火星は1989年七月には「かに座」から「しし座」へと順行して、ますます太陽に近付いていた。観測シーズンはオフとなって、1988年大接近火星観測の種々の纏めが始まっている。
まず、「1988年火星面観測リスト」第1部として、国内関係・上半期分(13 Dec 1987 〜 30 Sept 1988)が、#074に32頁にわたり掲載された。この年の火星の最接近は22 Septだった。視直径が10秒角を越えた六月からの欠測日を見ると、六月は七日間あったが、七月と九月が一日だけ、八月は欠測日はなく、密度の高い観測状況が記録されている。この期間の報告者は下記の34名にのぼり、寄せられた観測総数は1895点に達した。
阿久津富夫(Ak)・青木進(Ao)・浅田正(As)・張替憲(Ha)・長谷川久也(Hs)
畑中明利(Ht)・日岐敏明(Hk)・堀江卓二(Hr)・池村俊彦(Ik)・伊舎堂弘(Id)
石橋力(Is)・岩崎徹(Iw)・熊森照明(Km)・神崎一郎(Kz)・正村一忠(Ms)
松本直弥(Mt)・松浦恵介(Mr)・繭山浩司(Mm)・南政次(Mn)・宮崎勲(My)
中神輝男(Ng)・中島守正(Nk)・中島孝(Nj)・小尾哲也(Ob)・大場與志男(Oh)
大島良明(Om)・尾代孝哉(Or)・尾崎公一(Oz)・笹本宰正(Ss)・柴田恵司(Sb)
白尾元理(Sr)・田中利彦(Tn)・横川秀紀(Yk)・湧川哲雄(Wk)
また、「1988CMO観測ノート」は「(4)青色フィルターについて」が#074に「(5)観測地分布について」が#075に掲載された。前者では今期使用された青色フィルターとフィルムの組み合わせの紹介である。各フィルターの透過曲線も示された。後者は国外の観測者向けに『火星通信』の観測者の分布を地図上に示したものである。
前回取り上げるのを逃してしまったが、前号(#073)の「事務局だより」には浅田正氏とパーカー氏・ビーシュ氏の間でのパソコン通信成功の話題が掲載されていた。現在のe-mail全盛の状況からは想像もできない黎明期の御苦労もあったろうと思われる。
「LtE スペシャル」は三回目は#075に、1 Sept 〜 31 Oct 1988の二ヶ月間のものが纏められている。お便りは次の22名の各氏から合計47通あった。
柴田恵司・宮崎勲・岩崎徹・ 伊舎堂弘・畑中明利・ 白尾元理・長谷川久也・中島守正
熊森照明・阿久津富夫・石橋力 ・松本直弥・尾崎公一 ・大澤俊彦・湧川哲雄 ・比嘉保信
山本進 ・大場與志男・神崎一郎・日岐敏明・尾代孝哉 ・笹本宰正
本州は曇天が続いて最接近の観測が捗らなかった様子が判り、阿久津氏の落胆ぶりが短い文面から感じられる。較べて沖縄では晴天の日が9月前半まで多くシーイングにも恵まれた。好条件下の観測で宮崎勲氏の新機材での気鋭ぶりがお便りにも表れている。同氏はこの時期にスケッチからTP写真に切り換えて良い結果を残された。また、比嘉保信氏が此の期間に初登場されている。