであるが、中央緯度が南で、斜交いに見ているために、厚いところでは下が覆われて見えなくなる。雲の様子は連日変化している。」という見解は観測ノート(7)に示されている。
火星のLs=280゚といえば、今年(2000)は一月11日に通過していて(φ=24.7゚S)、前号#227のレポートが、此の当時と大差ない季節の観測を扱っていたわけである。視直径だけが大きく違っているが、1988年の中央緯度もφ=23゚Sで傾きも似ていた。
また、浅田正氏による「1990/1991年の火星観測暦表(その2)」が掲載されて、1990 May〜Augまでのデーターが示された。それによると、視直径は六月はじめには7秒角になり、八月中旬には10秒角を越していた事が判る。