10 Years Ago (39)


From CMO#063 10 Years Ago (39) (Japanese)
-CMO #063(10 November 1988) & #064 (25 November 1988)-

1988年十一月には火星はまだ「うお座」にいて、十月末の「留」を過ぎて順行に移った。以後は足早やに遠ざかる時期に入り、視直径も月初めの18秒角から月末には13秒角に急激に小さくなってしまった。

 『火星通信』#063,#064 の OAA Mars Section Fortnight Reportには、十月後半と十一月前半の観測報告が纏められている。此の期間の報告数はそれぞれ160点・177点であった。Syrtis Mj.付近の観測から始まり、M.Cimmerium辺りの描写があり、十月末にはM.Sirenum辺りの経度迄進んだ。Olympus Mons・Tharsis辺りの山岳系の見え方の比較もある。Lsは十一月初めには300゚に達して、南半球の黄雲の発生予想時期は続いていた。折からSolis L が東洋から観測出来る条件だったが、この年には大規模な黄雲の発生は見られなかった。その後は枯れて濃淡が出てきたM Erythraeum、Argyreあたりhazeの描写があり、続いてNoachis、M Serpentis付近までが観測された。ほの赤い南極地・北極雲の毎日の様変わりの記述もある。

 今回もこの期間の報告者を列挙すると、国内からは、浅田正・長谷川久也・伊舎堂弘・岩崎徹・神崎一郎・熊森照明・宮崎勲・中島守正・大場與志男・尾代孝哉・尾崎公一・白尾元理の各氏であった。また、台湾からは、南政次・陶蕃麟 TAO Fan-Linの報告があった。期間外の報告も上記の諸氏の他に、笹本宰正・D C Parker(Florida USA)・石橋力・松本直弥・青木進・松浦恵介の各氏から多数寄せられている。特にParker氏からは七月後半から十月はじめまでのTP写真が40枚ほど送られて来ている。
 新人として尾代孝哉・陶蕃麟両氏の紹介もある。南氏は臺北での観測を終えて十一月30日に帰国される予定であることもアナウンスされている。

 此の期間から早くも「1988年観測ノート」の掲載が始まっている。『火星通信』#063には、1988CMO観測ノート(1)として「白尾元理氏撮影のTrinacria上のヘーズについて」と、1988CMO観測ノート(2)「M.Sirenumの西部の淡化について」が発表された。前者には青色光で捉えられたTrinacriaからDeucalionis Rにかかる大きなヘーズに関する考察がある。大規模な黄雲の発生はなかったが、Hellas辺りに起こった砂塵が原因で発生した上空のhazeではないかとの推論である。後者は、西部が淡化して短くなっているM.Sirenumの正確な位置が、Caralis Fの位置との比較で容易に判定できるようになったとの記述である。

   両号とも編集後記があり、南氏の台湾での滞在が残り僅かになった事が記されている。次号#065からは日本での編集になる。台湾での観測の簡単な総括と惑星観測者懇談会の計画のあることも予告されている。  

(Mk) 村上昌己