火星は1989年九月には「乙女座」に移り、十月はじめの「合」に 向けて、ますます太陽と接近していて、観測の対象ではなかった。
「LtE スペシャル」は五回目となり、1 Dec 〜 31 Dec 1988の一ヶ
月間の来信が掲載されている。月初めには11月末に発生したタウマ
シアの黄雲の観測結果が中心になっている。当時の連絡網の様子も
垣間見られる。後半には1989年の正月に福井で催された「惑星観測
者懇談会」への参加表明のお便りがいくつか見られる。来信は次の
各氏から合計17通であった。
尾代孝哉(1 Dec):岩崎徹(1,15 Dec):長谷川久也(3,19 Dec):宮崎
勲(4,18 Dec):伊舎堂弘(5,20 Dec):阿久津富夫(5,19 Dec):熊森照
明(7,19 Dec):大谷豊和(7,16 Dec):中島守正(? Nov):山本進(19
Dec)
1988CMO観測ノート(6)として南氏の「オリュンプス山とア ルシア山の異相について」が掲載された。要点は1988年九月後半 (Ls=273゚〜281゚)の衝の頃、オリュンポス・モンスが肉眼や白色光 で明確であったのに反して、B光ではほとんど見えなかった事。逆 に、タルシス山系(特にアルシア山)は通常光よりも、B光で極めて 歴然としていた事である。前者は衝効果、後者は山岳系雲の存在で あろうとの推論である。
コラム記事には、南氏による、西ドイツの "Arbeitkreis
Planetenbeobachter"(惑星観測者の研究集団)の機関誌である
"MfP(Mitteilungen Fur Planetenbeobachter)" (惑星観測者のため
の報告誌)からの火星観測報告の紹介がある。
1988年火星観測報告第2部として、Aug後半から15 Oct迄の観測
に基づく報告である。本論は、南極冠・北極のフード・気象・アル
ベドー構造の順に四部に分かれていて、それぞれに関しての内容が
要約されている。ヨーロッパでの観測の資料である。