1988年十月には火星は「うお座」にあって十月30日の「留」に向け逆行していた。最接近を済ませて遠ざかりつつあり、視直径も十月下旬には20秒角を下回った。Lsは十月15日には291゚となり、南半球の夏至過ぎ「小暑」頃の季節であった。
『火星通信』#061 OAA Mars Section Fortnight Reportには、九月後半の観測報告が纏められている。此の期間、極東各地は天候に恵まれず報告数は87点と減少した。衝過ぎでまだ好条件の時期が続いていたが天候には勝てない。
此の期間に注目するのは、Olympus Monsが午前から午後まで捉えられたことである(Ls=273゚〜281゚)。較べてTharsis山系は夕方になってから明るくなるのが観測されている。宮崎勲氏の観測したArsia Monsの西の暗帯にも注目している。 その他、Calalis Fons・Electris・Eridania・Solis L・Propontis Iについての記述がある。
『火星通信』#062 OAA Mars Section Fortnight Reportには、十月前半の観測報告が纏められている。各地とも天候はやや良くなったようで、215点の観測報告が記録されている。追加報告も寄せられている。
此の期間に捉えられた顕著な現象は、Thaumasia Phoelixに見られた強い朝霧で、中島守正・南政次・岩崎徹・宮崎勲の各氏が観測している。輪郭がはっきりした朝霧で黄雲の発生かと感じた方もいた。その他、南極冠の極小が進んでいること、北極雲の様子にも記述がある。
両号ともB4見開き4ページに収められていて Fortnight Report だけの内容になっている。記事としては#061に南氏の「臺北再見(3)」が見られるだけである。「火星観測は儲かるか?」と題してアマチュアリズムに関する台湾の国民性の考察である。此の観測期間に寄せられた各氏からのお便りは、後に#072〜#076にLtEスペシャルとして六回に分け掲載された。
今回もこの期間の報告者を列挙すると、国内からは、阿久津富夫・浅田正・長谷川久也・畑中明利・比嘉保信・伊舎堂弘・岩崎徹・神崎一郎・熊森照明・松本直弥・宮崎勲・中島守正・小尾哲也・大島良明・大場與志男・大澤俊彦・尾代孝哉・尾崎公一・白尾元理・田中利彦・湧川哲雄の各氏であった。また、台湾からは、南政次・廬景猷 Jiing-You LU・Pei-Kun CHIN。フランスから Jean DIJON氏スケッチ7点、ベルギーのVVSのメンバーからもスケッチ33枚の報告があった。また宮崎勲氏からの転送でBAAの J Rogersのスケッチ9点も報告を受けている。